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フストリェーチャ  作者: 川崎雨御
第一章:春前の一連
19/29

第一章17 《2年A組》

 ―8:15―


 その時は既に紗夜ちゃんと別れ、俺たちは俺の学校へ走った。 と言っても、走るスピードは遅い。


 ――特にこの・・・クソ坂は全身の骨が折りそうだ・・・やっぱ体力をつけなきゃいけないんだ。


「もう少しです、パーパ。 頑張ってください!」


 でもエリヴィラはまだ元気そうだ、一滴の汗が見えない・・・

「お、おう~」


 ――心拍数が激しい・・・


 荒い息をしながら、2分後、やっと校門にたどり着いた。


「や、やっと着いたー! ハーハーぐっハー」


 ――息ができない・・・


「おめでとう、パーパ!」


「あ、ありがとう・・・」


 校門に着いた俺は、上半身が起きられなくて、両手を膝の上にのせていた。


 ――深呼吸だ・・・すーハーすーハー。 よし、少しだけ落ち着いたみたいだ。


「んじゃ・・・入ろう」


「うん!」


 こうして俺たちは無事に、学校に入った。 ギリギリセーフであった。


 ――しかし問題はここだ、担任の刈尾(かりお)先生が許可くれるのかな?


 不安を抱いていた俺は、職員室へ向かった。



※ ※ ※ ※ ※ ※ ※ ※ ※ ※ ※ ※



「刈尾先生はまだきてませんよ?」


 職員室に理科を教える、新崎(あらさき)先生が答えた。


「はい?」


 職員室まで着く緊張感が膨らんだ風船が一瞬に萎んだみたいに、緊張感という気持ちが吹っ飛んだ。


 ――なんですてぇぇ?! まだ来ていない、だと? なにやってるの?! あの先生!


「ああ! 遅れてすみません!」


 俺がちょうど苅尾先生に呆れていたところ、その本人が職員室に入った。


「遅刻だよ? 刈尾先生、生徒がお前を探していたんだよ?」


「え? そう? わりーわりー」


 苅尾先生が適当な態度で謝って、俺たちのところに近づいていた。


「おはようございます、刈尾先生」


「あ、おはよう、雪月花くん。 俺になにかようですか?」


 まるでなにもなかったように、先生は単刀直入おれに用事を聞いた。


 ――この先生は・・・、まぁいいか。


「はい、実はですね――」


 俺は簡単にエリヴィラの事情を説明し、そして先生はそれを聞いていた。 結果は――


「うん、許可する」


 ――や、やったー!!!


 歓喜に満ちた俺は思わずおおげさな勝ポーズをとった。


「ありがとうございます!!」


 そして大きな声で礼を叫んだ。


「お礼はいいから、それにしても・・・こんなカワイイ子が君の親戚がなんて、しかも同じ苗字? 他人から見れば、君たちはただの友達か、或いはふたりのご両親知り合ったから、君たちもお互いを知り合っただと思う」


 苅尾先生は座ったまま、腕組をして、頭を強くうなずいた。


「そ、そうなんですか・・・?」


 ――確かにエリヴィラは外国人ですから、そういう考え方はあるかもね・・・


「まあ、あくまで俺の個人的にな推理だけどね。 さ、もう授業が始まる。 俺に付いていこう」


 準備を整った先生は、必要な教科書を持って、軽く俺の左肩を叩いた。


 ――叩く必要なんてないだろ?


「はい、行きましょう、エリヴィラ」


「う、うん・・・」


 エリヴィラはいつもと違って、声に元気が感じない。


 ――ん? なんか震えている、もしかして緊張しているの?


「大丈夫、俺が側にいるから」


 それを言った後、俺はエリヴィラの手を掴んだ。 そしてエリヴィラもそれを答えして、強く俺の手を握った。


「ありがとう、パーパ」


 ニコリと笑ったエリヴィラ、いつものエリヴィラの笑顔でした。


「うん」


 安心したエリヴィラは、俺の手を掴んで、一緒に二階へ上った。

 そして、俺たちはついに俺のクラスに着いた・・・2年A組。


「じゃ、入ろう。 きっとクラスの連中が騒ぐと思うが、怖くないでね」


 先生がそれを言った後、クラスの扉を開いた。


 教室の中はいつもと同じ、みんなはほぼ自分の本来の席にいなくて、男子は、健次も含めて、教室の中で走ったり、ぐしゃぐしゃの紙を投げたり。 女子は今週のファッション誌を見たり、メイクの話をしたり。 或いは本を読んだり――


 ――っと言っても、零香ひとりだけど。 残った連中は全員、携帯をいじっていた。

 みんなはまだ先生が門を開いたことさえ気づいていない、さすがだ・・・


「ほら! 席に着け! このクラスにある人物が来たのだ、雪月花くんの親戚だ」


 先生は大声で叫んで、みんなはようやく先生が教室に入ったことに気が付き、すみやかに自分たちの席に座った。


「もしかして、転校生?」


 さっそく生徒のひとりが質問した。


「ばーか、こんな時期にくるわけんえだろ?」


「でもそれ以外はなに?」


「んさ・・・」



・・・ざわざわ・・・ざわざわ・・・



 その中に、健次と零香も疑問を持っていた。


「ね、会長さん。 詩狼の親戚って?」


「さあ、私もよく分からないんだ」


「えー、幼馴染みである会長も知らないのかー?」


「なにが言いたい?」


 零香は健次を睨んだ。


「いや、別に・・・ただ詩狼のことだから、会長さんはなにか知っているのかなー、と思っただけだ」


「あいにくが、あいつのことは君が思ってる以上が知らないんだ」


 零香がクールに答えた。


「嘘ー」


 いかにも棒読みなセリフを吐いた健次が、ニヤニヤと笑っていた。


「本当だ」


「まあいっかー! じゃ、ご拝見しよう。 詩狼の親戚を」


「ふん!」



※ ※ ※ ※ ※ ※ ※ ※ ※ ※ ※ ※



 俺とエリヴィラはまだクラスに入っていないだけで、クラスの連中がなにを話しているがなんとなく分かる気がする。


「じゃーエリヴィラくん、入って! ついでに雪月花くんも」


「なんでも俺をおまけ扱いするんだ?!」


 ――うっかりツッコンでしまった。


 ともあれ、俺とエリヴィラは教室に入った。 そして思った通り、クラスの反応は――


「うおおおお!!! カワイイ!!」


「なに? あの子? 超可愛い!」


「まるで御伽噺のアリスだ・・・」


「あの子の髪色、綺麗・・・しかも外国人だ~」


「こんな親戚、俺も欲しい!!」


「私も~」


 みんなはリアクションは想定内でした。


「俺の詩狼くんを返せ!」


 ――ん? 最後のやつ! だれが言った?!


「静粛に!!」


 刈尾先生は大声と同時に黒板を強く叩いた。

 パン!!


 みんなは黙り込んだ、いや、唖然の顔をした。 俺もだ。


「よろしい。 ええと、改めて言うが。 この子は雪月花くん親戚だ、まだひとりで家にいるトラウマがあるみたいだ。 だから、彼女がトラウマを克服するまで、この2年A組に滞在することになった。 みんな、彼女と仲良くしてね」


「はーい」


 全員、同時に返事をした。


「んじゃ、エリヴィラくん、自己紹介してくれませんか?」


「あ、はい!」


 エリヴィラは少し前へ歩き、視線をクラス全員へ向いた。 しかし・・・


「あ、あの・・・その・・・わ、わた・・・」


 エリヴィラが緊張している、上手く喋れない。


 ――このままじゃまずい! なんとかしないと!


「あ、あの・・・ええと・・・」


 彼女がまだ震えている間、俺は手を彼女の頭に乗せ、なだなでした。


「大丈夫、前にも言ったあ、俺はお前の側にいるから。 安心して」


「パーパ・・・うん! ありがとう!」


 ――おお~! いい顔だ、震えも止まった。 これなら心配ないかも。


 俺は少し後ろに下がり、そしてエリヴィラは深呼吸して、再びクラス全員を向き合った。


「あの、私は雪月花(せつげつか)エリヴィラとお申します! よろしくお願いします!」


 ――やっと言えた・・・偉いぞ、エリヴィラ。 お前ならできると思ったんだ。


 少し顔が赤くなったエリヴィラは、ただ全員の前に突っ立て、自己紹介がすでに終わっていた。


 そして先生が拍手して、沈黙を破った。 続いて俺、健次、零香・・・そしてクラス全員が続いた。


「よろしくな、エリヴィラちゃん!」


「よろしくね、エリヴィラちゃん!」


「よろしく~」


 感動したエリヴィラは少し安心して、微笑みをさらした。


 「こちらこそよろしく、おねがいします!」


 「「おおおうう!!!」」


 こうして歓声と盛り上がっている2年A組のなか、授業の始まりのベールが鳴った。


「よーし、出席番号を呼ぶぜ~、赤田(あかた)!」


「空気を読め、先生!」


 っと赤田がツッコンだ。

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