99話「命を懸ける無双主人公オーヴェ!!!」
未だ大地が震え烈風が吹き荒ぶ最中、カカコ達は腕で顔をかばいながら見開いていた。
豆粒ほどの暗黒魔竜クセアムスが、空を覆うような極大漆黒玉を地上へ放つのが見えたからだ。
唸りを上げながら降りてくるのは青ざめるしかない。
「こ、この辺りが綺麗さっぱり消し飛ぶぞ!!!」
「うん!!! すごい魔法力……あんなの何千万人もの魔道士でも溜められない……!!!」
「逃げるにしても間に合わなさそうだ」
「ロンナに同意。あれが地表に炸裂した場合、約一〇〇キロ範囲が灰燼と化すと見る」
カカコ、レイミン、ロンナ、リュウシは既に絶望で覆われていた。
逃げ切れないまま塵になるしかない。
立ち上がるので精一杯なナセロンとルシアは悔しそうに見上げるしかできない。
「止むを得ん……!! 界渡来で逃げるしかないが……?」
「ボクは嫌だな……」
「何故だ?」
ナセロンが首を振って、逃げるのを拒んだ。
「その男と、さっきの女たちを見殺しにしてしまう。それに……」
「それに?」
「ここで逃げてしまったらさ……、きっと魔王に会うたびにコソコソ逃げちまうと思う。絶対敵わないって怖くなって……。そんなの嫌だ……!!! ナッセになんて言いやいいんだよ!!!」
「フッ フハハハハ~!!! その意気やよし!!! この我も付き合ってやろう!!!」
ルシアは、そんなナセロンを見込んで一緒に立ち向かおうと決めた。
「もう一度……結界剣を!!!!」
「もはや通じぬと分かっても、最後まで抗うその姿は嫌いではないッ!!! さぁ行くぞ!!!」
「うん!!!」
《……素晴らしい!!!》
どこからか頭に響く声がした。
ナセロンとルシアは「誰だ!?」と見渡すが、大小の破片が浮き出しながら震える大地しかない。
すると一人が極大漆黒玉へ向かうのが見えた。
なんと瀕死のオーヴェが最後の力を振り絞って、両翼アームを大きく肥大化して、両腕を広げて受け止めた。
極大漆黒玉へ張り付く感じで上昇して食い止めようとするのだ。
「うががががぎぎぎぎ……ッ!!!!」
オーヴェはボロボロの体ながらも必死に歯を食いしばって、極大漆黒玉を押し返そうと踏ん張る。
「ほう!!! さすがはギルガイスの聖騎士……!! 退く事を良しとせぬ心意気、しかと覚えておくわ!!! 安心して死ね!!! オーヴェ!!!」
クセアムスは手を差し出して、押し込む力を強めた。ズン!
極大漆黒玉に触れてるだけでも衝撃波がオーヴェの全身を貫くほどだ。一緒に受け止めてくれている両翼アームにもヒビが走り、徐々に欠けていく。
それでもナセロンやルシア、そして遠くにいるであろうカカコたちを守る為に身を扮して耐えているのだ。
「さ……させねぇ……!!!! まだ……まだッ、俺の無双展開は続くんだッ……!!!!」
徐々に押されて、威力の衝撃波を受けて更にボロボロにされながらも、押し返そうと体を張る。
全身から血が溢れ、両翼アームの破片が散り、命が削られていっても必死に歯を食いしばる。
「まだまだこれからだあああああぁぁぁ……!!!!」
血塗れになろうが、オーヴェを奮い立たせる熱い心は更に煮え滾っている。
不思議と凄い力を出せてる気がする。
そんな気高い孤高の姿を見て、ナセロンとルシア、そしてカカコたちは呆気に取られた。
「ち、ちくしょう!!!! 天下無双を目指す為に見捨てられないよッ!!! 結界剣を!!!」
「名も知らんが天晴れな男よッ!!!」
ナセロンとルシアもなんとか徹底抗戦しようとするが……。
《そんな勇気ある者を……我は長年ずっと待っていた!!!》
空耳じゃない、ナセロンとルシアはハッとした。
すると後ろでスウッと浮かび上がる騎士の幽霊みたいなもの。黄金の縁が走る白銀の鎧を着た雄々しい男。
「あ、あんたはっ!!?」
「むう……!?」
《いかにも、余は騎士王フウレツ。五〇年前に暗黒魔竜クセアムスと戦い敗れた無念の男。そしてギルガイス前皇帝である》
なんとギルガイス帝国の前皇帝と名乗ったのだ。
クセアムスが騎士王と度々口にしていたが、その張本人らしい。
《我が力を貸そう……。この『騎士王』の力をな……》
フウレツと名乗る幽霊がナセロンへ憑依するかのように、吸い込まれていく。
するとカッとナセロンの体から溢れるように閃光を放った。
ルシアも驚いたまま光に飲まれていく。
「結界剣ッ!!!!」
轟音を響かせ、大気を切り裂いて極大光線が極大漆黒玉へ目指していく。
それは極大漆黒玉を突き破って誘爆。
クセアムスは「なっ、何ィ!!!? ば……バカなッ……!!!!」と光に包まれた。
ドガアアアァアッ!!!!!
空を覆い尽くすほど眩い爆発が広がっていった。
未だ高い位置で誘爆したとはいえ、余波が地上へ届き、震撼が大地を引き裂かんとするほどに響いた。
台風のように押し流す暴風が荒れ狂って、地形を崩し破片を飛ばす。
生じた衝撃波が走り数百キロにまで行き届いた。ゴゴッ!!!!
もうもう広がる爆風を押しのけ、ナセロンがボロボロのオーヴェを抱えて威風堂々としていた。
クセアムスもそんな姿に驚く。
さっき見た聖騎士の衣服ではない。黄金の縁が走った白い衣服。白いマントに羽衣のような帯。光の剣も形状を変えていた。
「きっ、きさまは……!!?」
「ボクは騎士王ナセロン!!!」
なんと五〇年前の騎士王を彷彿させる容姿と威圧に、クセアムスは悪夢の再来と驚愕するしかない。




