53話「四魔貴族戦!!! 悪食の皇爵フォーエルの強襲!!!!」
四魔貴族が二人も殺された事を、残りの四魔貴族も脅威を感じて立ち上がった。
「なッ!!? こ……こんな事があり得るのかッ!!?」
「うぬぬぬぬぅ…………!!!」
悪食の皇爵フォーエルは唸り、リーダー格の災厄の皇爵アウトナーは狼狽える。
本体のイケメン魔貴族として、妖魔界からノンビリ観戦していたのだが予想外な展開に見開いて汗をかくしかなかった。
「『深淵殿造』で招待した上で、ボロ負けとか悪夢だッ!!」
「光の妖精王は相性が悪いから分かるが……!!」
「いやいやいやいや!!! 相性悪くとも我ら四魔貴族は純粋に戦闘力は二〇万前後!!! ヒトどもがクラスチェンジしようが届かぬ領域ッ!! 勝てない相手ではないはずッ!!?」
「ええい!!! こんなの認めるものかッ!!! このワシがねじ伏せてやるッ!!!!」
自暴自棄か、フォーエルは巨大な赤いクジラへと変貌していく。
そして空間に亀裂を入れてズルリと潜り込んでいった。
「ま、待てッ!!! ……クソ!!! あのバカ……早まりおって!!!!」
アウトナーは冷や汗タラタラで亀裂を睨むしかない。
ビギギギギギギ……、空間に大きく亀裂が走っていって赤いクジラが抜け出てきた。
押し寄せる途方もない威圧が深淵を呼び、王国中の人々は昏倒していく。
「また四魔貴族ッ!!?」
「今度はクジラの化物!!? まさかフォーエルねッ!!?」
ナッセとヤマミは、圧巻とも言える巨躯に驚きを隠せない。
リョーコから聞いていたとはいえ、デカすぎんだろってくらいの赤クジラだ。
ズゴゴゴゴゴゴゴゴゴゴゴゴゴ……!!!!
「間違いないよー!! あれ、四魔貴族の悪食の皇爵フォーエルッ!!!」
リョーコは絶句する。
まさか今夜で三体目の四魔貴族が強襲してくるとは思わなかったのだ。
フォーエルの登場に、他の魔貴族は驚きつつも笑みに緩んでいく。
「ハ、ハハハハハ……!!! また加勢してくれた!!」
「流石に今度こそ我らの勝利だッ!!!」
「さっきの四魔貴族が敗れたなどとマグレだって事を思い知らせてください!!!」
「王国もろとも食べ尽くしてやっていいですぜ!!!」
「「「うおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおッッ!!!!」」」
魔貴族たちが歓喜して大音響を響かせるのを尻目に、フォーエルはナッセとヤマミをギロリと睨む。
「貴様らが我が四魔貴族の格を貶める不届きものかッ!!! たかが偶然で二体を葬り去ったところで我らに勝った気でいるとは思わない事だあッ!!!」
ゴオオオオオオオオッ!!!!!
大気も震えるほどの大声がビリビリ響いてきて、ナッセとヤマミは苦い顔を浮かべる。
「すげぇうるさい四魔貴族だなぞ……」
「今度は短気なやつね」
「この四魔貴族が一角、悪食の皇爵フォーエル様が貴様らを喰らい尽くしてやるわあああああッ!!! 怨ッ!!!!」
そして『深淵殿造』まで展開してきたぞ。
他の魔貴族も巻き込んで、空を飲み込むかのように大海原が広がっていく。荒れ狂う赤い海を滑ってくるフォーエル。まるで水を得た魚のように勢いが増していく。
「うわああああッ!!!」
「な、なんで我らもーッ!!?」
「いぎゃあああああああッ!!!」
「た、助けてくれ────ッ!!!」
獰猛に荒れ狂う赤い海は、溺れた魔貴族をジュワジュワ溶かしていくぞ。
どうやら強力な酸みてーなもので、しかも多くの魔貴族を食らっているかのように赤いクジラがグングンと巨大化していく。
「この赤い海に呑まれた馬鹿な獲物を吸収して、ワシは更なる力を増すのだああああッ!!! ワシの戦闘力は二五万、二七万、三〇万、三五万……ッ!!!! グワハハハハハッ!!!!」
「だ、だから味方の魔貴族まで巻き込んだのかぞッ!? ひでぇヤツだ!!!」
「どこまでも吐き気がする魔貴族ね……。ナッセェ!! 手を!!」
「おう!!! ともに行こうぜッ!!!」
どんどんパワーを増していく赤いクジラを前に、ナッセとヤマミは互いに手を繋いだ。すると輝き出す。カッ!!
単に力を合わせるんじゃない。
これまで二人で難関をくぐり抜けた事により培った絆が生み出せるスキル。
「それこそがオレたちの『連動』だ────ッ!!!」
「決して破れぬ私たちの絆を思い知りなさいッ!!!」
ナッセとヤマミが想いを昂ぶらせて手を繋ぐ事で、凄まじい高次元オーラがゴウッと噴き上げられた。
そう相乗効果によって、それぞれのパワーが倍増されていく。
ドオオオオオオオオオオオオオオオッ!!!!
勢いよく吹き上げられる眩いオーラに誰もが驚愕していく。王族も聖女も妖魔神もリョーコも魔貴族もアウトナーもその輝きに目を奪われた。
そしてナッセとヤマミはそれぞれ得物の先に太陽手裏剣を生成して突き出す。
「三大奥義が一つ『無限なる回転』ッ!!!! そしてツープラトン奥義ッ!!!」
「サンライト・インフィニティドッキング∞──ッ!!!」
「「受けてみろ────────────ッ!!!!」」
二人は叫びながら撃つ。その二つの太陽手裏剣は高速回転しながら、旋風の尾を引き連れて勢いよくすっ飛ぶ。
その二つの回転円を覆う円が繋がってメビウスの輪のように変化された。カッ!!!
「そんなものおおおおッ、無駄だあああああッ!!!!」
それでもお構いなく、フォーエルは大津波とともに押し潰さんと迫ってくる。
「このワシの戦闘力五〇万を超えたッ!!!! もはや貴様らの矮小な技など効かああああんッ!!!! 怨ッ!!!」
二つの回転円を擁するメビウスの輪がフォーエルに炸裂。ドッ!!!
そのメビウスの輪が拡大化して、それはプロペラのように回転を始めて電熱線のように残像を残しながら、乱回転によって徐々に球状へと象っていった。
ズンと重々しく巨大化した高速回転球が周囲に烈風を吹き散らしながら、轟音と共に大気を震わせていく。
まさしく球状のミキサーだ。
ギュガガガガガガガガガガガガガガガガガガガガガガガガガ……ッッ!!!!!
「ぎぃああああああああああああああああああああああッッ!!」
さしものフォーエルも無限に引き裂き続ける回転球の中から苦悶を叫ぶしかない。
それでもとフォーエルは憤怒に駆られて破るべき死力を尽くす。
「こんなものおおおおおおお怨ッ!!!!!」
必死に球状ミキサーを強引にぶち破ろうとするが、幾重も切り刻んでくる斬撃に手足を削り散らされ、分厚いガワまで剥がされていって本体があらわになっていく。
イケメン魔貴族は「う、うわああああ!!! やめろおおおおッ!!!!」と微細に削られ続けて塵芥になっていく。
役目を終えた球状ミキサーはパシュンと収縮して消えていった。
「続いて四魔貴族三体目撃破だぞーッ!!!」
「やったわねッ!!!」
ナッセとヤマミは興奮して手を叩きあった。ナイス!!!
他の生き残った妖魔大軍勢は絶句したまま言葉を失っている。
リョーコは引きつってしまう。
「え──……。四魔貴族、もう残り一体だけじゃん…………」
妖魔界で災厄の皇爵アウトナーは唯一残され、冷や汗いっぱいに絶句したままだ。
「こ……こんなの……絶対悪夢だ…………!!! 夢なら……覚めてくれッ………………!!」
まだ生き残っていた魔貴族もガクガクヒザが笑い、腰を抜かしてしまう。ドサッ……!
魔騎士も呆然として立ち尽くす。
まさか四魔貴族が三タテを喰らうとは……。




