第一章22 《十三年前》
―5分後―
その五分の間、俺たち三人は泣き続けていた。
そして俺たちはエリヴィラを落ち着くまでずっと慰めていた、涙を流しながら。
「落ち着いた? エリヴィラ」
俺は少し離れて、ベッドに座った。
「うん・・・」
少し目が赤くなったエリヴィラが、涙を拭いて、再び頭を零香の胸元に寄せた。
「ふふふ・・・泣き虫だね、エリヴィラちゃん。 でも今はいくらでも泣いていいわよ?」
零香はすごく優しい微笑みでエリヴィラの頭を撫でていた。 絵になる光景だ。
「ううん。 もう泣かない・・・だって、母さんとパーパがここにいるから」
エリヴィラが頭をあげ、ニコリと最高の笑顔で俺たちに見せた。
嬉しいこと言うぜ、この子。 俺たちがここにいるから、かーなんか胸の奥に暖かい・・・
「ええ。 私とお父さんはずっとエリヴィラのそばにいるよ? ね、詩狼」
零香もニコリと笑った。
「そうだな・・・これからは三人がずっと一緒だね」
このふたりの次、俺も笑った。
「!!!」
そしてそれを聞いた零香がなぜか急に顔がトマトみたいな色になった、しかも耳まで赤くなった。
おい・・・ひょっとして、さっきエリヴィラの看病をしていたから、疲れが一気に襲ってきたの?!
「どうしたの? 母さん・・・顔、すごく赤いです」
心配になったエリヴィラが、零香を見詰めた。
「えっ?! あ、ううん・・・な、ないでもないよ? ただ疲れたかもしれないだけ・・・大したことじゃないから。 あは、あはははは・・・」
やっぱり疲れのせいだ! しかもあのいかにも無理な偽笑顔をして・・・こいつ、何時になったら俺に正直なことを言うんだ? 仕方が無い。 今日はなんとしても零香に寝かせる!
「零香」
「ん・・・? わわわああ、近い近い! 顔が近い!」
俺は零香を呼んだと同時に、物凄く至近距離で近づいた。 そして零香がそれに驚いて、椅子から立ち上がった。
「零香、お前やっぱ疲れているだろ? そんな顔をして、真っ赤だぞ?」
「へっ?! いや、これは詩狼が思ってることじゃないから・・・!」
説得力がまったくない、体が震えてるし、足もふらふらだし・・・もう立ってる自体がキセキなんだろ? はやく零香を寝かせよ!
「エリヴィラ、零香が疲れているんだ。 でも彼女はそれすら自覚していない、俺と協力して、零香を寝かせましょ!」
俺はまずエリヴィラに助けを求める。
「母さん、疲れている? それは大変です! パーパ、私も手伝う!」
両拳を握って、気合い十分に見えた。
「ありがとう、エリヴィラ。 お前は俺の自慢の娘だ」
――この子、やっぱカワイイよなー。
少し笑った俺は、いつも通り彼女の頭をなでなでした。
「Спасибо, папа!」
今の言葉、それがなんなのかが、俺がよく分かる。 エリヴィラが「ありがとう、パパ!」と言った。
「しかしその前に・・・」
「うん?」
俺は大事なことを思い出し、真剣な表情をして。 エリヴィラは疑問な表情をした。
「服を着れ、エリヴィラ・・・」
その大事なことは・・・それは・・・エリヴィラはまだ下着姿のままだったてこと。
「わっ! そうでした! 母さん、手伝ってくれませんか?」
「もちろん! あとは、詩狼、あっちに向いてくれる?」
零香はまっすぐに俺を向こうに向けと頼んだ。
「はいはい」
――あそこのカーテンを見ればいいでしょう?
そして零香とエリヴィラ、親子ふたりの楽しい時間が始まった。
もちろんこのシーンはカットさせてもらう。
―2分後―
「お待たせー」
零香が先に声をかけ、そして俺は椅子から180度の回転で零香たちの方へ見た。
「おおー今朝も言ったが、よく似合ってるぜ、エリヴィラ。 カワイイよ?」
「Спасибо, папа!」
さっきと同じ、俺に礼を言った。 礼儀正しい子だね、カワイイ。
「Пожалуйста」
そして俺はロシア語でエリヴィラに返事をした。
「パーパ、ロシア語で喋った!」
エリヴィラがすごく驚いたみたいだ。
それもそうだ、昨日はロシア語の基本挨拶は喋るになったのは、全て・・・エリヴィラのお陰だ。
「おう! これから、時々ロシア語で会話をしましょー」
「Да!」
テンション高いなー、やっぱテンション上がると、母語で喋ってしまうのかーカワイイやつ。
「あの・・・」
俺たちがニヤニヤと笑ってる間、突然、零香が話しを掛けた。
「ははは・・・ん? どうしたの?」
「いや・・・詩狼たちがあんまりにも楽しく私の存在を忘れていたから、つい声を掛けてしまったというか、なんと言うか・・・」
「はー?」
なに言ってるの? 零香のやつ。 彼女の存在を忘れていた? いや待て、そう言われると・・・そうかもしれん・・・
「パーパ」
エリヴィラが俺の制服の袖を引っ張った。
「ん? なに?」
「母さんを寝かせること、もういいの?」
「え?」
ああああ!!!! そうだった! 本来の目的は零香を寝かせるだったのだ!! すっかりエリヴィラのペースにつられてしまった・・・
「零香、俺がお前を寝かせるから、大人しくしてよ・・・」
自分の本来の目的を思い出した俺は、零香に少しずつ近づき、そして零香はなぜか同時に少しずつ下がっていた。
「な、なにをするの? 私を寝かせ、どうするつもり?」
「どうするって? いや、別に・・・なにもしないよ?」
「はい?」
零香が呆れた顔で俺をみた。
なんで?
「お前、疲れてるだろ? 今の内に少しだけ寝てろ、俺が幸春先生に事情を説明するから」
「また私を・・・ひとりで置いて行くの?」
「えっ?」
――今、なんて言った? ひとりで置いていく?
予想外の返答を聞こえた俺は、動きを止まった。
「私はもういやっ! 詩狼! 私をひとりにしないで!」
零香が泣いてた、そして――、
「うおお!!」
トン!
急に俺に飛び込んだ・・・
――俺はいったい何回このシチュエーションを味わえなきゃいけないの・・・?
「ご、ごめん! 詩狼、大丈夫?」
零香が自分がなにをやったのかを気づき、すぐに謝った。
「へ、平気・・・それより・・・」
「うん?」
「何時まで俺の上に乗せる気? いい加減に降りたらどうだ? この姿勢・・・ちょっとまずいかも・・・特にエリヴィラには」
零香が俺を倒された後、俺の腹の部分で座っていた。
「はっ!! ご、ごめんっぽ! すぐにどけるからっぽ!」
また緊張になったな・・・しょうがないやつだ。
「パーパ」
零香が俺の上から降りている間、急にエリヴィラが俺を呼んだ。
「どう・・・したの?」
「母さんの「っぽ」はなんですか?」
まるでストレートの矢が明白に正確な質問をしたエリヴィラが、俺に聞いた・・・
直球だね・・・しかもストライクだ。
「ええと・・・なんて話せばいいのか・・・な、零香、本当に言っていい?」
「わ、私に聞くなよ!」
「ええーお前のことだろ?! チッ! しょうがない・・・」
零香が自分で話すを断った。 それもそうだ・・・零香の過去は俺だけが知ってる秘密・・・ふたりだけの秘密だった。
「いいか、エリヴィラ。 これから話すのが、他言無用だ。 これは母さんの秘密だからね! いい?」
念のため、俺は話す前に、まずエリヴィラに確認した。
「うん! 母さんの秘密は私が守る!」
自信満々で返事をした。
――本当にいい子だね・・・
「じゃーここに座って、エリヴィラ」
俺がエリヴィラをベッドに座れと誘って、そして隣りに立っていた零香が椅子に座った。
「どう始まるのか・・・あれは確か、幼児園の頃だったのだ――」
こうして俺は零香の語尾についてを語ろうとした。
―13年前―
あの時はいつも通り、俺と零香が一緒に公園の砂場で遊んでいた。 俺たちの両親も近くのベンチに座って、楽しく話していた。
「ね、れいかちゃん」
「なーに、しろちゃん」
ひとりの黒髪の男の子とツインテールの黒髪と金髪の女の子が楽しくお互いの名前を呼んでいた。
「ぼく、れいかちゃんをまもる!」
男の子が立って、胸を張って、彼女を守ると宣言した。
そして近くいた両親がそれを聞いて、微笑ましと笑った。
「きゅうにどうしたの?」
しかも彼女は思わない質問をして、男の子が自分で言ったことに疑問を持った。
「ええとね・・・もしれいかちゃんがわるいひとにいじめられたら、ぼくをよぶ?」
「うん!」
女の子が迷うわず言った。 それが彼の心に暖かい温もりを感じた。 それは、喜び。 まるで子供がずっと欲しかったおもちゃを手に入れたような気持だった。
そしてふたりがニコニコと笑いながら、手を繋いでた。 その時、近くで通った三人の子供はふたりが仲良く手を繋いでるところを見て、近づいてた。
「わーてをつないでるーきもい」
「なに? あのかみ、ばけものみたい!」
「ここからきえて! でていく! このようかい!」
急に三人が女の子に悪口を罵ってながら、砂で彼女に投げた。
女の子が怖くて、頭を抱えて、泣いた。 それを見た両親がすぐにベンチから立ち上がって、あの子供たちに叱ると思った時、男の子が女の子の前に立ち、両手を大きく広げて、こう叫んだ――、
「れいかちゃんはぼくがまもる!」
そして自分より年上の三人男の子に喧嘩した。
その後、彼の両親が来て、すぐに喧嘩をやめた。 でもその時、三人はすでに泣いてながら、逃げたんだ。
でも女の子は泣くをやめなかった。 男の子が彼女に近づき、手を差し出した。
「れいかちゃん、もうだいじょうぶだよ? いっただろ? ぼくがれいかちゃんをまもるって」
男の子が明るい笑顔で女の子に見せた。 そしてまるで太陽のように、彼女の暗い顔が一瞬で照らされ、泣くをやめた。
「う、うん・・・ありがとう、しろちゃん」
彼女が左手で涙を拭いてながら、右手で男の子の手を掴んだ。
立ち上がった彼女は、急に男の子に抱きしめられた。
「これから、ぼくがずっとれいかちゃんをまもるから。 だから、もうあんしんして」
それを見た女の子の父がショックを受けた表情をした。
そして隣にいた母が微笑ましい光景を見て、ニコニコと笑っていた。
逆に、男の子の父が腕組みして「うんうん!」と強く頷いた。 母親はニコニコと笑っていただけだった。
ところが、肝心の女の子が男の子に急に抱きしめられ、緊張して、顔が赤くなった。
「あ、ああありがとうっぽ・・・」
そこにいた全員が凍ってしまった。
「え? ぽ、っぽ?」
男の子が聞き間違えと確認し、彼女が言った語尾をもう一度言った。
それに答えた女の子が、更に顔を真っ赤になって、頭を横に強く振った。
「ち、ちがうの! いまはちがうっぽ!」
それでも、彼女の言葉に「っぽ」の語尾が再び現れた。
それを聞いた大人たちが笑うのを堪えて、口を手で抑えてた。
しかし、男の子が逆に冷静に、もしくは笑うところが分からなくて、泣きそうな彼女に笑顔を見せた。
「かわいいと思うっぽ」
そして女の子もその笑顔に引き付けられ、彼女も笑った。




