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13:こんな気持ちで

飲酒可能年齢 

ビスリー:16才位 トウワコク:18才 

日本:20才になってから!





 ついに合コンの日が来てしまった。


 楽しそうなセノと、セノの後輩達らしい初めましてな3人がこちらのメンバーだ。

 楽しそうな彼らには申し訳ないが、俺はそれどころじゃない。合コン終わりにどうクロアちゃんに声をかけて話を聞いてもらうか、それしか考えられない。いい加減、避けられるのは辛い。


 そんなもやもやを抱えながらセノが予約しているお店へ向かうと、クロアちゃん達はすでに到着して、こちらを待っていた。


 自然とクロアちゃんの方に視線が向くけど、ちょうどクロアちゃんもこちらを見ていて目があった。すると、頭の上の猫耳がぺしょりと伏せられて、縋るような眼差しを向けられる。


 その表情に、はっとして。伝わってきた俺と同じ思いに、じわじわ嬉しさと安堵が湧いてきた。何も言わなくても伝わってくる気持ちに、じわりと温まった胸に手を当てる。


 そっか、クロアちゃんも仲直りしたいと思ってくれてるんだ。そっか。ああホント安心した。ここに来るまで全く気が気じゃなかったし。はぁ、よかった…。


 自然と浮かんだ笑みに、こちらの思いもクロアちゃんに伝わったようで、伏せられた耳がまたもとに戻る。その安堵したような表情に、もう合コンなんてやめて帰りたいですと言いそうになった。


 が。


「ちょっとササマキ。何アイコンタクトしてんの。ちゃんとしてよね」


 とセノに注意されてしまい、とりあえず参加の義理は果たすことにした。






「ササマキさんって、フロレスでお仕事されてたんですか?」

「そう、5年くらいね。あっちの冬は雪が多くて溶けないから、冬の間の移動はスノーモップっていう、名前の通り白いモップみたいなモンスターにソリを引いてもらうんだ」

「えーっ、想像できない。大変なところなんですね」


 隣に座ったクロアちゃんの会社の人と喋りながら、心の中でセノの頬っぺたを思いっきりつねっていた。

 なんで、俺とクロアちゃんを端と端にするかな!くっ、セノの後輩3人衆について下調べしておくべきだった。


 セノと同じくチャラ男だったらどうしてくれよう⁉︎一応お酒飲んでいい年齢とはいえ、俺クロアちゃんがお酒強いのか弱いのか知らないし。


 あー、もっと色々注意しとけばよかったなぁ。まぁでも、アンダスの人って酒好きで16歳からお酒のんでいいって感じだから、そんなに心配ないかもだけど…。


 前隣の人に失礼にならない程度にクロアちゃんの方を気にしつつ、無難な会話を続ける。こういう時、外国勤務経験があると話題に困らなくて助かるんだよね。でも、こんな気持ちで合コンに参加するなんて相手に申し訳ないよなぁ。


 せめてもと斜め前に座るセノを巻き込みながら周りの人と会話をしていると、急にガチャンと何かが割れる音がした。


「えっ?」

「あ…ごめんなさい」


 音のした方に視線を向けると、なんだかぼんやりしたクロアちゃんが、目の前の割れたコップを見つめている。


「ちょ、大丈夫?」


 慌てて席を回り込んでクロアちゃんのところへ行くと、クロアちゃんのらしい机の上のコップが割れてしまっている。さらに1つ手にもコップを持っているが、多分それを置こうとして机の上のコップにぶつけて割ってしまったのだろう。

 てか、両方とも空だけど入ってたのはお酒か…?


「クロアちゃん、怪我はない?」

「んー、ふふふ、カナトがきたぁ…」


 うーん、紛れもない酔っ払いだ。

 手に持ったコップを取り上げてクロアちゃんを確認するが、怪我はなさそうだ。


「お客様、お怪我はありませんか?」

「怪我はないですが、すみません、コップを割ってしまって」

「下げますのでお待ちください」


 後輩くんが呼んでくれた店員さんが片付けてくれるのを横目に、セノに声をかける。


「ごめん、酔っちゃったみたいだからクロアちゃん連れて帰るね」

「はいはーい。お気をつけて〜」


 なんだかニマニマしている様子が気に触るが、仕方ない。全体会費の半額相当くらいのお金をセノに押し付けて、コップを片してくれた店員さんにはコップ代とチップを渡しておく。


「ほら、クロアちゃん帰るよ」

「んー、カナトも帰る?」

「そうそう。ほら、立てる?上着着て」


 ふふふ、と機嫌よさそうなクロアちゃんを連れて、みんなにごめんねと声をかけて席を離れる。


 ちょっと予想外で、クロアちゃんは話し合いができるような感じではないけれど。まぁいっかと思いながら、冷たい空気が支配するお店の外にクロアちゃんを連れ出したのだった。



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