12:イコールじゃない
マキへ
なんか言葉がまとまらなくて、訳わかんなかったらごめんね。
カナト、あたしは対象外みたい。10歳年下の子狙う男はヤバいって、会社の人に言ったんだって。
なんかショックで、合コン行くって言って、帰ってきちゃった。でも家に帰って冷静になったら、あんなこと言って呆れられたかなって悲しくなってきたの。
カナトも同じ合コン行くって。カナトに彼女ができたらどうしよう。先輩達にカナトの会社の人紹介してって言われてたのに、誰にも合コンのこと言いたくないよ。
カナトと気まずくなりたくなくて告白できないのに、なんで八つ当たりして距離取っちゃったんだろう。こんなんだから、子ども扱いされちゃうのかな。
大人だったら、もっと冷静にちゃんとできたのかな。自信持って、好きだって言えるのかな。
カナトの会社の人は、合コン行ってカナトを嫉妬させたら良い、なんて言ってたけど。そんな感情持ってくれる気がしないよ。
もう、どうしたらいいのかな。助けてマキ。
この手紙は出されることなく、しばらく机の上に置かれた後、細かく破って捨てられてしまった。
〜*〜*〜*〜*
「はぁ…」
あ、ヤバい。またため息ついてた。
あの日の言葉通り、今日もクロアちゃんはいつもの待ち合わせ場所にいない。
「子ども扱い、したわけじゃないんだけどな…」
いや、子ども扱いだったのかな。
少なくとも、セノに成人したての子を狙うなんてって言った時は、子どもな印象が強かった。
でも。
なんだか今は、あんまりクロアちゃんのことを子どもとして見ていない。
二人で初めて遠出した日、クロアちゃんの夢を聞いた時。ああ、素敵な大人になったなって。そう、思って…。
「はぁ、帰ろ」
クロアちゃんがいないと、心にぽっかり穴が空いたように寂しい。今までこんな風に怒らせて距離取られたことなんて、なかったのにな。
これまで頻繁に会っていた分、余計に一人が身に染みる。こんなんで、クロアちゃんがビスリーに帰っちゃったら、俺どうするんだろ。
とぼとぼ一人で帰り道を歩いていると。ふと、セノの言葉が脳裏をよぎった。
ーお持ち帰りされても良いの?
ー取られるの嫌なら捕まえるしかないよ
「恋愛ってそういうもんでしょ?」
ざわりと、心が泡立った。
いやだ、気がつきたくない。子ども扱いされたくないのと、恋愛対象にされたいはイコールじゃない。
今は、ちょっと距離を取られて寂しさを感じているだけだ。
間違えるな。カナト・ササマキ。
ちゃんと冷静に。理解あるお兄さんポジションが、俺の目指すべきところじゃないのか?
男の顔をして近寄って、あの子を怯えさせるなんて、できるわけがない。
そう、だろう?




