121話「思わぬ激突!? 七つの魔王とナセロンたち!?」
ナセロンとブラッドとルシアは大船に乗って海を渡っていた。
地平線まで海が広く見渡せる。
「ラブチョコレ大陸……。そこにナッセがいるのか?」
「うん。父さんが言ってたもん」
「フン」
ザイルストーン王国で療養してた時に、皇帝ライティアスがナッセの故郷を教えてくれたのだ。
まさか王族だったとは寝耳に水だったけど、これまでを考えると納得がいく。
勇者ガルドの血を引くナッセならば七つの魔王以上の強さを持っていても不思議ではない。
「ねぇ、ルシアさんは勇者ガルドの敵だったっけ? 恨みとかあるの?」
「もう一二〇年前もの昔の話だ」
「そっか……」
「今は七つの魔王を超えるべき執心している。この身を魔獣に変えてまで成し遂げたいとな」
今はマントで首から下を覆い尽くしている。
全身異形なので、これなら手だけ出せば手甲だと間違われるだけで済む。
「七つの魔王かぁ……。煉獄竜王フレアネスドは世界大会でナッセに殺されたね」
「うむ。あれは驚いた」
「暗黒魔竜クセアムスはボクらが倒したね。強かったなぁ」
「フン。もう少し待ってくれればオレも参戦できたものを……」
ブラッドはチッと舌打ち。
「はれ。不死霊王ダクメーアと、月夜の悪夢女王ルルナナはナッセたちがやっつけたとアーサーさんが言ってたな」
「聞けよ!」
平然と流すナセロンにブラッドが突っ込む。
「では残りは混沌王アリエル、天空王ティアーメ、狂乱火星ゴルンレーヌの三体のみか……」
ルシアはグッと拳を握る。
なんとしてもナッセたちに倒される前に、打倒を成し遂げたいと焦ってるようだ。
「フン。断っておくが、今のオレたちでも七つの魔王には勝てん」
「うん……。これまでは誰かが助けてくれたから……」
「これから都合よく奇跡が起こってくれるとは限らん」
ナセロンは俯く。
暗黒魔竜クセアムスは祖父である騎士王フウレツに憑依してもらって勝てた。
洗脳されたライティアスを倒せたのも、カナリア姫の『奇跡の宝剣』のおかげ。
自力でやったわけじゃない。
「ナセロン!! 世界大会で見せた金色の力はどうなんだ?」
「あの後ルシアさんと特訓してたけど、一度も出なかったよ。できたの『結界剣』だったし」
「うむ。“天衣無縫”か」
「それ難しい名前だから結界剣でいいや」
するとスタスタと怪しいヤツが近づいてきて、それを察したナセロンとブラッドとルシアが振り向いた。
真っ白な衣服の神官っぽい。
にこやかな顔で銀髪のおかっぱ。
「やぁ。七つの魔王の話をしていたから気になってしまいました」
異様な気配にブラッドは身構える。
「おまえは……?」
「初めまして。私は七つの魔王が一角天空王ティアーメです」
「「「なっ!!!?」」」
まさかの七つの魔王と、ナセロンたちは仰天した。
一気に緊迫が全身を駆け巡る。しかしティメーアは両手で「まぁまぁ」と落ち着かせてきた。
「そんなケンカ腰で来られても困りますよ。ここ船の上ですし」
「はれ……?」
「む……!」
「チッ」
「私は七つの魔王でありながら、他と違ってヒトと敵対関係してません。本来ならニーナさまの命令であなた方をサポートせよって話だったんですが、何故かお役ゴメンになりましてね。まぁクビになりました。はっはっは」
ルシアとブラッドは身構えているが、ナセロンは「はれ? そうなの?」と素直に聞いてしまう。
「悲しいかな。あなた方が思ったより成長していったのでクビになりました」
「ボクたちが成長を……??」
「今、会って確信しましたよ。あなたたちはもはや七つの魔王レベルです」
「「な、なんだと!!?」」
ルシアとブラッドは驚く。
「今、三人がかりで襲われたら私勝てませんよ。それくらい強くなってます」
「そうなんだ……」
「恐らく皇帝ライティアスでムリするレベルで戦ってたせいで、回復に伴って急速にレベルが上がったんでしょう。恐るべきスピードで成長しててビックリしてます」
「愚か者どもを駆逐すべき、黒の閃を描いて切り刻め!!! 愚滅の漆黒よーッ!!!!」
するとブラッドが急に漆黒の剣を生成し、クラスチェンジしてティメーアへ瞬時に襲いかかる。
ティメーアは「うおっと!」と足元から奇妙な白い槍が飛び出て、漆黒の剣を受け止めた。
ズン!!!!
船が大きく揺れて、周囲の海から波が高々と噴き上げた。
吹き荒れる烈風と唐突に荒れた海で、他に乗っていた人々は「ひぃええええ!!!」と驚き戸惑う。
「どうせやるなら陸地でお願いしますよー。船沈みちゃいます」
「チッ」
ブラッドは飛び退いてクラスチェンジを解いた。
ティメーアの足元から生えた白い槍はズズズッと沈んでいく。
「ああ、これね。上位階梯黒魔法『天空王魔槍』ですよ」
「グナングル……!」
「私の意のままに動かせる武器なんですが、ライティアスの“三千世界”と比べれば見劣りしますね。ではまたですよ」
手をバイバイと振るとティメーアはフッと消えた。
「……ブラッド?」
「やつの言う通りかもしれん。オレたちのレベルは思ったより上がっているようだ」
ブラッドはガッツポーズ風に拳を突き上げて、それを見下ろしていた。
どこか薄暗い遺跡の中をティメーアが歩いていく。
上の空いた穴からライトアップのように、王座にふんぞり返っている艶かしい女を照らした。
「やぁ……。最強の七つの魔王 混沌王アリエルさん」
露出度の高い服にマント。金髪ロングで美人だが、陰湿な笑みを浮かべている。




