第一章12 《元気すぎる》
―7:05―
時計のアラームが鳴った。 そして私はそのアラームに吃驚された。
「(ビクッ!)びっくりした~ パーパのアラームか・・・ええと、今は何時?」
マンガに夢中で時間の概念はなくなった。 気が付けば、手元に読んでいたジョジョの第二十八巻を読み終わった。
「七時五分、そろそろパーパを起こそう」
そして私はマンガを本棚にジャンプ一つで返し、パーパの上にあったアラームを押した。
「パーパ! 起きてください、もう朝だよ? パーパ!」
※ ※ ※ ※ ※ ※ ※ ※ ※ ※ ※ ※
体が揺れてる・・・声も僅かに聞える・・・だれ、だ? 俺を呼んでいるのは。
まだ起きていない俺は、体が感じていることと耳か聞える声が聞えていた。
そして数秒後――
「おき・・・・・・だよ? パーパ!」
「はっ!」
突然、俺は悪夢から目覚めたように、急に目を開けた。
「わっ!」
トン~ とエリヴィラがびっくりしたせいで床に尻で落ちた。
「ご、ごめん! 大丈夫? エリヴィラ、怪我はない?」
「だ、大丈夫です、えへへ・・・ちょっと驚いただけです」
「そ、そう? ならいいけど・・・それにしても・・・」
「ん?」
「お前は何時から起きたのかい?」
それが一番気になったことだ、まあ~ きっと俺よりちょっぴりはやく起きたんだろ。
「朝の五時三十七」
「は?」
――今なんて言った? 聞き間違えじゃないよね? 確か俺たちは夜の一時くらい寝たよね?
「ええと・・・もう一回言ってくれませんか?」
なんで俺は敬語で喋った?!
「朝の五時三十七」
聞き間違えじゃなかったー!!! えっ? 朝の五時三十七・・・朝の五時三十七?! 浅野誤字三重菜々? 最後のはいったいなに?! 落ち着け、詩狼。 まず落ち着こう・・・んな訳ねえだろ?! だって・・・だって!!
エリヴィラはたったの四時間半にしか寝てないだろ? じゃーなぜ目の下にくまがないんだ? 顔色もツルッツルだし! 浅野誤字三重菜々だぞ?! あ、間違えた。 朝の五時三十七だぞ? ちょっと鏡に映ろう・・・
俺は自分が目の下にくまがいるかどうかを確認した。 部屋は等身大の鏡がないが、親の部屋にある・・・近いから。 そして結果は――
「微妙にある・・・」
ひどくないが、少しだけある。 今夜は早めに寝よ・・・っといけない、エリヴィラを部屋に残された。 はやくもど・・・
「なにしているの?」
「お前・・・何時そこにいた?」
「最初から、えへへ」
――チクショウ~! カワイイ笑顔だ! って・・・最初から!?
「へ、へーそうなんだ・・・気付いていなかった~あははは・・・」
「それで? パーパは鏡に映って、なにを見ていたんですか?」
「ん? あ、あ~ただ目の下にくまがあるのかを確認していただけ・・・お前も見るか? 自分の顔」
でもエリヴィラは頭を振った。
「大丈夫です」
「そう?」
「うん、だってパーパが教えるから」
――にゃに?
「俺が? なにを?」
さっぱり分からない。
「私の目の下、くまがいますか?」
エリヴィラは人さし指で左目の下に近くでさした。
「ん・・・(じー)」
「ど、どう?」
「うん! 全然くまがない、健康だ。 昨日はよく寝たみたいだな、エリヴィラ」
「でしょー? えへへ・・・」
「へへへ・・・」
エリヴィラの笑顔を見ると、なんだか俺までニヤニヤと笑った。
この不思議な気持ち、いままでなにかが違うとそう感じた。 これはもしかして・・・親の気持ち? となにか違うかも・・・もちろん、親の気持ちはよく分かってないんだ。 俺はもうすぐ高三だ、まだ17歳ぞ?
「エリヴィラ、俺たちはまず歯を磨こう」
「はい」
両親の部屋から出た後、そのままトイレへ向かった。
ふわーんん・・・まだ眠いかも・・・はやく顔も洗って、すっきりしよ。
「パーパ」
急にエリヴィラ俺の服を掴んで、呼んだ。
「ん? どうしたの?」
「も、もうガマンできないです・・・」
――え? 今、なんて・・・?
「あ、じゃー先に行け。 俺はリビングでいるか――」
「Нет!」
突然、エリヴィラは大声でロシア語で叫んだ。
――びっくりした~、なんだ?
「お願い、私をひとりしないでください!」
ええと・・・なんか昨日も同じ台詞言ったようなきがする。 でも、それはそれとして・・・
「さすがにトイレ一緒に行くのもなんだし・・・」
「いや! 私はもうひとりになるのが・・・怖いです・・・だから!! お願い、パーパ! 私をひとりにしないでください!」
エリヴィラが泣いてた。 その涙がはっきりと見えていた。
まだひとりになるのが怖いのか・・・ちょっと焦ったのかな、彼女をひとりするのがまだまだ先になりそうだ。 俺はなんでこんなにダメなんだ?! 娘(?)が怖がっているのに、親である俺が気付いていないなんて・・・反省しよ、今後以後はエリヴィラをひとりにしないよう、彼女の頼みをすべて受け入れよう!
――これこそ、親ってやつだ! だよな? 間違えじゃないよな?
「ん・・・分かったから、涙を拭け」
「はー! ありがとう、パーパ! 大好き!」
安心したエリヴィラは急に俺の胸元に飛び込んだ。
「ぐへっ!」
凄まじい突進だ・・・元気は・・・いい、げほ。
雪月花詩狼、K.O.!




