第29話 最終的な現在の「四姉弟」と林忠崇の関係5
これで、「四姉弟」と林忠崇に関する話は終わりです。
そんな苦々しい想いを、野村雄が遺した「四姉弟」について、林忠崇はすることになりましたが。
結局のところは、自らの憶測に過ぎない部分が、ほとんどです。
従って、陰ながら村山幸恵について、表向きは北白川宮成久王殿下を介して、それとない援助を林忠崇はするしかありませんでした。
何しろ他の3人ですが。
まず、篠田千恵子については、千恵子自身に咎は無いとはいえ。
篠田りつのやったことを見れば、岸忠子が怒るのは当然のことです。
野村家が隠蔽工作に奔ったのが主な原因とはいえ、篠田りつのせいで、岸忠子は婚約者がいるのに、上官の娘であることを嵩に着て略奪婚をした、という汚名を被る羽目になったのです。
それを想えば、篠田正が生活支援をして、篠田千恵子が裕福な生活をしていることもあり、林忠崇としては特に援助等をする気になれないし、黙って見守ることにしようと思ったのです。
岸総司にしても、祖父の岸三郎の生活支援もあり、生活に困っている訳ではありません。
それに林忠崇が口を出すと、岸三郎が海兵隊提督であり、文字通り身内であることから、海兵隊内で何で林元帥が口を出すのだ、と疑念を持たれ、大騒動につながりかねません。
それを想えば、見守るだけにするのが無難でした。
アラン・ダヴーに至っては、フランスにいることもあり、母子揃って(林忠崇にしてみれば)完全に行方不明になっていました。
だから、林忠崇にしてみれば、手の打ちようが無かったのです。
そして、歳月は流れ、1930年代後半に「四姉弟」は成長して、20代になりました。
成長したアラン・ダヴーはスペイン内戦に際して日系義勇兵として赴き、土方勇志伯爵の下で戦塵に塗れることになり、また、篠田千恵子は土方勇と相思相愛の間柄になりました。
そして、村山キクから、篠田千恵子と土方勇が将来を考えていることを知った林忠崇は。
名乗れぬ祖父として、二人の結婚に骨を折ることにしたのです。
そして、林忠崇の様々な骨折りの結果。
最終的に、土方勇と篠田千恵子は結婚し、篠田千恵子と岸総司は、村山幸恵を陰の姉としてお互いに認めることになります。
また、そのことから「四姉弟」のことを推察した土方勇志の配慮により、土方勇は、アラン・ダヴーの事を知り、岸総司との仲を取り持つことになります。
年老いた林忠崇は、このことを墓場まで持っていくつもりでしたが、色々考えた末、村山キクにだけ、このことを明かすことにします。
村山キクが、村山幸恵と岸総司が仲良くすることを勧め、更に篠田千恵子の結婚について、北白川宮成久王殿下を介して自らに相談したことから、恐らく全てを推察しているだろう、と想ったからです。
それに村山キクの人柄等に、林忠崇が信頼を寄せていたのもあります。
実際には、村山キクは推察してませんでしたが、林忠崇の人を見る目に狂いはなく、村山キクは、これらの事実について沈黙を護り抜くことになります。
また、土方(篠田)千恵子にも、不憫極まりない子と想っていたことから、真実を少しだけ明かして、林忠崇は、あの世に旅立ったのです。
以上で、現在の「四姉弟」と林忠崇の関係をまとめ終わりますが。
本当にこれだけでも、仮想戦記の家族関係とはとても思えない、ドロドロの修羅場ホームドラマ並みの濃い家族関係です。
更に、外伝まで含めれば更に濃い家族関係に。
(例えば、岸総司は、外伝では村山キクの産んだ義妹の美子と結婚していて、村山キクを二重の意味で
「お義母さん」と呼ぶ事態に。
何しろ妻の実母で、父の愛人ですから)
何でここまでやったんだ、とツッコまれて仕方のない家族関係になってしまいました。
作者の私の暴走し過ぎを心から深く反省します。
ご感想をお待ちしています。




