027 推しの私服
長かったテスト返し期間が終わり、ついに金曜、つまり遠足の日を迎えた!
私の成績は少し落ちたけど、まぁ未来ちゃんのためと思えばどうということはない。その未来ちゃんも赤点はギリギリ回避してくれたので、なんとかなった。
灰色のキャスケット帽子を深く被り直し、学校に向かって歩き出した。
「し、私服で登校って抵抗あるな……」
遠足では私服可のため、制服で行ったら逆に浮くのは目に見えている。それだけは避けたいから私服で登校しているけど、それはそれで恥ずかしさがあるのだ。
ただ私のこの服は未来ちゃんに褒めてもらった実績のある服だ。つまりその辺の有象無象たちが身にまとう服とは一味違うのである。
「あ、文ちゃんおはよー!」
「未来ちゃん!」
そして私は未来ちゃんの私服を見るのは初めてなのだ。いやまぁ家に行った時に見たといえば見たけど、白T1枚だったからなぁ……私服とは言えないかも。
さぁ、オシャレさんな未来ちゃんはどんな服を着てきたのか……!
「今日はちょっと肌寒いね」
「可愛いっ!!!」
「え?」
分かっていたけど、未来ちゃんの私服は私を殺しにきているのではないかというほどに可愛かった。
まず美少女しか着ることを許されていない(偏見)ハイピングコートをアウターにしていた。そして下は黒のワイドパンツ。未来ちゃん……それはオタク心を理解ってる側のやることだよ……!
「未来ちゃんの私服は初めてだったからさ。握手会は衣装だったし、雑誌とかもスタッフさんの選んだ服でしょ?」
「そっかー、本当の私服を見せるのは初めてか〜。……んふっ、じゃあもう一回褒めてください!」
「え……その……きゃ、きゃわいいです……」
無意識のうちに叫んださっきとは違い、意図して可愛いと言わされるとなんだか恥ずかしくなる。
「うんうん、文ちゃんは私を推してくれている時が1番可愛いな〜」
「な、何それ〜」
「ふふっ、好きなものを語る時って人が1番輝くな〜ってこと」
「それは分かるけどね」
でもだからと言って未来ちゃんを語る時の私は可愛いのだろうか。芋っぽい私が? よくわからない……。
それにしても未来ちゃんはオシャレだな。小説の参考にしよう。私だけの知識だと服のレパートリーが乏しすぎるし。
「おーい東山、星ヶ丘! こっちこっち」
未来ちゃんと2人きりの時間が終わり、八田さんと高畑さんと合流した。
八田さんは黒いキャップをかぶっており、いつもよりはおでこが強調されていない。ただしヘソで止めているんかってくらいの上げパンと、白いトレーナーはまさにギャルだ。ちょっと怖いほどに。
高畑さんはパーカーと普通のパンツだ。なんか安心する。
「んじゃ行こっか。ナガシマとかマジ何年ぶりって話なんだけど」
「私もしばらく行ってない! 楽しみだね!」
「ユウは行けばどうせはしゃぐから」
「それな!」
賑やかだなぁ……でも、これがあるべき高校生活の姿なのかも。
私たちはゆっくりとバスに乗り込んだ。




