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フストリェーチャ  作者: 川崎雨御
第一章:春前の一連
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第一章10 《親と子供》

 食器を洗ったら、いつの間にか0時になった。


「もうこんな時間か・・・エリヴィラ、まず歯を磨こう。 そして残った時間で日本語を教えてあげるよ」


「ワカッタ」


 そして笑った。


 ――本当に、何度も見てもカワイイ笑顔だ。


 そして俺は厨房の明かりをけした後、廊下のと言うより、玄関に一番遠い扉はトイレだ。 扉を開いた後、奥にあるのは洗面所と左はさっき風呂に入った場所、浴室だ。


「エリヴィラ、まずお前の歯ブラシを探してやる。 確かあそこのたんすにあったような気がする・・・」


「ウン、ココデ、マッテル」


 エリヴィラはすぐ俺の側で待っていた、そして俺はエリヴィラの歯ブラシを探していた。 そして時間かからず、すぐに見付けたんだ、歯ブラシ。 しかもピンク色だ!


 ――これは絶対お袋の予備用の歯ブラシだ!


「ほれ、これを使って」


 俺は投げたんじゃない、ちゃんとエリヴィラの手に渡した。


「ア、アリガトウ、ゴザイマス」


「おっと、あとコップも必要だ。 プラスチックのコップは・・・さすがにないかー」


「ダイジョウブ、デス。 パーパノ、ツカエバ、イインダ」


 えっ? は? 今なんて?


「俺のって・・・いいの? いやいやいや、さすがにそれはちょっと・・・」


「イヤ・・・?」


 そんな泣きそうな目で俺を見るな! カワイイけど、これは反則だ!


「イヤっじゃないが・・・これはお前の問題だ、俺のコップを使ってもいいの? なんていうか・・・照れくさいというか、なんていうか・・・」


「ダイジョウブ、ダ。 パーパガ、ツカッタ、モノハ、キライジャ、ナイデス」


 ちょっと分かりにくいが、大体のが理解した。 つまり、俺が使ったモノが嫌いじゃないってことだね、なんていい子なんだろ・・・ココロが癒される~


「分かった・・・じゃー俺が先に磨くね」


「ウン」


 こうして俺は歯を磨いた後、コップを綺麗に洗って、エリヴィラに渡した。 そして彼女も終わった後、エリヴィラに新しいタオルを用意した。 これはまたしてもピンクだ、淡いピンク色。


 とんだけピンクがすきなの?! うちのお袋は!


「ほら、これを使って、顔を洗え」


「アリガトウ」


 そして俺とエリヴィラは顔を洗った後、あそこ出てきて、玄関のすぐそこにあった階段を上がった。 上った後、俺はひとつ疑問を持った。


 待てよ、エリヴィラは何処に寝るの? 親父たちの部屋? それともリビング? それとも・・・

「な、エリヴィラ・・・お前、今夜、どこに寝るの?」


「エ? ソレハモチロン、パーパノ、ヘヤ、デス」


 ――にゃにぃぃぃぃ?!!! 俺の部屋?! それはさすがにまずっ・・・いや待てよ、床に布団を用意すればいいんじゃね? そうだ、それで行こう! うん!


「分かった、でも、後で文句を言うなよ」


「モンクハ、イイマセン」


 本当か?


 そして俺たちは俺の部屋に入った。


 エリヴィラに日本語を教える約束があったよな? まずそれをやって、半時間後、寝よ。 明日は学校あるし・・・だるい。


「よし! エリヴィラ、こっちに座って、一緒に勉強しよ」


「ウン!」


「って、おい・・・どこに座っているの? ここじゃないぞ?」


 彼女が座ったところは、俺のまたぐらだ、はっきり言うのは、俺の股間の上に座った。


「イインダ、ワタシハココガ、スキ」


 やれやれだ・・・なんてわがままな子なんだろ、でもカワイイ。


「じゃー勉強しよ」


「Да!」


 ここで「ダー」で返事をした。


「違うだろ? いや、違わないが、ここは「はい」だろ?」


「オッ! ハイ!」


「よろしい」


 なんか変な気分だな、これは子供に教育を教える感じかな・・・


 そしてその約半時間の間、俺はエリヴィラに日本語の基本を教えた。


 実は、彼女は5分で平仮名と片仮名をマスターし、残った時間は逆にエリヴィラにロシア語の基本アルファベットを叩き込んだ・・・エリヴィラはやはり天才だ! しかもどんどん日本語は上手になっていく!

 この2時間の間! ひとつの言語を! 凄すぎる・・・いったいエリヴィラは何者なんだ・・・? なんだかんだで、この半時間の間、楽しかった。 もちろん、エリヴィラも楽しんでいた。


 新しい発見と驚き、ふたり笑い声はこの部屋のなかに響いていた。 そして――


「もうこんな時間か・・・そろそろ寝ましょう」


「そうだな」


「お前は俺のベッドで寝ろ、俺は布団を用意し、床に寝るから」


「え?」


「え?」


 予想外の反応をしたエリヴィラは、俺を見詰めた。


「一緒に、寝ないの?」


 ――はぁぁあぁぁあ?!!! 一緒にって・・・えええええ!?!! マジ言ってるの?


「いや・・・さすがに一緒に寝るのはちょっと・・・あれだ・・・」


 あれってなあに?! 俺はなにを言いたいの?! あ、変な意味じゃないからね。


「ダメ・・・? 一緒に寝ても?」


「いやっ、ダメって訳じゃないから・・・その、ちょっとね。 恥ずかしいんだ、俺・・・」


「え?」


「え?」


 ――ココロの声は漏れたぁぁああぁ!!! しまったー!!!! 穴に入りたい気分だ・・・恥ずかしい!!


 しかし、エリヴィラは思わない行動を取った。


「ぷ、ぷふふふ・・・そんなことで戸惑った? 親子なんだから、恥ずかしがる必要なんてないと思います」


「それもそうだな・・・うん? 今、なんて言った?」


 聞き間違いじゃないよね? 「親子」? いや、きっとその「親子」は聞えるが、実は「兄弟」と読むロシア語だ、きっと!


(ロシア語の「兄弟」はбратьев、「ブラチヤー」と読む)。


「恥ずかしがる必要なんて・・・」


「いや、その前だ」


「親子なんだから・・・」


 やっぱり聞き間違いじゃない! でもなんで? なんでエリヴィラは俺たちの関係を「親子」と認識した? なにかがおかしい。


「は・・・」


 俺はただため息を吐いた、疲れた・・・


「どうしたんですか? パーパ」


「その「パーパ」ってなんだ?」


「え? パーパは日本語の「パパ」という意味だ・・・」


 にゃに?! パパ?! 俺が?!


「ちょっとまち。 お前・・・俺をパパって呼んだ? 何時?」


「パーパは私に名前を付けた後、私は迷ったんです。 パーパとよんでいいのか? って、試しに呼んでみたら、パーパは嫌な顔をしていないから・・・てっきり大丈夫と思ったんだから・・・・・・」


 そうだったのかーいままで聞き逃した一部の言葉は「パーパ」だったんだ・・・


 でもその時、エリヴィラはロシア語にしか喋れないから、俺はてっきりロシア語の別の言葉と思った。


 そうかー「パパ」か・・・ちょっと複雑な気分だ、でもそんなに悪い気持ちじゃないから・・・このままそうして置く? でもエリヴィラに名前まで付けただから、彼女は既に俺を親と思っているだろ・・・


 ――エリヴィラに悲しんでいるところは見たくない! やっぱこのままして置こう。


「いや、これからも俺のこと「パーパ」と呼んでもいいぞ? ちょっと照れくさいが、これからもよろしくお願いします」


「ありがとう、パーパ! こちらこそ、不束者ですが、よろしくお願いします」


「おいおい、なんか妙な言葉が覚えたんじゃねえの?」


「どうかな?」


「そうだよ・・・ぷっ、ぷはははは」


 つい笑ってしまった・・・


「うふふふふ」


 エリヴィラも一緒に笑った。


「んじゃ、どうする? 一緒に寝る?」


「うん!」


「やれやれだぜ・・・」


 子供のわがまま聞くのは大変だな、この先、いったいどうなるの? まあ、そんなことは明日で考えよう。


 そして俺は窓を閉めて、制服を整って、寝る準備をした。 ベッドにはエリヴィラはニヤニヤと俺を待っていた。


 そのまま着ている服で寝るつもりか? まあ、仕方ないかー子供サイズのパジャマは全部、親戚の子に渡ったから。


「パーパ、はやく寝よ!」


「分かった分かった、で? お前はどっちに寝るの? 壁の側? それとも外?」


「うん・・・外!」


 予想外の答えだ。 てっきり壁の方がいいって言うと思ったんだ。


「なんで外がいい?」


 少し興味深い。


「それは、パーパとくっ付いてできるから!」


「あ~ なるほど・・・って、え?!」


「えへへ」


「いや、「えへへ」じゃねえから、そんな理由で外を選んだの?」


「うん!」


 うん! って・・・まいったなー本当にそんな理由で外を選んだのかーええい! もうどうでもいいさ! 外でも、壁の側でも、どっちでもいい! 大事なのは、寝るってことだ! そうと決まれば。


「じゃーそこどいてくれ、俺は壁の側にいくから」


「はーい」


 嬉しそうですね、エリヴィラ。


 こうして俺は壁の側で寝て、エリヴィラは俺の隣に寝た。


 このベッド、そんなに狭かったのか? まあ、ふたりが一緒に寝ているから、仕方がないさ。

 そして俺は気づいた、まだベッドに入ってから、まだ5分経っていないが、エリヴィラは既に寝込んだ。 ぐっすりと寝ている。


 色々あったもんな・・・エリヴィラに出会えて、この子に《信頼》されて、名前を付けて、一緒に部屋を片付いて、一緒にお風呂に入って、ボルシチを食べて、一緒に日本語とロシア語を教え合う、そして・・・一緒に寝る。


 まだ3時間にしか知り合っていないが、もう何ヶ月が知り合っているみてえだ、不思議な気分だ。 でも嫌いじゃない、この僅かの3時間で俺は、充実していた。

 そして考えている時、エリヴィラは何かを呟いた。


「パ・・・パ・・・・・・ふ・・・zzzz」

 寝言? しかもパパって、まだ慣れないなーその呼び方。 そっかー俺はエリヴィラのお父さんかーつまり俺とエリヴィラは家族ってこと? ちょっと嬉しいな、嫌いじゃない。 さあ、俺も早く寝ましょう、明日は早いから。


 俺は目を閉じ、体を少し横になって、無意識にエリヴィラを抱いた。 そして完全に眠りに落ちる寸前に、俺はある途轍もない事を思い出した。



 あ、勉強・・・・・・

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