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フストリェーチャ  作者: 川崎雨御
第一章:春前の一連
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第一章23 《誕生日はянва́рь второ́е》

―8分後―


 俺が零香の語尾の由来を語らって、八分が過ぎました。


「っとまぁー、そんな感じで。 それが初めて俺が零香の語尾「っぽ」を知ったのだ」


「なるほどー」


「恥ずかしい・・・」


 数分で簡潔に零香の語尾がいつ始まったのかを教え、そこに真剣に聞いていたエリヴィラは俺のよこに座ってた。

 そして零香の顔が真っ赤になって、ベッドのすみっこに頭を抱え込んでいた。


 保健室の中、不思議なオーラで包まれていた。 春が近づいていくなのか、やけに暖かく感じている。 もしくはこのふたりと一緒にいると、『幸せ』という温もりが感じているのか――、


「よかった・・・」


「え? なにが?」


 安心した俺は思わずココロの声を漏らし、エリヴィラはそれをはっきりと聞こえて、俺に向かって質問した。


「あ、なんでもない」


 俺は右手を振って、大丈夫と示していた。 その頃、零香は――、


「まさかもう一度あの日のことを思い出すだなんて・・・」


 恥ずかしがってる零香は自分の語尾に一種の弱点と思ってた。

 まぁ、俺はもう慣れてるから、あんまり気にしていないが・・・


「まぁー、俺はまだ鮮明に覚えてる、あの日の出来事を」


「なんでそんなどうでもいいことを覚えてるの?!」


「おおお、うおおお!! ゆ、揺らすな・・・!」


 零香は俺の制服の襟を掴んで、激しく俺を揺らされていた・・・


「や、やめろぉぉ――」


 ――目が、回るー。


「まったく、どうして君はいつも肝心なことを覚えていないの? しかも私とのやくそ――」


 零香がぶつぶつとなにかが言っていたが・・・

 全然聞こえない。


「え? 今なんて言った?」


 聞き取れなかった俺は、身を少し零香に寄せ、もっと聞きやすくため俺は右手を耳の後ろに乗せた。


「なんでもないわ。 君が自分で思い出すまでは、私はなにも言わないつもり」


 しかし彼女は俺になにも教えず、腕組して、俺に背を向けた。


 ――なんじゃそりゃ?


「ふふふ」


 俺と零香がいつもの会話をしていたら、エリヴィラの笑い声が聞こえた。


「やっぱりパーパと母さんが仲がいいです。 私も一緒にお喋りしたいです!」


 ここのどこが仲がいいに見える? まったくこの子は・・・しょうがないなー。


「零香」


 エリヴィラのわがままを聞いた俺は、俺の大事な幼馴染み、零香・ナイトを呼んだ。


「なに?」


「俺たちはこの子の親。 だから、俺たちもエリヴィラと仲良くしよっ!」


 ニコリと笑った俺が、零香に手を差し出して頼んだ。


「えっ?! あ、うん。 そうだね、私たちはエリヴィラちゃんの親、ですからね!」


「うん!」


 最初の驚きに気になるが、でも今は三人で仲良くお互いのことをもっと知るためのファミリートークだ!



 ※ ※ ※ ※ ※ ※ ※ ※ ※ ※ ※ ※



 ファミリートークをやると決めた俺たち三人は保健室のベッドの上で座っていた。 三人一緒に窓に向けていた、俺は右で、零香は俺に左の隣に座っていた。

 そしてエリヴィラは零香の太ももの上に座って、ニコニコと幸せに笑っていた。


「じゃーエリヴィラちゃん、なにを聞きたいんだ? 私が答えることなら、なんでもいいよ?」


 零香がニコリと笑って、エリヴィラの頭をなでなでした。


「ありがとう、母さん。 じゃーええとね・・・」


 こうしてエリヴィラが俺たちに色んなことを聞いた、最初は普通の誕生日は何時とか、好きな食べ物とか、好きなマンガも聞かれた・・・そして話してる内に時間があっという間に過ぎたんだ。


「ね・・・パーパ」


 そして四時間目の授業が終わる前、エリヴィラが俺の制服を優しく引っ張って、俺を呼んだ。


「ん? どうしたの?」


「実は、私も誕生日が・・・欲しいです。 ダメ・・・かな?」


 初々しい表情で俺を見詰めていた。


か、カワイイ・・・


「きゅ、急にどうしたの? 誕生日が欲しいなんて・・・」


「だって・・・私だけ、誕生日がしらないんだ。 名前もパーパが付けたし、苗字もパーパのだし、でも誕生日だけがまだないんだ・・・」


 そっかー・・・この子、自分だけの誕生日が欲しんだ。


「零香、どうする? ここでエリヴィラの誕生日を決める?」


 自分で考えてもなにも始まらないから、零香に意見を求めた。


「私にも聞くの? ん・・・そうだね。 じゃーこれはどう? エリヴィラちゃんの誕生日は1月2日、どう?」


 ――1月2日?


「どうして1月2日なんだ?」


 気になった俺が、質問した。

 そして零香がなぜかニヤッとした。


「ふんふん~それはね、簡単なことさ! 詩狼、私の誕生日は何時?」


 人差し指で零香は俺に指した。


 なんだよ急に。


「1月1日・・・」


「じゃー詩狼の誕生日は、何時?」


 はー?


「1月3日」


 状況を理解できていない表情をした俺は、棒読みで自分の誕生日を零香に教えた。


 ――いったい零香がなにを言いたいんだ?


「そう、それだ」


「はい? ごめん、ちょっと理解出来ていないんだ・・・」


 本当だよ?


「ハ・・・詩狼は本当にこういうときの反応が鈍いだね・・・じゃー、はっきりと言おう! 私と君の誕生日の間、なにがあるの?」


「ええと・・・一日のブランクがある」


 それで? なんでそれがエリヴィラの誕生日に関係が・・・いや待て。


 俺は1月3日に生まれた、零香が1月1日に生まれた・・・そして零香がエリヴィラの誕生日を1月2日に決めた。 もしかして俺たちの誕生日を順番に繫がった? そういうことだったの?!


「まさか・・・!」


 俺が頭の中に情報をまとまった後、驚きの表情をした。


「そう、そのまさかだ。 ふふ・・・エリヴィラちゃん、君の誕生日は1月2日、そして君のお陰で私たち三人の誕生日が繫がったのだ!」


 零香がそれをエリヴィラに聞かせ、そしてその本人は――、


「янва́рь второ́е......」


 エリヴィラがなにかロシア語で話したが、よく分からなかったけど。


 そしてそれを聞いたエリヴィラが、目が一段と大きくなって、瞳が太陽の光に反射し、目の色が輝いてると見えた。


「わああ!!!! うれしい!!! Спасибо,мать!!!!」


「わあっ!」


 エリヴィラあまりにも突然に零香を強く抱きしめたので、零香が思わず声をあげ、床に落ちた。


「おーい、大丈夫かい? ふたりとも」


 俺は慣れたせいか、ベッドから離れず、ただ少しだけ体を右に寄せ、あんま心配してない口調ではなした。


「だ、大丈夫です・・・もう、エリヴィラちゃんったら、急に抱きしめられたので、びっくりしちゃったじゃないっぽ!」


 零香は頭に手を乗せ、ぶつかったところを撫でて、平気みたいなまなざしでこっちを見た。


「まぁーまぁー、エリヴィラは感情を行動で示しているだからこそ、そういうところがカワイイから。 その辺にしてくれない? それに、今は彼女の中にあった喜びがあまりにもあったので、つい爆発したのだ。 ね、エリヴィラ?」


「うん!」


 エリヴィラが元気いっぱいな返事をした。


「まったく・・・この親子ったら・・・ぷ、ぷハハハハ・・・」


 零香は最初だけ文句を言って、なぜか笑った。

 そしてそれを見た俺とエリヴィラがその笑い声にうつったみたいに、俺たちも一緒に笑った。


「クハハハハ・・・」


「ふふふふ・・・」


 最初のように、始まりの笑い声と終わりの笑い声。 俺たち三人は笑うのをやめなかった、幸せに、楽しく、笑っていた。

 保健室の外からも聞こえる、三人の笑い声でした。



 ※ ※ ※ ※ ※ ※ ※ ※ ※ ※ ※ ※



 キーンコーンカーンコーン

―四時間目終了―



 俺たちが話してる内に、昼休みになった。

 そして俺が気づいた、零香がまだ一度も休んでいないことに。


「もうこんな時間かーどうする、零香。 疲れがまだあるの?」


「ううん。 疲れていないが、どうして?」


 彼女の頭のあたりに疑問符が見えた。


 どうやら、エリヴィラと話してる内に元気になったみたいだ。


「パーパ、これから教室に戻るの?」


 エリヴィラは俺の制服の上着を引っ張った。


「うん・・・そうだね」


 俺はいつも昼飯は食べない主義だし・・・どうしよう?


「詩狼、今日は一緒に・・・食べない?」


「え?」


 あまりにも突然な質問で、俺はボケーとした顔で返事した。


 ――今なんて言った? 一緒に食べない・・・だと・・・?


 零香が急に妙なことが言ったから、一瞬に自分の耳を疑っていた。


「なん、なんでそう聞くの?」


「だって、詩狼が高校に入った後、いつもひとりで学校の隅っこで寝ているでしょ?」


 ――なんでお前がそれを知ってるの?! まさか俺は監視してた?!


「それで? それが今の質問と関係あるの?」


「だから、今日くらいは私と一緒にお昼しないと聞いてるの! もちろん、これはエリヴィラの誕生日を決まったことを祝いするためでもある。 どう?」


 少し熱くなってた零香は、ぺらぺらと喋ってた。


 なんか必死だね、零香のやつ。 もしかしてなにかが企んでる?


「エリヴィラ、お前はどうする? 俺と母さん一緒に食堂でお昼しない?」


「・・・! Да!」


 少しドキッとエリヴィラが、大きな声で「ダー」を言った。


 耳鳴り・・・


「だってさ、零香」


「え?」


「え?」


 零香は俺の数秒前とそっくりのリアクションした。 ボケー。


 さっきエリヴィラが言った言葉、零香が理解できていないようだ。 あ、そうだった。 零香はロシア語が分からないんだ。


 自分で納得した俺は、勝手に推理し、左手を開いて、そして右手を握って、「なるほどー」と右手を乗せた。


「大丈夫大丈夫、今のは「はい」だったよね?」


 ――ん?! 一発で当たった!


 驚きすぎた俺は、危うく心のツッコミを漏らすところだった。


「Да!」


 そしてエリヴィラがもう一度さっきの返事を繰り返した。


「ふふふ、じゃー行きましょー」


「そう・・・だな!」


 俺と零香が立ち上がった後、ふたりが一緒に手をエリヴィラに伸ばした。


「行こう、エリヴィラ」


「行きましょう、エリヴィラちゃん」


 俺たちは笑って、彼女の返事を待っていた。


「Да!!」


 エリヴィラが俺たちのそれぞれの手を掴んで、一緒に保健室から出て、食堂へ向かった。



 ※ ※ ※ ※ ※ ※ ※ ※ ※ ※ ※ ※



 俺たちが保健室から出た直後、幸春先生が来た。

 保健室に入って、ドアを閉じた後、幸春先生が後ろに向き、そして右手に持っていたカバンが床に落ちた。


「いったい・・・なにがあったんだ・・・?」


 先生が見た光景は、ベッドが誰かに使用された痕跡があり、複数のタオルがあって、自分が普段使ってる白いロングコートが・・・丁寧に椅子の上に置いてた。 そして・・・窓が開きっぱなしでした。



―1F廊下―



「あ・・・」


 俺たちが食堂に向かう途中、俺はとてつもなく大事なことを思い出した。


「どうした? 詩狼」


 零香も足を止め、俺のほうに振り向いた。


「保健室がそのまま置いちゃった・・・」


「あ・・・」


 ――お前も忘れたのか?!


「でも私、ちゃんとコートを整えたわよ?」


 ――逆に怪しまれるわ!!


「なんでその時保健室を片付くというだいじなことを思い出せなかったのか?」


「ま、まぁー、食べ終わった後、保健室に行って。 もし幸春先生がいたら、ちゃんと謝ろ」


 ――今、目逸らした。


「ハ~そうしよう」


 俺もあきらめて、何も言わずことにした。


 こうして俺たち三人は食堂へ向かった、手を繋いだまま。

最近は仕事でいっぱいだ・・・

また不定期に投稿する「かも」!しれないが、皆さん、応援ありがとうございます!

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