34話「決勝戦!!! 優勝するのはどっちだ!!?」
観客の大歓声に包まれたまま、闘技場でナセロンとナッセが対峙していた。
《では決勝戦を始めます!!!》
ヤマミとニーナの後ろでなぜか獄炎魔王ルシアが鎮座していた。
ナッセに完敗した後の事を思い返す──……。
「もはや我が野望が打ち砕かれては、生きる意味などないッ!!! 殺せ!!!」
ベッドの上で屈辱か悲観かで震えたルシアは、見下ろしてくるナッセたちにそう吠えた。
高次元の存在である妖精王に一矢報いる事ができないのであれば、研究も無意味。故に希望を失っていた。
「あのさぁ……」
「情けはいらんッ!! 勝者としての責務を果たしてくれいッ!!」
かつて魔王を名乗っていただけあって頑固だ。
ナッセは息をつく。
「もし勝者に生殺与奪の権利があるなら、オレはおまえから生命ではなく死を奪う」
真剣なナッセの言葉に、ルシアは見開く。
「それ不死身人間の受け売りね……」
「分かってるけど言ってみたかったんだ。大目に見てくれぞ……」
目を細めたヤマミのツッコミにゲンナリと肩を落とす。
「一体、何の話をッ!?」
「どうせ、これからオレたちは七つの魔王と戦うハメになる」
後ろにいたナセロンとニーナが仰け反って驚く。
これから先の未来を言っているのかと、焦燥が内心を駆け巡る。
ナセロンにとっては寝耳に水で、ニーナは予定していた事が知られていた事、と理由が違う焦燥だった。
言われている当人のルシアも耳を疑っている。ナセロンはおろおろする。
「え……? 七つの魔王……? フレアネスドのような??」
「それは誠かッ!?」
「ああ。七つの魔王最強の混沌王アリエルを筆頭にした何体かと、な」
ナセロンは絶句して白目。ルシアも驚きで口を開ける。
「だからナセロンと一緒にいればいい。お望みの七つの魔王と戦えるぞ。これから成長していけば、研究の成果も活きるんだろうし」
「そ……そんな事ッ!!」
「早まって無念のまま死ぬより、これから直に戦ってから死んでも本望だろ?」
ルシアは気難しそうに押し黙る。
しばしの沈黙が続く最中、リーナは不穏に目を細めてナッセの後ろを見据える。
このままでは、どう転ぶか分からない。それが杞憂。
分かっている事はナッセを味方か敵かで言ったら、間違いなく敵に回るだろう。
「分かった……。貴様らの仲間になるつもりはないが、行く末を見定めてやる」
「ああ」
「貴様とのリベンジもいずれ行うぞ……!!」
「いつでもいいぞ」
ナッセは頷き、笑みを見せる。
────って事で一緒にいる事になった。
かつて魔王だったといっても、それは一二〇年前の話。周りの誰もルシアへのヘイトはもうない。
「行くぞ!!!」
聖騎士になったナセロンが大地を爆発させて素早くナッセへ斬りかかる。
同時にナッセも太陽の剣を横薙ぎに振るって交差させた。ガッ!!
ナセロンは光の剣を翻して横薙ぎするが、ナッセは高く飛んでかわしていた。
「フォール!!!」
「ぐっ!!!」
ナッセの切り下ろしを、ナセロンは光の剣をかざして踏ん張る。足元から破片混じりの飛沫が噴き上げられる。
真剣なナッセとナセロンが睨み合い、更に剣の軌跡を幾重に交錯させていく。
激しく衝突を繰り返す軌跡が踊り続ける。
目にも留まらぬほどの剣戟に観戦客も息を呑む。
ガァンッ!!!
一撃を叩き込み合って、双方弾かれて間合いを離れた。
ナッセとナセロンは後ろへ滑っていって、踏ん張ると飛沫が後方に噴き上げられた。
「うおおおおッ!!!」
ナセロンは高くジャンプして、ナッセへマッハがごとく斬り下ろす。
「ルミナス・フォ────ルッ!!!」
ナッセの株を奪うかのようなフォールだ。
それをナッセは敢えて太陽の剣をかざして受け止めるが、ナセロンの光の剣は激突してから滑らして地面に切り込む。
「Vライジング!! ルミナス・ライズ────ッ!!!!」
振り下ろしから繋げた斬り上げによるV字を描く軌跡が、ナッセへ迫る。
続けて二連発した技の威力が四倍になる。
しかもナッセは右手の太陽の剣をかざしたままで迎撃が間に合わない体勢。
それに対してナッセはカッと見開く。抜刀するかのように左手で生成した光のナイフを横薙ぎ一閃。
「スパークッ!!!」
最強最速の一閃がナセロンの四倍増しの技と衝突。ガッ!!!
ナッセとナセロンはビリビリと全身に衝撃が突き抜けて「ぐぐっ!!!」と呻く。
「そのまま押し切るッ!!!」
「サンライト・スパークXッ!!!!」
なんとナイフで食い止めてる隙に、太陽の剣による二発目のスパークを重ね、X字に軌跡が肥大化していく。
これでこっちも四倍増しになって互角に持ち込めた。
ドガアアアアアアッ!!!!!
臨界を迎えたか大規模の爆発に爆ぜて、ナッセとナセロンは煙の尾を引いて吹っ飛ばされていく。
しかし二人とも障壁に着地して、そのまま再びぶつかり合おうと蹴る。双方の視線から火花が散る。カガッ!!!
「ルミナス・Ⅴトラジェクトリ────ッ!!!!」
「流星進撃!!!! 一〇連星──ッ!!!!!」
ナセロンは光の剣で五芒星に軌跡描くかのように切り込み、ナッセは流星群のような一瞬連撃を繰り出す。
互い連撃が相殺し合って、けたたましく激突音が鳴り響く。
「「おおおおおおおおおおおおおおおおおッッ!!!!!」」
最後にナッセとナセロンの剣が交差しガッキィンと、周囲に衝撃波を散らす。
ビリビリと衝撃波が全身を突き抜けていく。ほぼ互角。
ナッセは悟った。これまでの戦いもさる事ながら、何かしら強い決意を宿す事によって強くなったんだ。
ザッと、飛沫を上げて着地。
「ふう……」
しばし構えていたが、ナセロンが棒立ちする。
「妖精王で来てくれない?」
「え?」
「……絶対敵わないって分かってる。でもボクは思い知らされたいんだ」
敢えて変身をリクエストしたナセロンの眼差しは真剣そのもの。
ここは気遣うのは逆に失礼だ。ナッセは頷く。
「さぁ行くぞ!! おおおおおッ!!!!」
「クッ!!!」
ナッセが気合いを入れると周囲に烈風が吹き荒れてきて、ナセロンは凄まじい威圧にビリビリと気圧されていく。
ポコポコとナッセの足元に花畑が咲き乱れていって、人外さが醸し出される。
ナッセの銀髪がロングに伸びてバサッと逆立つかのように舞い上がり続け、背中から咲いた花から四枚の花弁が離れて拡大化して両翼のように浮く。
目の虹彩にファンタスティックな星マークが宿る。
「これがオレの最強形態!! 妖精王だッ!!!」ズオオオッ!!!!
そう吠えると、それだけで威圧が押し寄せて烈風が吹き抜けていく。
ナセロンは思わず「う……ああっ!!!」と、すごく巨大な存在に呑まれるかのような錯覚を覚えた。




