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第九十五話『天使の口づけ?』

国語辞典を引用して”口付け”の意味を引くと以下の様に書いてあった。


1 接吻すること。キス。

2 言い慣らすこと。口癖。


そして先程ルキフェルが自分に対し求めて来たのは言うまでもなく、前者の意味なのだろう。


「なぁ何でキスをしたいんだ?」


帰りの電車にて隣に座る天使に聞いてみる。ディアーナはピクリと眉を動かすと青年たちへと耳を傾けていた。


「数多の人間がその行為をするからです。」


「それは「勿論、意味は知っております。親愛ある者同士の行いだと。」


ルキフェルは青年の頰へと手を置く。


「私は確かめたい。この行為には真に親愛に足る何かが秘められているのかと。」


すると突然ディアーナが自分とルシファーの間に入り込み青年の顎を上げる。


「そうですねぇ。ならぁ、私が先に試してしまいましょうかぁ?」

(初めてを貰うのは私でなくてはなりません。力関係で勝てなくともジョン副団長に対しての愛はどこの誰よりも負けはしません。貴方の全ては私が貰い受けましょう。だから、その唇______奪いますねぇ♡)


「な!?ディアーナ!!」


舌舐めずりをすると間髪入れず青年の唇へとディアーナは自身の唇を重ねた。ルキフェルが止めに入ろうとするが既に遅い。唇は既に接触しディアーナは満足気な顔で立ち上がる。


「うふふ、ご馳走様でしたぁ♡」

(はぁ____この場で今すぐにでもまぐわいたい。貴方の精液を私の中で受け止めたい。けれど、それをするには絆がまだ足りていない。無理矢理と襲い貞操を奪う事は簡単でしょうが、やはり相思相愛で在りたいのです。)


聖女は嫌われたくないのだ。行き過ぎた愛情を持ちながらも恋愛経験が皆無に等しい為、ピュアなのである。


「ディアーナ、貴方と言う人はぁ」ギリ


ルキフェルがギロリと睨みつける。その眼光は今すぐにでも飛びかかりそうな程に鋭くディアーナは悪怯れる事もなく少女と狼さんの方へと歩き去って行く。因みに少女と狼は席を立ち窓際を食い入る様に眺めていた。


「ディ、ディアーナの奴............いきなりなにするんだよ//」ボソ


青年の頰は紅く染まっていた。その反応を見てかルキフェルは頰を膨らませ青年の胸ぐらを掴む。


「貴方の契約者は私です。私だけを見なさい。天使だけに親愛を捧げなさい。其れでも尚、他者に対しうつつを抜かしたいと言うのであらば貴方以外の人類に対し黙示録を下します。」


目が本気だ。目の前にいる天使は前々から思ってはいたが愛情(嫉妬)に深い人物であり、欲に言う末期写●眼保持者と同じなのだ。


(純粋な奴程病むと言われるが..........)


青年は片目を瞑り車内から見える景色へと視線を向ける。


「傲慢だな、天使なのに。」


青年は苦笑しながらそう言う。


「______堕ちた天使ですから。」


ルキフェルは青年の掴んでいる胸元を引っ張り青年の唇を奪った。


「ん」


そしてゆっくりと唇を離すとルキフェるは指で己の唇をなぞる。


「不思議な感覚です。」


「なんだ、お気に召さなかったか?」


天使の姿を見て頭に手を置く。


「いえ、日課にしましょう。これから貴方がして良いのは私だけだと誓約を付けましょう。他の方にしようものなら相応の報いを受けて貰います。勿論相手の方には死と言う制裁で、ですが。」


早口で誓約をつけるだの日課にするだのと一人で盛り上がっている様だが拒否だ。この天使は純粋すぎる。まるで初めてキスをした童貞中学生かと言ってやりたい。


「あぁー却下します。」


「.............は?」


暫くの沈黙。


「...................」


そんなに見つめてもダメなものはダメです。


「ルキフェル、元はアンタらが起こした騒動をアンタら自身の手で拭わせただけだ。俺がそこまでしてやる義理はない。」


「貴方は何を言っているのですか。先程の口付けは対価を支払わせたにすぎません。そして此れから行なっていく『口づけ』は私から貴方へ下す命令なのです。天使が神に従属する様に貴方は天使である私に従属しなければなりませんからね。」


頑なに否定をしてくる姿勢に頭を痛める。どれだけキスがしたいねん!!


「しません!そもそもお前さんも従属してなかったじゃねーか!!あぁあああ、取り敢えず俺たちの駅に着いたから話は家に戻ってからだ。おーい、下りるぞ!!」


青年は立ち上がり窓際で未だに眼を輝かせる少女と狼さんを呼ぶ。ディアーナは此方を見ると自分の唇を触りウィンクをして来た。


「ディアーナ......」ギリ


ルキフェルが嫉妬の目をディアーナへと送る。ディアーナは笑みを止めず先に電車を下りた。


「ディアーア、貴方は良き隣人であった。ですがそろそろ邪魔になって来ましたね。」ボソ


(怖!?ルキフェル怖!!!)


駅を下り帰路の最中もルキフェルはディアーナへと視線を送り続け、怪しげな台詞をぶつぶつと呟く。


「もぅ嫉妬は見苦しいですよ、ルキフェルさぁん♪」


「ディアーナ!?」

(此奴の本性は原点を読んでるから分かるだろディアーナ!なんで煽ってんだ、此奴!!)


嫉妬の化身と行っても良いほどにルキフェルは執着心が強い人物だ。 神への復讐と言うと聞こえは良いが、アレはただの嫉妬から起こした反逆だ。天使(ルキフェル自身)をもっとかまわなかったから復讐と言う旗を掲げただけに過ぎない。


(一緒に暮らし始めたから分かる。徐々に此奴は自分に依存先を変えて来ている。)


此れから遠くない未来、ルキフェルは神の代わりとして青年を過保護に扱うだろう。それ程までにルキフェルは青年に依存し始めていた。


「...........」

(此奴の望みを受け入れるしかないのか?)


キスくらいで済むなら致し方ないかと内心にて考える。隣で歩くルキフェルは正直に言うとディアーナ以上に危ない。此の儘では高確率でディアーナと潰し合うのは必然。そもそもな話、ディアーナが毎日の様にルキフェルを煽るからこの様な状態になっているのだと自覚してほしい。


(いや待てよ.........寧ろ火種であるディアーナを消せれば、万事解決じゃね?)


「ジョン副団長ぉ、邪な考ぇシていますねぇ♪」ふっ


「はぅ!?」


耳に息を吹きかけられ驚く。ルキフェルは其れをジッと見ると自分も真似をしようと青年の耳へと背を伸ばし始めた。


「ルキフェル、見えてるぞ。」デコピン


「痛いッ..........天使に向かい狼藉を働くとは何事か!其処に直りなさい!!」


ルキフェルは怒る様に言うが何処か嬉しそうな表情をしていた。大方、デコピンをされて嬉しかったのだろう。もしかしたらマゾの可能性を秘めているのかも知れない。


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