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第九十二話『壁を壊しました』

「おい、起きろ。」


大家と話し合い、隣の部屋に彼らは住む事になったのだが何故か『少女』が自分のベッドで眠っていた。


「もうちょっとzzz」


そして其れだけにとどまらず他の面子も同様に自分を囲むように眠りについていた。


「アンタもか、狼さん。」


優しく頭を撫でて見る。めっちゃふわふわで触り心地がいい。


”.....................孤独は心憂い”


心地好さそうに眼を細める狼に青年は思わず笑みがでる。ではなく、なぜ此奴らは此処で眠っているのかだ。


「おはようございます、ジョン。」

「おはようございます、ルキフェル。其れといい加減に自分にしがみついて眠るのをやめてください、どうぞ。」


眼を擦りながら微笑を見せるルキフェル。絵画に出てくる天使の様な美しさに眼を奪われるが、内面がかなり歪んでいる為に思わず残念に思う。


「私の羽は囚われる為に在りません。何者の指図にも屈する事はないのです...........其れが私の天道だってばよ。」


何がそれが『私の天道だってばよ』だ。漫画に影響されやがって。


「取り敢えず起きたなら、顔を洗ってこい。その間に他の奴らを叩き起こすから。」


「................そうですね、お姫様抱っこと言うものを洗面所までしてくれると言うのならばこの場から離れてあげましょう。」


ドヤ顔を決めながら抱き抱えられる準備をするルキフェル。あぁ、本当に面倒くさい。


「叩き起こすって言ってんだろーが!自分の足で「やりなさい」ダメだ、今度と言う今「やりなさい」いい加減にしろよ、毎度毎度影響受けやがって!知ってるんだぞ、アンタが夜にコソコソとテレビを付けて少女漫画原作のアニメを見ている事をなぁ!!」


そのせいか最近ではベタベタと自分へと引っ付いてくる始末だ。それにディアーナはそれに対抗してかかルキフェル以上に引っ付いて来ようとするし、安静な時間が最早皆無に等しい。


「な、何故貴方がその事を.......」


(あれだけの音量で見て置いて、起きないと思ってたのか......)


興味本位で人間の真似事をするルキフェル。其れを焚き付ける様に行動を起こすディアーナ。さらには昨日、童話の世界から新たな火種が召喚されたときた。


「うぅ........あら、もう朝ですか、うふふ♪」ガバ


「ディアーナ!!」


「ふふ、一緒に寝ましょうぉ?」


青年へとのし掛かりベッドへと押し倒し密着をする。青年は疲労の表情を見せ、ディアーナを退ける。ルキフェルも其れを真似をしようとそろりと青年へと近づくのだが其れをされる前にお姫様抱っこをすることにした。


「狼さん、その破天荒娘を起こして置いてくれないか?」


未だに眠りにつく童話少女を狼さんに任せる事にした。


”...........承知した”


若干嫌な顔をしてたが、一応は承諾してくれた。そしてルキフェルを抱え洗面所へと向かう。ディアーナは羨ましそうに指を咥えその後を追うのだった。








「はあ、今朝も大変だった。」


現在はルキフェルとディアーナを洗面所へと残し朝食の準備に取り掛かっていた。既に時刻は8時を回り本来ならば大学へ向かうために家を出なければならないのだが、今日は童話の住人達が此方へと来たので案内をしなければならない。


(大学の講義は難しくない、ただ出席日数を減らす訳にもいかないしなぁ..............ルキフェルに頼んで記憶改竄をして貰うか?)


大抵の主人公ならばその様な邪な感情は直ぐに捨て去るのだが、青年は違う。効率の良い方法を模索し、実行するのがこの男だ。


「まぁ其れは最後の手段って事にしておこう。」


卵の殻を砕きフライパンへと流す。水を少量蓋に流しフライパンを閉じる。そしてその間に味噌汁を作るためにかつお節を入れだしを取る。


「なんかノリみたいな感覚で此奴らを居候させてるけど、大丈夫だよな?」


炊飯器からブザー音が鳴る。どうやら炊けた様だ。


「ん〜いい匂いね!」ガバ


背後から少女に抱きつかれる。朝は忙しくて気づかなかったが隣の部屋と自分の部屋の壁が完全に破壊されて繋がっていた。ルキフェルや銀狼さんがいるからいつでも直せるのだろうし、意外と広いものだなと感心する。


「何作ってるの?」


「言って分かるのか?」


「分からないけど!教えなさい!貴方だけ知ってる何て狡いじゃない!」プンプン


味噌汁だ、と言いかけた所、ルキフェルが代わりに質問に答えた。


「味噌汁ですよ。洗面所が空きましたので貴方も使って頂いて構いませんよ?いえ、むしろ今直ぐにでも行って下さい。」


「はぁ?何であんたに指図されなきゃならないのよ!私が質問をしたのはこの人、貴方じゃない!」


ルキフェルの最近の日課は料理時の青年の観察である。少女がいると其れが出来ないのでやや機嫌が悪かった。


「俺の周りで喧嘩をするな、やるならリビングでやってくれ。」


二人に対し溜息を吐きながら料理を作って行く。二人は互いに睨み合うとフンッと顔を背け洗面所とリビングへと向かうのだった。因みにディアーナは朝に弱い為、銀狼と共にソファーに座りテレビを見ていた。



「朝食出来たぞー!」

『『『『はーい!!!!』』』』



こう言う時だけは仲がいい事に苦笑が出る。食文化はやはり輪を繋げるのだろう。


『『『『美味い!!!!』』』』


お互いに笑みを浮かべながら朝食を食して行く。


「人間の食べ物だけど、狼さんって食べて良いのか?」


一応、昨日はルキフェル達と同様の物を与えたがドッグフードや肉類でなければ行けないのか分からないでいた。


”構わん。少年の作る料理は舌を走らせる。吾輩は満足だ。”


「一応聞くけど、人の姿とかって取れる?」


”当たり前だ”


少し気になるな。吾輩口調だから男性なのは確かだろうが。


”吾輩に牡牝はない”


心の中を読まれ返答を返される。


「ルキフェルと同じなんだな。」


「天に生きしものとはそう言うものなのです。」


ルキフェルはズズズッと味噌汁を口に含んで行く。


「ふふ、どちらにもなれると言うのは楽しそうな物ですねぇ。」


お前は瘴気で如何にでも変化出来るだろうと心の中で思う青年。


「人類を超越してるな、アンタら。いや、少女は違うか。」


すると狼さんが目を見開き笑った。


”ふははは!良かったではないか、少女。人間の扱いを受けておるではないか。”


「うっさいわね、賢者様!ふーんだ!私は普通じゃありませんよーだ!!」


どうやらこの少女にも秘密があるらしい。

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