111話「天地を揺るがす最強格!!! それが雷霆天尊!!!」
聖騎士ナセロンが牙龍のチートスキルを上回っての完全勝利。
雷霆天尊は自分でも戸惑うほどの高揚感が熱く湧き上がってきた。
「む……!? 初対面だというのに、何故だ?? ナセロンを見ていると感情が落ち着かん……」
ナセロンがピンチに陥った時もそうだ。
味方である牙龍に対しては何の感情は湧かないというのに、ナセロンが追い詰められる時だけ不安やチートへの憤りが強く沸く。
それはまるで我が子に対する感情にようにも見える。
「ヤツが勝った時は、歓喜に満ちて『強くなったな』としみじみしてくる感慨が湧いてきた」
だが女神に封印牢から解き放たれた時は、それ以前の記憶がない。
意図的に都合の悪い記憶を消したのではと不審を抱く。
夕日が地平線に沈もうとしている空で、無限樹は未だ沈黙を保っている。
ナセロン、ブラッド、ルシアはそれへたどり着く。
割と広大な浮遊島で、大きく葉っぱを広げる大樹が高く聳えていた。
「近づいたら、かなり大きいね」
ナセロンたちは浮遊島の上で浮いたまま、見渡す。
大樹の広げる葉っぱの下では森林地帯で覆われている。
「あそこ巨樹の周りに城があるぞ」
「かなり強い気配も感じる……」
「はれ。チートなんたらの人は一人もいないみたいだよ」
木の根元の周りを包むように城が建設されている以外に、外周から根元までの森林地帯にもあちこち建物が建っている。
「ここは女神さまが所有する浮遊島『無限樹』だ」
厳かな声が響いてきて、ナセロンたちはキョロキョロ見渡す。
すると強烈な烈風が森林や大樹の葉っぱを激しく揺らし、大気が絶叫しているかのように轟音が響く。
ナセロンたちは腕で顔をかばいながら、吹き荒れる先を見上げた。
「こっちだ」
葉っぱを巻き込んだ竜巻が破裂して、厳かな男が黒いマントを揺らして三人の前に現れていた。
立派な皇帝の赤い鎧には金の縁が走っている。下半身はローブのような裾の長いもの。
金髪で逆立っていて厳つい顔。アイマスク越しから鋭い視線が刺してくるかのようだ。
「あんたは誰だよっ……!?」
「チート移転者とやらのボスか?」
「いや、アイツは……?」
「余は……女神さまに一応従う、神軍司令 雷霆天尊である!」
他のチート移転者とはまるで違う威圧感だ。
重厚で歴戦だというのが重々しく感じ取れる。とてもチート移転者とは思えない。
「待てナセロン、ルシア……! まるでギルガイス帝国の皇帝ライティアスとそっくりだ」
「え?」
「なに!?」
ブラッドが冷や汗をかきながら険しい顔で雷霆天尊を見据える。
「お前らは見た事ないだろうが、オレはギルガイス帝国に寄った時にパレード行進で見かけた事がある。アイマスクをつけているが、あまりにも皇帝ライティアスそっくりだ」
「はれれ? ギルガイス帝国の……皇帝!!?」
「すると、ヤツは一体??」
戸惑いが走っていくナセロンたちに、雷霆天尊はフッと鼻で笑う。
「女神さまご命令で、何の罪もない平和なザイルストーン王国を一方的に侵略したチート移転者をけしかけたのが余だ。許せないと思わないか?」
「お……お前がっ!? 虐殺させたのかっ!!!?」
「そうだとしたら?」
ワナワナ震えるナセロンを挑発するかのように冷笑する雷霆天尊。
ザイルストーン王国が戦禍に巻き込まれて、多くの阿鼻叫喚を聞いてきた事を思い返し、ナセロンは激昂していく。
それに構わず雷霆天尊は「クラスチェンジ!!!」と叫ぶ。
「聖騎士 雷霆天尊!!!」
優美な白い騎士風に衣服が変換され、烈風が周囲に吹き荒れていった。
しかしそれに留まらず「──昇華!!」と言葉を続け、眩い光が全てを覆い尽くした。
ズオッと急激に膨れ上がる重々しい威圧。数百キロ範囲にも地響きと烈風が吹き荒ぶほど絶大な余波を撒き散らす。
「神聖帝 雷霆天尊ッ!!!!」
天地を揺るがすほどの震撼とともに威風堂々と降臨された最強形態。
神々しい黄金の色調で拵えた鎧と衣服。全ての騎士を束ねるほどの頂点たる最強クラス。
そしてギルガイス帝国で歴代最強を誇る一〇〇万オーバーの戦闘力。
ゴゴゴゴゴゴゴゴゴゴゴゴゴゴゴゴゴゴ……ッ!!!!
それに対してナセロンとブラッドとルシアは戦慄するしかない。
今戦うには早すぎる。それだけ天と地ほどに力の差が開きすぎていた。こうして対峙してるだけでもビリビリと全身を威圧が貫いてくる。
「では……来るがいい……」
見えない剣でも握っているかのように正眼の構えを取っていく。
ナセロンはそれでも退く気はなかった。ブラッドもルシアも同じ気持ちだ。
「みんな!!! 全力でヤツを倒さないと悲劇は繰り返されるよっ!!!」
「ウム!!! 敵わずとも、全身全霊やるしかなかろうッ!!」
「フンッ!! 言われずとも、きさまらとは地獄まで付き合ってやる!! 乗り越えて更なる強者へと成り上がる為になッ!!!」
ナセロンとブラッドとルシアは一斉に雷霆天尊へ飛びかかる。
各々昂ぶる感情を力にするかのようにオーラを漲らせた。
「ルミナス・トッパーッ!!!」
「拳王奥義!!! 轟魔爆炎破ッ!!!!」
「降魔・深淵刺殺剣!!!!」
勢いよく真っ直ぐ走る三つの軌跡が唸りを上げて、大気を引き裂きながら、ナセロンとブラッドとルシアがそれぞれ渾身の一撃を繰り出す。
裂帛の気合いを漲らせて打ち破らんと「おおおおおおッ!!!」と叫ぶ。
それに対して雷霆天尊はカッとアイマスク越しに見開く。
「天よ鳴り叫べ!!! 地よ震え唸れ!!! 惑星が束ねる光輝たる力を我が手に!!! ブリリアンスゴッドソード!!!!」
そう吠え、ナセロンと同様に光の剣を具現化させ、更に広大な五芒星型の光の盾が猛威を振るって現れた。
生じた反発作用により、全てを吹き飛ばすほどの衝撃波を伴って、ナセロンとブラッドとルシアをまとめて吹き飛ばしてしまう。
ズガガガァ────ンッッ!!!!!
ザイルストーン王国から遠く見える無限樹に落雷でも落ちたかのような、凄まじい轟音とともに光り輝く放射状が広がっていく。
そして数百キロにまで震撼が響き渡り、各地の誰もが震え上がる。
まるで神々の怒りが天地を揺るがしたかのようだ。
ズズズズズズズズズズ…………ッ!!!!
カナリア姫は不安そうに、後光が溢れている無限樹の方を眺め続けた。




