第一章15 《予想外の展開》
まだはやい時間に、俺とエリヴィラはパンケーキを美味しくいただきました。
「ごちそうさま」
「お粗末様でした。 いやー美味しかった~」
「うん、すっごく美味しいです。 こんな美味しいモノがあるんだ・・・」
「でしょう?」
「うん!」
あーなんか楽しいな、この時間・・・エリヴィラと一緒にいると、なにもかもが楽しいだ。 ん? 時・・・間? やばい、なにか大切なことを忘れていたような・・・
「どうしたの? パーパ」
「いや・・・ただなにか、こう・・・重要なことが思い出せないんだ」
「もしかして・・・学校のこと・・・ですか?」
「そ、そうだ!!! 学校! やべ、今は何時?」
「七時四十二分です」
――にゃにぃぃいいぃ?!! 七時四十二分?! もう遅刻ギリギリじゃねえか!? はやく着替えよ! 遅刻だ遅刻!
そして俺は慌てて、食器を水槽に置き、部屋へ最速で上った。 当然、エリヴィラも付いて来たのだ。 部屋に入って、さっそく着替えをした。
部屋を入って、すぐに右の隣に制服がぶら下がっていた。
――この黒と緑の制服はいつ見てもださいデザインだ、はやく着替えよ。 あと十五分で授業が始まるっ!
そして隣りにいたエリヴィラは、焦っているみたいだ。
「おい、どしたの? キョロキョロと周りを見て」
「ええと・・・私の外出用の服は・・・?」
「は?」
――なに言っているの? 外出用の服?
「ないわよ、そんなもの」
「え?」
「え?」
ふたり揃って、呆れた顔をした。
「ななななな、ない?!」
うおおお! びっくりした、いきなり大声で話すな!
「ええ」
「そんな~、じゃ私、どんな服でパーパと一緒に行くの?」
「そんなこと聞かれても・・・ん?」
――今なんて言った?
「お前・・・俺と一緒に学校へ行くつもり?」
「もちろん!」
――即答かよ!
「無理無理無理、学校は遊び場ではないぞ?」
「そんな・・・うぅぅ・・・もしかして、私をひとりにするの・・・?」
やばっ! 地雷を踏んだ! またしてもエリヴィラに嫌な思いを思い出してしまった!
「違う違う! 俺はただ心配なんだ、学校は遊び場じゃないから、先生たちは許されるどうかは分からないから! 学校へ連れてやつから、だから泣かないで、ね?」
俺の話を聞いたエリヴィラは、少しだけ泣き止んだ。 でも目が少し赤い・・・ココロが痛い! なぜだ! なぜココロが痛?!
――俺も不注意でもある、これからも気をつけよ・・・
「ほんとうに?」
「うんうん! 本当ほんとう! だから・・・服は、その・・・どうする?」
家にあるのは俺のガキの頃の服だけ・・・ええと・・・
難しい問題に詰まった俺は、ベッドに座って、右手を顔につけ、そのままなんにも思いつかなかった。
――ダメだ! 考えても考えても、思い付いた選択肢は商店街へ行き、そこで女の子の服を買うだけ・・・でもそれじゃ金がかかるし・・・どうしたらいいのかー。
難しい顔をしていた俺は、エリヴィラが心配そうで声をかけた。
「パーパ、もしないなら・・・いいんだよ? 私はパーパが小さい頃着せた服を着るだけで幸せだから」
彼女は笑った、でもその笑顔に少しだけ残念そうな表情が見えた・・・いや、感じた。
――エリヴィラ・・・いや待て。 そうだ! これだ! これならいけそうかも! 紗夜ちゃんの服! なんとか黒澤さんに頼めるのかな・・・
「エリヴィラ! 俺、いい考えがある!」
それを聞いたエリヴィラは、一転してとびっきりの笑顔でこっちを見た。
「ほ、本当に?!」
「ああ、でもここから少し走るだけど、大丈夫?」
「うん!」
――よっしゃ!
「じゃーさっそく行こう!」
「Да!」
―1分後―
俺たちは部屋を出て、玄関前に着いたが。 その時、俺はあることに気づいた・・・
「あ・・・靴が、ない。 エリヴィラが使いそうな靴」
ど、どうしよう? エリヴィラは俺の小さい頃の靴下は履いているが・・・靴は・・・いるよね? このクロゼットのなか!?
玄関の隣りにあるクロゼットを開き、中を探った。
「これ、違う。 これも違う、あ! あった!」
見付けたのは、スポーツシューズだ。 でも、サイズはあっているのかな?
「エリヴィラ、ここに足を入れてみて」
俺はまず右脚の靴を取り出し、それを床に置いた。
「こう?」
エリヴィラは重心のバランスを崩さないよう、左手を俺に肩に乗せた。 そして履いた後、俺は確認した。
「痛くない? きついとか、或いは靴のなかが狭いとかがある?」
「んん、ない」
――キセキだ! まさかの一発であたったなんて! 俺は運がいい、いや、エリヴィラは運がいいと言ったらいいのかな?
「じゃそれを履いて、もし途中で足が痛いのなら俺に言って。 いいわね?」
「うん」
――なんていい子なんだ・・・
そして準備を整った俺とエリヴィラは、玄関の扉を開き、外へ行った。
――俺はこのダサい制服で、エリヴィラは男の子の服だ。
昨日と同じ、普通のダークブルーのショートパンツと白い星マークがある黒色の半袖だ、と! この灰色のスポーツシューズだ。 小さい頃のときから、お袋はダーク色の服に目がないんだ。 そのせいで、俺もダーク色の服だけに興味があるんだ。
そしてエリヴィラはいま、その服を着せている・・・
――俺がガキの頃より似合ってる! 文句は言わない、エリヴィラはカワイイからそう見えるんだ。 カワイイ!
「行こう、パーパ!」
「こらこら、引っ張るな。 まずは家の鍵を・・・これで、よし! 行こう!」
「おおう~!!」
家から出た後、エリヴィラはいきなり俺の左手を掴んだ。
「お、おい・・・」
「えへへへ・・・」
ふん・・・やれやれだぜ。
こうして俺たちは黒澤さんの店、元い、黒澤家へ向かった。




