第一章18 《新たな現象(?)》
穏やかな学校に、2年A組が少し違う雰囲気で包まれていた。 隣りの教室にいる生徒たちと教師は、疑問を持った顔で隣りのクラスを見詰めていた。
そして現にこのクラスに、騒がしいでした。
「よろしくな、エリヴィラちゃん!」
「よろしくね、エリヴィラちゃん!」
「よろしく~」
クラス全員がエリヴィラに挨拶をしていた。 みんなが笑って、エリヴィラもその空気に染め、彼女も笑った・・・
――もちろん、俺もだ。
「こちらこそよろしく、おねがいします!」
「「おおおうう!!!」」
そんな楽しい時間のなか、既に授業のチャイムが鳴った。 でも、みんなのテンションが収まれなかった・・・全員がわいわいとお祝いみたいで教室中騒いでいた。 しかし――
「よーし、出席番号を呼ぶぜ~ 赤田!」
いきなり刈尾先生が出席を呼び始めていた。
「空気を読め、先生!」
っと、赤田がツッコンだ。
「騒ぐのがいいが・・・今は授業の時間だ。 休み時間でいくらでも騒いで来い! 秋田!」
「はーい」
――割り込みすごいな、この先生。 っといけない、自分の席にもどろう・・・
「エリヴィラ、こっちに来て」
俺は手を伸ばし、それをエリヴィラが掴んだ。
「Да~」
ニコニコと笑った。 しかし、俺は自分の席に着いた時、物凄く重要なことに気づいてしまった・・・
「あの・・・先生」
「黒崎! ん? どうした?」
「はい」
「実は・・・エリヴィラがどこに座ればいいのですか? 椅子、足りませんけど」
このクラスはもうすぐ一年になるし、余った机と椅子なんてない。
――エリヴィラはどこで座ればいいんだろ?
「あ~、確かに足りないね・・・じゃ、エリヴィラくんが雪月花くんの上に座ればいいんじゃないか?」
――は? なに言ってるの? この先生。 エリヴィラを俺の上に座る? と言うことは、一緒に同じ椅子に座るってこと?! いや、無理無理無理! あの椅子は結構小さいですよ? 一緒に座れるわけ・・・ん? 誰か、俺の制服の袖を掴んでる・・・
「パーパ・・・私、パーパと一緒に居たいです。 ダメ・・・かな?」
エリヴィラが初々しい表情でこっちを見た。
――はっ! か、カワイイ・・・
「も、もちろんいいぜ!」
グッドサインを出した俺は、頭で考える前に体が先に動いた。
――やってしまった・・・なんで引き受けたの? 俺。
「ありがとう~」
「うおお!」
「えへへへ」
急にエリヴィラが飛び込んだが――
――こんどは倒されにすんだ。
「また急に飛び込んできたんだな・・・仕方の無いやつめ・・・」
それを言った後、俺はいつも通り、彼女の頭を撫でた。
「えへへ~」
――ふん・・・やれやれだぜ。 こんなカワイイ娘、つい彼女を甘えるよね・・・
「コッホン!」
っと、誰かがわざとらしい咳を吐いた。
「雪月花くん、親戚同士の仲良しさ、できれば休み時間でやって欲しい。 クラス全員の男が怖い目であなたを見ていますよ?」
「はい?」
刈尾先生が言ったことが最初の零点七秒が分からず、一秒経過した後に先生の言葉を理解し。 俺はオロオロと周りを見た。
「ウオッ!」
――こわっ! なんだよ? なんであいつらはそんな怖い目で俺を見ているの? 男子全員の目は殺気を感じる。
したがって、教室は殺気で包まれていた。 ドス黒い殺意があちこちまで伝わってきた。
「クソ! なんであんなやつがこんなカワイイ親戚持ってるの?」
「あんなにベタベタとくっ付いて・・・くぅー! 羨ましい!!」
「ころす」
――おい! 最後の言葉! 誰が言ったの?!
「あいつ、ナイト会長がいるのにね・・・」
――な・・・!
「いったい誰だ! あんなふざけたことを言った?!」
俺が反応をする前に、急に零香が怒った。
――なんで?
「ひっ! ごめんなさい!」
っと、粕谷がすぐに自分の席から立ち上がって謝った。
――あいつがさっきのことを言ったの? ていうか、謝るのがはやっ! 三秒にしか経ってない気がする。
「後で生徒会室に来い」
「は、はい・・・」
粕谷が後悔した顔で返事をした。 でもってクラスの連中がなにか呟き始めた。
「うわ~、やっぱナイト会長はこえ~」
「顔がキレイだけど、性格は・・・ね・・・」
「ナイトさんはなにか近づき辛いですね・・・」
「そうそう」
クラスの連中がこそこそと零香のことを呟いていた。
――やっぱりこうなった・・・みんなもいい加減に慣れないかな?
――そう・・・みんなは零香に怯えていた、恐れを感じていた。 成績はいつも学園一、スポーツも万能、あとは、少し正義感が持ってる。 これは俺にしか分かることだ。
外観はイギリス人で、髪は金髪と黒髪、それは零香の特徴だ。
他の連中と違って・・・学校の生徒の髪色は黒髪や茶色髪や、髪を金髪で染まったとか・・・或は別の色で染まったとか(主に女子はね、もちろん男子もいます)。
――ちなみに俺は黒髪に見えるが、光に強く照らされたら茶色に見えます。
でも零香の髪は黒髪と金髪と言ったが、ここに奇妙なことがある・・・なぜか髪色はきちんと割れていた、左の髪色は金髪で、右の髪色は黒髪だ・・・零香の髪型は左の前髪、つまり金髪の部分の前髪を黒のヘアピンで後ろに巻いて、右側の前髪を残した。
――別の簡単な説明をしよう、例えば、零香を2Dで見たら・・・彼女の左から見ると、髪は金髪にしか見えない。 でも右から見ると、髪は黒髪にしか見えない。 それから、零香を後ろから見れば、黒と金はキレイに割れていた、右と左。
でもそんな自分勝手な妄想で零香に怖がるのは間違ってると思う、確かに零香は厳しいところがありますが、根っこのいい女の子だ。 この幼馴染みが保証する。
「お前ら、そのへ・・・」
「いいんだ」
俺が零香を庇うつもりが、彼女自身に止めた。
「でも・・・!」
「大丈夫、もう慣れたから・・・」
零香がそれでも自分が大丈夫と言い張ってた。
――嘘だ。 零香が嘘をついてる、声が震えていた。 なんだよ・・・そんなにも辛い思いを抱える気? お前が小さい頃の時からずっと他の連中にいじめていたのに、なんで言い返さないのよ? なんで俺に守ってくれないの?!
確かに俺は運動にかんしてはど素人だけど、カワイイ幼馴染みを守るチカラなら持ってる。 なんで分かってくれないの?
俺はすっごく悔しそうな顔をしていた時、エリヴィラが俺を見詰め、手を握った。 こんな茶番が続くと思ったら――
「おい、みんな。 その辺にしてくれませんか? これ以上生徒に危害を加えるのなら、君たちの両親に相談しなきゃならない場面になるぞ? いくら君たちでも、親に説教されるのが、嫌いだろ?」
刈尾先生が急にみんなに忠告させ、黙らせた。 やっぱ先生はスゴイです。
――先生・・・ありがと。
俺は深層から刈尾先生を感謝した、零香もちゃんとお礼を言った。 先生のおかげで、なんとかこの重い雰囲気を消した。
そしてみんなが黙り込んでいる間、俺も自分の席につき、教科書をカバンから持ち出した。 エリヴィラが俺の腿の上に座った。
「やっぱそうなるのかー」
「パーパの腿、暖かいーえへへ~」
――まあいいかー。 意外と気持ちいいぜ、これは。
クラスの空気が少しほぐれた後、なんとか授業が再開し、みんなは専念に授業を聞いた。
※ ※ ※ ※ ※ ※ ※ ※ ※ ※ ※ ※ ※
一時間目、国語。 でも授業中のみんなが真剣に勉強していたので・・・あっという間に一時間目は終了し、休み時間に入った。
「じゃー今日が学んだことを復習すること、いいな?」
「はーい」
「小学生じゃないし!」
いきなり坊主の頭をしている日比野が訳の分からないことを言った。
「俺は特に君を言っているのよ、日比野くん。 君は見た目が高校生が、頭のなかは立派な小学生だ」
そしてみんなが笑って、俺も思わず笑ってしまった。
「ぷふ・・・」
「んなわけねえーだろ!?」
日比野がすっごく怒ってた。
「違うの?」
「ちげえよ!」
「じゃー今までの成績は?」
刈尾先生がニコっとした。
「うっ・・・オール・・・レッド・・・デス」
――そういえば、日比野の成績はいつも赤点だったな・・・一年の時から、それでも留年せず、二年生になった。 もはやキセキと等しい出来事だ。 でも確か・・・日比野の三学期の成績は・・・
「君はバカじゃない、日比野くん。 単純にやる気がないんだ、そこは小学生と同じだ。 もし君は少しだけでもいい、やる気を見せたら・・・こんな簡単な授業や試験も簡単に赤点ギリギリまで通せるだろ」
刈尾先生が立派な理論で日比野に説明した。
「マジスカ?」
日比野の瞳に潜んでいた希望の炎が一気にきらりと光って、先生の言葉を信じた。
「ええ、もちろんよ」
「よっしゃっ! これなら留年にすむぜ!」
「ただし! 明後日の追試に合格したらの話だ」
――そうだった。 あいつが三学期の期末テストの成績は全部、赤点だった。
「ウスっ! 俺はがんばるぜー!」
――単純だな・・・こいつ。
「じゃ、明日までの宿題を忘れるなよ?」
「はーい」
そして刈尾先生が教室から出てた後と同時に、みんなが俺とエリヴィラと周辺に集めた。
――はやっ!
みんなに囲まれた直後、いっぺんに色んなことをエリヴィラに質問された。
「ね、エリヴィラちゃん。 君はどこの国の出身だ?」
「好きな食べ物は?」
「なんで髪色は桜色なんですか?」
「日本語は上手ですね、どこで学んだ?」
「詩狼のやろうに妙なことをされてない?」
――おい! 最後の言葉、どこのどいつが言った?! いや、それはともあれ・・・みんながなにか言っているのかがさっぱり分からない!
でも、エリヴィラが真剣にみんなの質問に聞いて。
そして驚くことに、彼女は順番に答えたんだ。
「私はロシア出身です。 好きな食べ物はパーパが作ったボルシチとパンケーキです。 髪色は・・・生まれ付きなんです! 日本語は昨日とパーパで学んだ。 あと、パーパになにもされていません、パーパは私に優しくくれたんです。 えへ!」
――すごい・・・あんな状況でも、エリヴィラはちゃんとみんながなにかが言っているのかを理解した。
俺だけじゃなく、周辺のみんなは驚いた表情で見た。
「ええと・・・今、エリヴィラちゃんが雪月花くんを「パパ」と呼んだ?」
「うん・・・俺もそう聞えた」
「私も私も」
――え・・・? はっ! しまったぁぁ!!!! エリヴィラに言い忘れた! 学校の中で「パーパ」と呼ばないでと頼んでいなかった!!! ど、どどどどうしよう?!
「あの・・・」
俺がパニック(主に精神的)になりそうだった前に、エリヴィラが先に口を開けた。
「さっき「パーパ」と言いましたが・・・あれはロシア語の「お兄さん」或は「お兄ちゃん」なんです・・・」
――は・・・エリヴィラにフォローされた。 しょ、正直・・・助かった~ありがとう、エリヴィラ。
感謝を言葉するより、俺は行動で示した。 彼女の頭を撫でた。
「なんだ、そうだったのかー。 私はてっきりエリヴィラちゃんが雪月花くんを「パパ」と呼んでいたと思ったんです・・・」
「違うかー」
「やっぱ気のせいだったのだ」
違わないが・・・ここはなにも言わないほうがいい。 エリヴィラのおかげでどうにか場を落ち着くさせた・・・
――あぶね~、危うくバレそうになった。
「刈尾先生が言った通り、エリヴィラは俺の遠い親戚だって・・・」
「羨ましいぜ、このやろー」
急に健次が肘で俺の腕に突き刺していた。
「いてえよ、それに・・・なにか羨ましいんだ?」
「このにぶ人間! こんな美少女とひとつの屋根でくらしているんだろ? それが羨ましいんだ、よ!」
「いてっ!」
健次が思いっきり俺の背中を叩いた。
「ん?」
健次に思いっきり叩いた後、急に妙な感じをした。 なんだかこう・・・視線を感じる・・・
背筋が凍ってるような視線を気になって、少しうしろを向いたら――
――ひっ!
「れ、零香・・・」
視線が零香のほうからきた。
「むむむむ・・・」
――お、怒ってらっしゃる・・・目が殺す気だー!
「ど、どうしたの? 零香? なんでそんなに怒っているの?」
「怒ってないよ? うふふ・・・」
――笑った・・・しかし、あの微笑の下で、殺気のオーラが全開だ! どす黒いオーラが・・・! いや待てよ・・・なんか、あのオーラ・・・初めて見る訳じゃない気がする。 いったいどこで・・・? ダメだ、またしても肝心なところで思い出せない!
「ナイトさん、なんでそんな悲しそうな顔で見ているの?」
途端に、あのどす黒いオーラが消えた。 エリヴィラの一言で。
「え? か、悲しい? いやだな、エリヴィラちゃん。 私はそんな顔する訳ないじゃないですかー、気のせいじゃないですか?」
俺がさっきまで感じた殺気も消え、いつもの雰囲気の零香に戻った(だと思う)。
――それになんか・・・零香の顔、赤くない? 風邪?
「え? そうなの?」
自分で分かっていなかったのかー。
「ええ、そうよ」
「んん・・・」
エリヴィラは少しだけ黙り込んだ。
――どうやらここは俺の出番らしい。
「んな、零香」
「なに?」
「実は――」
「お前ら! 席につけ、二時間目が始まるぞ?」
ガラッと教室の扉が開け、俺がなにも言える前に、先生がやって来た。
「授業が終わった後で話す」
「あ、うん、分かった」
俺たちの会話がこれで終了し、みんなは自分の席に戻った。 ところが、エリヴィラがなぜか・・・さっきから俺をジロジロと見ている。
「ど、どうしたの?」
「んん、別に。 あ、今度はなんの授業ですか?」
エリヴィラはまたしてもキラキラな目で俺を見詰めていて、今回が何の授業か聞かれた。
「物理だ」
「なるほど~、パーパの物理の成績は?」
エリヴィラが無邪気な笑顔で俺に質問した。
「え、ええと・・・55点、です」
――物理は苦手なんだよ! 悪い?!
「それって、いい成績なんですか?」
――くはっ!
まるで槍が俺の胸元を突き刺したような気持ち・・・
「い、いえ・・・いい成績じゃないですよ・・・?」
自分で言ってながら、自分自身にとどめを刺した。
「へーそんなんだ。 じゃーもっと頑張ってください、パーパ!」
エリヴィラがなにも知らないから、こうして無意識に連発の図星を放っている・・・
――痛い。
あ、ちなみに今の俺とエリヴィラの会話は小さい声で話していたんだ。
※ ※ ※ ※ ※ ※ ※ ※ ※ ※ ※ ※
二時間目、物理。
俺はエリヴィラの好奇心の振り回され、質問を聞かれて、そしてそれを答えるの繰り返し。 そんな感じで、二時間目の物理が終わった後、高杉先生がなにも言わず、教室から出た。
――相変わらず無口な先生ですね、時には先生がなにを考えているのかが分からないんだ。 っといけない、零香に話せばならないことがあった・・・って、零香は?!
まだ授業が終わった直後というのに、零香の姿がすでにこの教室から消えた。
――あいつ、テレポートでも使えるのか?
「会長さんなら、さっき生徒会の連中に呼ばれたんだよ」
健次は俺が零香を探していると気づき、説明された。
「そうなんだ・・・困ったなー。 は~、仕方が無い、次の休み時間で話そう」
――それしか選択しがないみたい・・・
「ところで、詩狼。 前々から気になったけど・・・お前――」
「ん?」
――こいつはいったいなにを話すつもり?
「やっぱ会長さんのこと・・・」
「!!?」
――もしかして昨日が、俺は零香にノートを貸したいところを見られた?!
「ち、違う違う。 これはお前が思っていることじゃないぞ?」
――これでどうだ!?
「いや・・・そんな必死に誤魔化しても・・・」
「誤魔化していない!」
俺が思わず大声で叫んだ。
――しまった、うっかり大声で叫んだ。 俺が少し焦ったかな? でもなんで?
「ほーら、そんなに――」
「パーパをいじめないでください!」
急にエリヴィラが俺の前に立ち、両腕を大きく開いた。
「エリヴィラ・・・」
「これ以上パーパをいじめるのなら、私は許さないです!」
エリヴィラが怒りのオーラが放っていた。 赤のオーラだった。
そして俺はあることに気づいた、エリヴィラの髪のさきっぽの色が変わっていくことに。
――俺、疲れたのか? エリヴィラの髪の先っぽの色、フクシアから色がどんどん濃くなっていく、赤になっていく。
それに・・・俺は初めて見た、聞えた、エリヴィラの怒ってるところを。 俺のために立ち上がってくれたんだね・・・ありがとう、エリヴィラ。
「待て待て待て、俺は別に詩狼を苛めていた訳じゃないから・・・ただ詩狼をからかっていただけだ・・・悪かったわよ」
健次が少し悪いを思って、すぐに謝った。
そしてエリヴィラも落ち着いた後、髪色がフクシアに戻った。
――髪の色が変化し、元の色に戻るし・・・やっぱ俺、疲れているのか?




