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第27話 最終的な現在の「四姉弟」と林忠崇の関係3

 ところが、篠田りつにしてみれば、予想外のことが立て続けに起こってしまいます。

 何と、正妻の岸忠子(本来は、結婚に伴い、野村忠子になっているのですが、ややこしいので、岸忠子で統一します)も、野村雄の子(後の岸総司)を妊娠していたのです。

 それに、岸忠子に対する釈明の必要もあり、岸忠子が出産してから、あらためて話し合おう、と野村家に言われては、それ以上のごり押しも、篠田りつとしては、すぐにしかねました。


 何しろ、篠田りつの胎児が、野村雄の子でもある、というのは、篠田りつの一方的な主張です。

 余りにも自分の主張をごり押ししては、却って、味方からも引かれてしまい、今、現在、篠田りつに味方している簗瀬真琴らも、野村雄の弁解を聞いてからでもいいのでは、と言い出しかねません。

 そう考えた篠田りつは、少し待つことにしたのです。

 ところが。


 篠田千恵子を、無事、出産した後、野村雄が戦死します。

 更に遺言状で、篠田りつの子を(万が一に備えて)野村雄は認知していたことが明かされます。

(野村雄としては、篠田りつの性格からして、妊娠出産する可能性を読んでいたのです)

 そして、岸忠子は、その遺言状を見て、すぐに胎児相続手続きを取り、岸総司が生まれた後、篠田千恵子を遺言認知するという違法行為により、結果的に篠田千恵子を野村家から追い出します。


 そして、野村雄の遺言状の内容をできる限り、篠田りつは伏せようとしましたが、こういうことは徐々に漏れるものであり、簗瀬真琴らの篠田りつに向ける目が逆に険しくなる事態が起こります。

 とは言え、野村家にしても、ここまでの流れは針の筵に座っていたようなものでした。

 そうしたことから、複数の人を立ち会わせて、篠田家、野村家、岸家が話し合い、更に第一次世界大戦終結後に、岸三郎が、欧州から帰還した後、再度、三家で話し合った結果、最終的には。


1、野村雄の家督を継ぐのが、岸総司であることを、篠田家は認める。

2、千恵子は、野村雄の家に入らず、篠田の家に入る。

3、野村家は、千恵子の養育費を、土地建物を処分することで一括で支払い、また、野村雄の遺産の2割を家督相続を諦める代償金として、千恵子は受け取る。

4、野村雄の家は何れ廃家とし、岸総司は、岸家を継ぐものとする。

5、それらすべてを考え合わせて、篠田家は、野村雄の家を廃家とすることに、異議を述べない。

 

 大体、上記のような内容の示談がまとまりました。

 ですが、それ以前に、野村の本家は、この件で村八分にされたことから、会津の土地建物を処分し、会津から完全に離れていました。

 そして、この結果は。


 主にですが、簗瀬真琴ら、野村雄や篠田りつの同級生を中心とする篠田りつに味方していた面々にしてみれば、極めてバツの悪い結末でした。

 篠田りつの扇動にのったら、実は野村雄なりに篠田りつのことを考えていたこと、更にそこまでのことを意図していなかったとはいえ、野村家を会津から追い出してしまったことが分かったのです。

 篠田りつは、周囲の空気が変わったのを知り、慌てて両親と共に会津から逃げ出し、東京にいる兄を頼ることになりました。


 一方、林忠崇は、欧州から帰還するまで、そんな騒動が起きているとは、露、知らないままでした。

 林忠崇が、ことの経緯を知った発端は、村山キクが、幸恵の実父、野村雄の消息を、北白川宮成久王殿下に尋ねて、北白川宮成久王殿下が、この件の詳細を知ったことからだったのです。

 北白川宮成久王殿下は、岸忠子と篠田りつが泥沼の痴話喧嘩をしていることを知り、どう村山キクに伝えたものか、と悩み抜いた末、林忠崇に現状を伝えて、相談しました。

 林忠崇は、慌てふためきました。

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