表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
27/52

027 推しの私服

 長かったテスト返し期間が終わり、ついに金曜、つまり遠足の日を迎えた!

 私の成績は少し落ちたけど、まぁ未来ちゃんのためと思えばどうということはない。その未来ちゃんも赤点はギリギリ回避してくれたので、なんとかなった。


 灰色のキャスケット帽子を深く被り直し、学校に向かって歩き出した。


「し、私服で登校って抵抗あるな……」


 遠足では私服可のため、制服で行ったら逆に浮くのは目に見えている。それだけは避けたいから私服で登校しているけど、それはそれで恥ずかしさがあるのだ。

 ただ私のこの服は未来ちゃんに褒めてもらった実績のある服だ。つまりその辺の有象無象たちが身にまとう服とは一味違うのである。


「あ、文ちゃんおはよー!」

「未来ちゃん!」


 そして私は未来ちゃんの私服を見るのは初めてなのだ。いやまぁ家に行った時に見たといえば見たけど、白T1枚だったからなぁ……私服とは言えないかも。

 さぁ、オシャレさんな未来ちゃんはどんな服を着てきたのか……!


「今日はちょっと肌寒いね」

「可愛いっ!!!」

「え?」


 分かっていたけど、未来ちゃんの私服は私を殺しにきているのではないかというほどに可愛かった。

 まず美少女しか着ることを許されていない(偏見)ハイピングコートをアウターにしていた。そして下は黒のワイドパンツ。未来ちゃん……それはオタク心を理解ってる側のやることだよ……!


「未来ちゃんの私服は初めてだったからさ。握手会は衣装だったし、雑誌とかもスタッフさんの選んだ服でしょ?」

「そっかー、本当の私服を見せるのは初めてか〜。……んふっ、じゃあもう一回褒めてください!」

「え……その……きゃ、きゃわいいです……」


 無意識のうちに叫んださっきとは違い、意図して可愛いと言わされるとなんだか恥ずかしくなる。


「うんうん、文ちゃんは私を推してくれている時が1番可愛いな〜」

「な、何それ〜」

「ふふっ、好きなものを語る時って人が1番輝くな〜ってこと」

「それは分かるけどね」


 でもだからと言って未来ちゃんを語る時の私は可愛いのだろうか。芋っぽい私が? よくわからない……。

 それにしても未来ちゃんはオシャレだな。小説の参考にしよう。私だけの知識だと服のレパートリーが乏しすぎるし。


「おーい東山(とうやま)星ヶ丘(ほしがおか)! こっちこっち」


 未来ちゃんと2人きりの時間が終わり、八田(はった)さんと高畑(たかはた)さんと合流した。

 八田さんは黒いキャップをかぶっており、いつもよりはおでこが強調されていない。ただしヘソで止めているんかってくらいの上げパンと、白いトレーナーはまさにギャルだ。ちょっと怖いほどに。

 高畑さんはパーカーと普通のパンツだ。なんか安心する。


「んじゃ行こっか。ナガシマとかマジ何年ぶりって話なんだけど」

「私もしばらく行ってない! 楽しみだね!」

「ユウは行けばどうせはしゃぐから」

「それな!」


 賑やかだなぁ……でも、これがあるべき高校生活の姿なのかも。

 私たちはゆっくりとバスに乗り込んだ。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ