113話「神々の思惑!! 腹黒な女神マザヴァスの破顔!!!」
世界を揺るがすほどの雷霆天尊とナセロンたちの激闘を、各方面が刮目していた。
「皇帝ライティアス……。さすがだな」
金色の破壊神クゥナーレは目を細めて、映し出している映像を見ていた。
半身であるナセロンを誘拐する為に襲撃していたが、当時は出てこず第一王子ビクターが代わりに命を懸けて阻んできた。
相対する事はなかったものの、自分にとって最大の障害だと思っている。
妖魔神ズクケィールードンもそんな圧倒的な強さを目の辺りにして心躍っていた。
「それでこそ皇帝ライティアス……!! ですが女神に洗脳されているのは気に食わないですね」
既に女神マザヴァスの存在を知っていて、その無粋な横槍が気に食わなかった。
本当なら雌雄を決したいと心待ちにしていたのに、出てきた時は洗脳済みとか興が削がれる思いだ。
その戦いをアバターのシシカイが映像で映し出している。
それを見ていてアワアワしているナッセ。目を細めるヤマミ。困惑するリョーコ。
「大丈夫なんかな……?」
「一応原作通りでしょ? ってもカナリア姫をさらうフリをしてナセロンの力を試したストーリーと酷似しているけど」
「このままだと全滅しちゃわない?」
本当は飛び出して戦いたい。
苦戦はするだろうが、ヤマミとリョーコと一緒に戦えば勝てない相手ではない。
だが、それではナセロンの成長フラグが立たない。グッとこらえて成り行きを見守るしかないのだ。
「がんばれ……!!! ナセロン!!」
創造主として応援するしかなかったぞ……。
世界三柱神である支配神ルーグ、闘神ブラッディー、生命神ガーデスもこの戦いに注目していた。
「ナッセたちが出てこぬのは、創造主としての考え故かのー?」
「うむ。あやつらもきっと見守っておるだろう」
「ですが……、あの女神に洗脳されてチート移転者と一緒に侵略するというストーリーはないでしょうし」
ガーデスの言う通り、そこだけ違うのだ。
漫画のストーリーではザイルストーン王国の被害は全くなかった。むしろ王国と打ち合わせして舞台を整えていた。
まずザイルストーン王国の依頼を受けたナセロンとヨスイとユウリュウが、家出したカナリア姫を連れて戻る。
そして王宮へ連れて帰ると皇帝ライティアスと出くわしてしまう。
そいつと戦う事になり、ナセロンは今回のように完膚なきまで打ちのめされる。
「女神マザヴァス……!!!」
ブラッディーは苦い顔をする。
ザイルストーン王国を一方的な侵略で叩き潰すのが女神のあり方なのか、と憤る。
「だが、ワシらは世界三柱神として見守る立場にあり、ヒトの社会に介入してはならない存在。こらえるのだ」
「そうですね……。私たちは加護を与えて彼らの成長を促すしかできないものね」
「金色の破壊神を除いては……」
ブラッディーの言葉に、ルーグもガーデスも頷く。
金色の破壊神だけは我ら神々の問題。出てきたとなれば話は別だ。
女神マザヴァスももちろん、洗脳したライティアスの行方を見ていた。
《強い……!!! 強い強い強い強い強い強い強い強い強い強い強い強い強い強い強い強い!!!!》
世界を震わせ、いかなる強者も圧倒的にねじ伏せる。
ナセロンたちも相当な強さだというのに相手にならない。素晴らしい。
チート移転者など消耗品でしかないが、コイツだけは別格。我が右腕に足る存在。
《皇帝ライティアス、いや雷霆天尊一人いれば世界など掌握したも同然!!! カナリア姫の『奇跡の宝剣』も合わせれば金色の破壊神など恐るるに足らず!!!》
勝ったも同然だ、と悪辣に笑んでいく。ニイィ……!!
《ハァーッハッハッハッハッハッハッハッハッハッハ!!!!!》
────と、神々が注目する大侵攻もクライマックス。
しかしナセロンとブラッドとルシアは既に瀕死で絶体絶命の状況。
ザイルストーン王国の人々はもちろん、カナリア姫も愕然としていた。
「そこまでだッ!!!」
そんな声に雷霆天尊は見上げる。
空からキラキランと五つ光りだすと、流星のように尾を引きながらこの場に降りてきた。
ザザン、と四人の足が砂漠に付けて砂塵を噴き上げた。
「ギルガイス帝国が第二王子、聖騎士クロリア!!!」
「聖騎士アーサー!!!」
「聖騎士グランハルト!!!」
「聖騎士アレフ!!!」
皇帝ライティアスの失踪後、代わりに影武者を勤めていた第二王子クロリアが聖騎士となって、ザイルストーン王国侵略の件を聞いて馳せ参じた。
そして永遠の楽園事件でも活躍していたアーサー、グランハルト、アレフ三人衆も同じく馳せ参じた。
ギルガイス帝国最大の戦力が現れたのだ。ドドン!!!
「うぬらは……!?」
アイマスク越しに雷霆天尊は見開いていく。
記憶にないはずなのに、どこか見慣れたような感覚を覚えていた。ナセロンと同様の高揚感が心を波打つ。
「父上!! 皇帝ライティアス!!! 皇帝陛下ではございませんか!?」
クロリアは一歩踏み出す。
「陛下!! お気を確かに!!」
「……ついに再会できて感激の極みですが!!」
「ザイルストーン王国を攻めていた張本人が皇帝陛下とは不条理だな!! ハハッ!!」
三人の聖騎士も呼びかけるが、砂塵が横に流れるだけで雷霆天尊は沈黙している。
「こちら聖女セーレイ!!! ただいま第四王子ナセロンを確認!! 瀕死ではありますが回復魔法を施し、命を取り留めてございます!!」
なんともう一人は銀の額当てをした黒髪姫カットの僧侶が、ナセロンとブラッドとルシアに全体回復魔法の光で包んでいた。緑色に淡く灯る光が徐々に傷を癒していく。シュウウ……。
「なんと!! 師匠に預けていた弟が……!! それは良かった!!」
クロリアは久しぶりの弟の無事にも安堵し、再会した事を喜びたかった。
しかし雷霆天尊をキッと睨む。
「皇帝陛下!!! そして父上!!! なぜ、そんな事をッ!!? 答えてくれ!!!」
クロリアの突き刺すような言葉が、雷霆天尊には痛く感じた。
記憶にないはずなのにチクチクしてくるのは困惑せざるを得ない。アイマスクの奥で苦い顔をしていく。
「……女神マザヴァスさまに従い、神軍司令として残忍な神軍をけしかけた。うぬらにとっては唾棄すべき悪党だ。そして余は皇帝ライティアスなどではなく雷霆天尊と新たに名を授けられた残虐な男なのだッ!!」
「「「なんだとッッ!!!?」」」
「ち……父上が女神さまに…………!!?」
クロリア、アーサー、グランハルト、アレフは見開いて驚く。
自虐するかのような物言いで、女神マザヴァスに洗脳されていたと事情を把握してしまう。
そんな骨肉の争いになりそうな気配に、女神マザヴァスは嬉々とした破顔で見ていた。
《さぁ!! 自らの手で家族を殺して血に濡れろ!! そしてズブズブと罪悪の沼に飲まれ、我が忠実な右腕に堕ちるのだ……!!!!》




