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第九十七話『天使の心情』

(この世に降臨してから私は変わった。)


この星は人という種に溢れている。神による威光は無く天使による管理もなき世界。天使ならば誰しも嘆かわしいと言う現状だ。だがその世に在りながら私は幸福を感じいた。


「ジョン、此方に座りなさい。」

「忙しいから無理だ。」


机にて課題と言う義務に勤しむジョンがいるからこそこの幸福を感じているのかも知れない。


「私は来なさいと言ったのです。二度目は無いですよ。」

「はぁ、なんだよ?」


主に似た何かを感じるのだがやはり何処か違った雰囲気を纏う人間。


「此方に貴方の頭を乗せなさい。」

「俺は餓鬼じゃない。」


私の心は常にこの者に対し支配欲が渦巻いていた。


「私からすれば貴方は赤子も同然です。」

「ならあんたは爺さんか婆さんだな、くく。」

「今直ぐその言葉を訂正しなさい、人間。」


本来この様な軽口を下等種である人間に言われれば即座に死を与えるのだが、どうも私は可笑しくなっている。この会話のキャッチボールに喜びを感じているのだ。外面では激昂した素振りを見せるが内面は違う。


(危うく笑みが零れそうになりました。)


「あらあら楽しそうですねぇジョン副団長ぉ♪疲れているのなら私の膨よかな腿の方がぁより安静な睡眠を送る事がぁ出来ますよぉ、ふふ♪」


ガバ

「な、何をするんだディアーナ!」


ディアーナがまたも私からジョンを奪っていく。私の胸に強き痛みが生じる。この人間は私の物だ。私がジョンの初めてであり共存者だ。其れを何故分からない?


「やめなさい、ディアーナ。」

「うふふ、ルキフェルさん、嫉妬ですかぁ?」


ディアーナは私の勘に触る発言が本当に上手い。


「嫉妬では断じて在りません。今直ぐにジョンの頭を此方へと移しなさいと言っているのです。」


確かに嫉妬なのだろう。だが此れは決して面に出しては良い感情では無い。もし出してしまえば歯止めが効かなくなる。


「はぁ、ちょっとだけですよぉ?」


ディアーナは何時も欲張らずこうして私へとジョンを返上してくれる。こう言った点に置いては私は彼女に好感を持てるのだろう。だがやはり最初を奪われると言うのは気分の良いものでは無い。


「離せ、ルキフェル!!」


膝枕と言うものをディアーナから教えられ試してはいるのだが存外心地の良い物だ。もっとも教えた本人が初めを奪いとったのだが。


「黙りなさい。貴方は私にだけ愛情を向けていれば良いのです。」

「何言ってんだ、アンタ。」


そう、私だけに親愛を捧げれば良い。何故その様な簡単な命令を聞けないのか理解に苦しむ。天使である私に尽くす事は本来幸運な事だと言うのにジョンは理解していない。


(ただ、この世界にジョン以外の人間は不要とさえ言える。ディアーナと共に人類の裁定を行いますか?)


ジョンが望むのならば加護を与えよう。寧ろ永き時を生きれる様に聖なる光を齎すのも良し。何はともあれ私が生ある限りジョンを死なせる事は無いでしょう。


「あー!ズルいわよルキフェル!!私にもさせなさい!」


この女は第一に消す人類筆頭だ。我が遣いを自身の伴侶と勘違いする色欲に塗れた家畜。存在する価値すら無い。


「あ、そう言えばさっきコンビニって所に行って来たんだけど、ルキフェルの分のプリン、冷蔵庫に入れといたわよ!」

「...........おい、その手に持つ財布は誰のだ?言って見ろ?」


前言撤回。彼女は良き隣人だ。暫くは共に在ることを許可しましょう。


「ありがとうございます。其れでは対価として暫くの間、ジョンを貸して差し上げましょう。」

「何言ってんのよ!元々ジョンは私の物よ!」

「.........アンタら人を物扱いするのをやめろ。」


人の作りし甘味は実に美味だ。私は急ぎキッチンへと向かうと同族で在る天の獣が先にプリンを食していた。


”同胞か。汝もぷりんを食しに来たか。実に美味であったぞ。”


その言葉を聞き頰が緩む。待ちきれない。甘味はジョンが作る料理の次に好物なのだ。


「あ〜美味しいですぅ//」


言葉使いがディアーナの様になってしまった事に後悔を感じる。天の獣は既にこの場から去っている為、誰も私の発言を聞いていない筈だ。


パシャ


シャッター音が自分へと向かい鳴る。恐る恐る其方へと顔を向けるとディアーナが普段以上のにやけ面で写真を撮っていたのだ。


「ディアーナ!?!」


一番見られたく無かった人物は逃げる様にその場を後にする。


「うふふ〜ジョ〜ン副団長ぉ!面白い物がぁ手に入りましたよぉー!」


最悪だ。即座に私は彼女を捉えるべく動いた。


「逃がしません。」ガシ


天使の歩法を用い即座に捉えるのだがディアーナはニッコリと笑うと瘴気と化し霧状となる。普段の私ならば霧状になる以前に拘束するのだが、緩んでいた。


「ホラァ見てくださぁい♪ふふふ、可愛いですよねぇ〜ルキフェルさぁん笑」


遅かった。リビングから笑い声が聞こえてくる。


「この動画は永久保存版でぇす♪」

「.........」ブチ


ルキフェルは眼光を尖らせ獲物を狩るためにリビングへと向かう。


“純粋に喜びを見せる事は良き事だ”


「いつも仏頂面なのに!こんな顔が出来るならもっと見せなさいよね!其れにしても、ふふ、あははははは!普段との違いが、ぷふっ、しかも喋り方がまんまディアーナじゃない!!」


天の獣は感心したような表情を見せ、女の方は小馬鹿にした様に笑うが、どこか安心した様な表情を見せていた。


「あはは!!此れがルキフェルかぁ!案外可愛い所もあるじゃないか!」

「そうですよねぇ♪ルキフェルさん、もっと柔らかくすれば絶対に良いと思いますのねぇ♪」


ジョンが笑った。笑ってくれた。『私』を見て微笑んでくれたのだ。私の怒りは遥か彼方へと飛んだ気がする。私の心は幸福に満たされていた。


(可愛いと言ってくれるのならば、いつでも私は貴方に笑みを見せると言うのに.....)


ジョン ああ、私は可笑しくなっている。あの人間を独り占めしたいと言う独占欲が日に日に強くなっている。此の儘では何れ壊れてしまう。


「ちょうど話をしていればルキフェルが来たぞ。それで、プリンはどうだった?」


ワザとらしく聞いてくるジョンに対しても私は怒りより愛情が先に感じられた。何故だ。今直ぐに抱き締め、私の胸の中に貴方を招き入れたい。


「其処に直りなさい、ジョン。主人である私に対しての非礼、受けて貰いますよ。」ギュ

「..............それで何で抱きついてんだよ。」


そう、主人ならばどの様な命令でも下せる。ジョンの身体を好きに........おほん、制裁を与える事が出来る。


「此れが欲に言う新しい『ツンデレ(2021)』と言う物ですので覚えて置いて下さいねぇ?」


ディアーナが私を指し何やら天の獣と女へと説明している様だが今はこの温もりを感じていたい。あぁ、この匂いは落ち着く。出来れば永遠に嗅いでいたい。


「おい、離せ、ルシファー、息が、出来ない!!」

「「おー」」


興奮の余り力み過ぎた事を後悔する。人は脆い。力の加減を最小限に抑えてはいるものの何かの弾みで怪我を負わせてしまうのではないかと心配になる。


「貴方は私の所有物なのです。私だけを見なさい。主人を楽しませることだけを考えなさい。それ以外の感情は必要ありません。捨なさい。」

「無理だ。」


私は唇がスレスレの位置でそう言う。何度も当たりはするが関係ない。今は否定的で抵抗をするが何れは私の素晴らしさに気づき服従するだろう。


「此れが欲に言う新しい”ヤンデレ(2021)”と言うものなので覚えて置いて下さいねぇ?」

「「おー」」


又も自分達を指しディアーナは何やら説明をしていた。


「って私の未来の旦那様に何してんだー!!」


ところが今度は女が私達を引き離そう間入って来た。だが、その程度の抵抗で私とジョンの絆が裂かれる筈も無し。


”大変だな、少年よ”


(そう言うなら、助けてくれ。)


天の獣が意思疎通でジョンと会話を行なっている。ああ、羨ましい!妬ましい!私だけを見ろと今言ったばかりではないか。


「はぁ♪やはり純粋な者を歪んだ形に染めるのは心地が良いぃですねぇ♪」

(ジョン副団長にベタベタするのは正直に言うと気に触りますが、純粋なものが徐々に汚れていく姿を見るとぉ________ゾクゾクしちゃいますぅ♡)


光悦とした表情で自身を抱くディアーナ。青年は其れを凝視し今直ぐに助けてくれと目で訴えるが彼女は其れを笑みで返すのだった。


「嫌でぇす♡」

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