115話「ナセロンへ収束される絆の力!!」
洗脳された雷霆天尊は、息子である第二王子クロリアの説得にも耳を貸せず、聖騎士三人もろとも蹴散らしてしまう。
その後、これからの虐殺を行うと悲しげに宣言してしまう。
それを聞いたナセロンは傷が癒えぬままに立ち上がって、雷霆天尊を自分の父さんだと確信して阻止しようと奮起した。
「こっちもルミナス・ペンタグラムシールドだあああッ!!!!」
なんとナセロンの前方に現れた三角形の光の盾が形を変え、拡大化して五芒星形の最終形態へ進化したのだ。
ギルガイス帝国の王家のみに許されたユニークスキル。
それは第四王子たるナセロンも有し、それをこの場で最終形態へ進化させた。
そんな衝撃的な事実に雷霆天尊のみならず、アーサー、グランハルト、アレフまでもが驚愕せさずにいられない。
「なっ……なんだと……!!?」
「王家スキルのルミナスシールドを第四王子ナセロンさまが最終進化させた!?」
「おいおいおいおい!!? そんなん嬉しい不条理ありえねぇだろ!! ハハッ!!」
第二王子クロリアは驚いていたが、納得するように落ち着いていった。
「……兄様に続いて、ナセロンまでもが……!!? そうか……兄様の死を看取ったからか……」
世界大会でナセロンが兄ビクターの最期を見てきた事も聞いていた。
本当は第二王子として自分も一緒に見届けたかった。しかし失踪している父上の代わりに帝国を治め続けねばならなかった。歯痒かった。
だが、長らく国外へ隔離させられた第四王子が代わりに兄の死を悲しんでくれた。
だからその資格があるのだろう……。
「行くよ!!! 父さん!!」
立派に神々しく輝く五芒星形の光の盾が、光の剣へ螺旋状に吸収されていく。
「む……!? あれは“天衣無縫”かッ!!?」
守備力を攻撃力に転化する固有能力名を雷霆天尊は口にした。
構わずナセロンは駆け出し、高く跳躍して結界を宿した剣を振り上げた。
「うおおおおッ!!! 結界剣ーッ!!!」
剣を振り下ろし、凄まじい光線が一直線と砂漠を裂いて雷霆天尊へ直撃。
轟音を伴って衝撃波の噴火が砂塵とともに高々と噴き上げていった。地響きと烈風が広がり、凄まじい威力だと誰もが腕で顔をかばいながら驚く。
ナセロンは着地し、様子を窺う。
「実際大したものだな……」
もわもわ立ち込める煙幕の中から賞賛の言葉が聞こえ、ナセロンはハッとする。
人影が浮かび、依然余裕と雷霆天尊が威風堂々と姿を現す。
「だが、悲しいかな……余にはまだ到底届かん」
「くっ!!!」
重々しく見下ろす雷霆天尊に、ナセロンは絶句するも歯を食いしばる。
絶対的とも言える天と地の差ほどの力の差を前に、立ち向かわねば未来が切り開けないと知っている。
このまま負けて父さんを通してしまえば、大悪党の烙印を押される。
「だからってジッとしておれないよっ!!」
ナセロンは毅然と五芒星形のシールドを再び張って身構える。
「それでこそ我が宿敵ナセロンよ……!!」
「フハハハ~ッ!!! こうしてはおれぬな!! 我も負けておれぬわッ!!」
なんとナセロンの奮起に触発されてか、ブラッドとルシアまで立ち上がる。
治療していたセーレイは驚くしかない。
さっきまで重傷で意識を失っていて命に関わりそうだったのに、完全回復したかのように立ち上がったのだ。
「これが……聖騎士ナセロン……!?」
カナリア姫は感銘を受けていた。
ただ強いだけじゃない。どんな絶望的な難関にも勇気と気力を振り絞って何度でも立ち上がろうとする心意気は周りにも伝播していく。
気づけばクロリア、アーサー、グランハルト、アレフまでもが立ち上がっているのだ。
「兄として第四王子にも負けてられませんよ!!」
「おう!! 打ちひしがれている場合じゃないぜ!!」
「ナセロンさまも立派になられたものだ……。感激の極みだ」
「ハハッ!! それでも勝てねぇ不条理だが、それを上回る不条理を期待したくなってくるぜ!!」
半死半生だった彼らが牙を剥いて立ち向かおうとしているのだ。
雷霆天尊としても驚くしかない。
このままやりあったとしても絶対に勝てないというのに、彼らの目に諦めの色は窺えない。
「そのまま地に伏していれば、カナリア姫をさらうだけで済んだものを……」
「そんなのダメだよ!! なんでこんな事をっ……!!?」
悲しげなナセロンを見ていると心が痛む。
だが、もはや自分は女神マザヴァスの手中にある……。
「それもこれも女神マザヴァスさまの為に余が行わなければならん! 余は大悪党として無益な虐殺を世界中で行い、妖精王ナッセを殺し、最後に金色の破壊神へ挑む!!! だが、うぬらは関係ない……」
「虐殺する女神のせいで父さんが大悪党になっちゃうなんて、ボクは絶対嫌だーっ!!!」
思いの丈を叫ぶナセロンの目から涙が溢れた。
雷霆天尊はドクンと心を揺さぶられて、葛藤がより強く駆け巡っていく。
「僕もナセロンと同じ気持ちです!!」
「聖騎士隊長として、このアーサーめもそれは許せられねぇ!!」
「聖騎士グランハルト隊長も同じく!!」
「このアレフとて、そんな女神の不条理は看破できねぇからなッ!!!!」
クロリア、アーサー、グランハルト、アレフも感情を剥き出しに叫ぶ。
動揺に駆られるも雷霆天尊はギッと睨み据える。
「お前らはあくまでも余を取り戻したいというのだな……」
雷霆天尊を周回する無数の菱形が徐々に激しく踊り舞っていく。
「フン!! 言われるまでもない!!」
「このルシアとて無関係だろうが、我が友ナセロンの背中を押していきたい!!」
ブラッドもルシアもナセロンの支えになろうとしている。
まるで結束しているかのような絆を感じた。
「それもよかろう……! そういうのならば、それだけの見合った力が必要だ!! この余を倒して、それを証明してみせろッ!!!」
雷霆天尊は腰を落として身構え、踊り舞っている菱形が嵐のように吹き荒れて砂塵を巻き上げている。
攻撃もしてないのに、砂漠を引き裂かんとするばかりの猛威だ。
今度ばかりは殺されてしまうかもしれない。
するとカナリア姫はドクンと動悸が走る。
「信じる力……!! ナセロンを中心に結束される絆……!! 私はそれを守りたい!!」
フワリと地面から浮き、全裸に透けたカナリア姫が左右に腕を広げる。
胸辺りに剣のような紋様が輝き出す。カッ!!!
「ザイルストーン王家代々伝わる『奇跡の宝剣』!!! ナセロンに力を貸して!!!」
シュワシュワとあちこちから光が気泡のように浮き上がっていく。
クロリア、アーサー、グランハルト、アレフ、ルシア、ブラッドからも光が抜け出ている。
それらは全てナセロンへと集約されていって、天に向かって光柱が立ち上っていく。
ズゴゴゴゴゴゴゴゴゴゴゴゴ…………ッ!!!!
「こ、これが……!? 奇跡の宝剣ッ!!?」
雷霆天尊は見開き、膨れ上がっていく威圧に仰け反っていく。
みんなの絆たる力を受けたナセロンは戦闘力一〇〇万へと急上昇して、神々しく光を撒き散らして荘厳と雷霆天尊を見据えた。
「だったらボクが父さんを倒してみせるよッ!!!」ド ン!!!!
一触即発とナセロンと雷霆天尊が睨み合う。




