015 推しを参考に
今ごろ未来ちゃんはアフレコ現場かな〜、なんて思いながらパソコンに文字を打ち込んでいく。
未来ちゃんいいな〜、池下さんみたいなレジェンド声優とも顔馴染みってことだよね。羨ましい……。
もちろん私にとって1番の推しは未来ちゃんだけど、他の声優さんだってそこそこ以上には好きだ。
……っといけない。早く小説を書き上げないと!
私の書く『花森学園:高等部』は現在ブックマーク40件、評価点86点の小説だ。ブックマークも初期の頃に比べたら増えてきたけど、やっぱり伸びは悪い。
一度だけジャンル別日間ランキングに乗れたものの、そこから継続することはできなかった。
ただ、そんなことでモチベーションが下がる私ではない。なんてったって推しの未来ちゃんが推してくれている作品なんだもん! ここで筆を折ってなるものか!
この作品を書き始めてから35話目。まだまだプロットに書いた引き出しはたくさんある!
「よーしっ、今日の更新で未来ちゃんに褒めてもらう気でやるぞー!」
と1人呟いたのはいいものの……あれ、未来ちゃんってどんな展開を望んでいるんだろう。
家に上がらせてもらったり手料理を食べたりしたからバグっているけど、まだ転校して3日しか経ってないんだよね。よくそんな人を家に上げたな……。
まぁそんな人のいいところが未来ちゃんの良さではある。……けどちょっと心配なオタク心もある。悪い同業者の声優さんに騙されないといいけど。
「声優……そうだ! 新キャラに声優を出そう!」
声優さんを出せば未来ちゃんも共感できて楽しいかもしれない! 早速執筆だ!
「………………書けない」
意気込んでから20分。パソコンの画面に増えた文字はたったの60文字だった。
あまりに声優のことを知らなさすぎる。普段声優さんって何しているんだろ。
キャラクターの属性を知れば自ずとキャラクターの解像度は上がっていく。逆に言えば私が無知であるとこの子はキャラクターとして死んでしまうのだ。
……なら、オリジナルではなく未来ちゃんを書けばいいのでは? 未来ちゃんのことなら結構知っている自信あるし!
「パーソナルな部分は未来ちゃんに、活動も未来ちゃんのようにして、年齢や出演系統も未来ちゃんに寄せよう! あれ? なんか楽しくなってきた!!」
自分の作品に自分の推しが出てくるってなんかめっちゃ面白い! 名前はそうだな……未来の逆は過去だから、佳子ちゃんにするか!
やけに解像度の高い佳子というキャラクターを出した結果、私の小説には珍しく感想をいただくことができた。
作者として、感想はとんでもなく嬉しいものなんだけど、今回の感想は『なんかキツい』『作者さんの願望詰まりすぎ』と書かれていた。
き、気にしない気にしない……。それだけ未来ちゃんが願望の塊みたいな、最強声優ってことだもんね。
はぁ〜、何かの間違いで未来ちゃんが声をあててくれないかな〜。




