第九十一話『隣の狼さん』
「貴方の作る料理、美味しいわ!好きよ!」
嬉しそうに晩餐を食する少女に笑みが出る。
「そうか、良かった。喜んで貰えた様で何よりだ。」
自分の作った飯を美味しいと言ってくれる事はやはり嬉しい物だ。
「あ、でも私が貴方に嫁ぐ時は貴方以上に料理が上手くなるんだから覚悟しなさいよね!」
「.............ん?」
ちょっと意味が良く分からない台詞が聞こえてきた様な。
「嫁ぐとか何を言っているんだ、お前は?」
「はい?貴方が私の事を好きって言ったんじゃない!私と貴方が結婚する事は好きって言った時に決まったの!いい?私達は結婚するの!この話は終わり!」
終わり!っじゃねぇーよ!
「俺がいつ何処でお前の事を好きって言ったんだよ!!」
「私の事が可愛い過ぎるから見れないって言った!!」
「いや、言ったけども「なら好きなんじゃない!」
少女は満足気な顔をすると食に戻った。困惑の表情を浮かべながら少女を見るのだが飯に集中をしている様で取り合ってくれない。其れを見兼ねたのか銀狼さんは少女と青年の間に立ち口を挟む。
”少女よ、この者が貴公に申した言葉は皮肉だ”
「皮肉ぅ?そんな訳ないでしょ!私は可愛い!こいつはそう言った!もう結婚するの!反対の意見は聞きません!其れとも結婚をするのには試練が必要かしら?」
”少女よ、我輩の話を聞「何なら此処で今直ぐにだって子作りしたげるんだから!き、キスくらい大人な私は余裕よ!ほら、貴方、ちゅってしなさいよね!」
会話が成立しない。この妄想癖が強い女は何だ?銀狼さんなんか諦めた様に窓際まで後退しちゃったよ。しかも少し涙目だし。
(そもそもキスしたくらいじゃあ子供は産まれねぇよ。)
「あらあら貴方は純粋なのですねぇ、ふふ。子供は接吻だけでは産まれませんよぉ♪子作りには大切な儀式が必要なんですぅ。ねぇ、ルキフェルさぁん?」
「生殖行動_____男性体と女性体の陰部を接触させ男性体から放出される子種を初めて女性体へと取り込ませる事で人は種を増やして行くのです。その程度の知識もなく互いの契りを交わそうなど浅はかな行いなのではないですか、ジョン。」ギロ
ルキフェルが此方をギロリと睨み付けてくる。てか何故こっちを睨む。
「俺を睨むな、この女に言ってくれ。」
青年が視線を少女へと移すと少女はニヤリと口を吊り上げ食卓の上に乗り二人へと宣言をする。
「安心しなさい!!私が責任を持って彼を幸せにしてあげる!!!」
(ねぇやめてぇ!!こいつら結構最近ヤバめの依存度だからぁ!!!)
ルキフェルとディアーナはこめかみに血管を浮かべると共に席を立ち上がり瘴気と翼を広げる。
「幸福を届ける使命、それを受け持つのは天使の役目です。貴方の出る幕ではない。」
「これ以上ぉ貴方の口から発せられる妄言を聞けるほどぉ私の心は善良ではありませんよぉ......失せなさい、発情娘。」
三者は互いに視線をぶつけ火花を散らせる。
(幸福を届けるって.....原作では世界に絶望を与えていた気がするのですが。)
「何か言いましたか、ジョン?」
「.....はは、何も言ってないぞー」
感のいい天使に青年は顔を背ける。
「喧嘩はやめてくれ。あと、お前は机から下りろ。」
取り敢えず少女を机から下ろすと三人に向けそう言った。だがルキフェルらは余り良い顔をせず互いに睨み合っていた。
「この者には上下の関係と言う者を身体に教え込まなければなりません。」
「そうですよぉ?貴方の身体を自由に出来るのは『私』だけが持つ権利なのですからぁ。」
いつその様な権利が出来た。呆れ顔で二人を見ていると銀狼が自分の隣まで歩いてきた。
”少女よ、これ以上揉め事を起こすでない。この者らは何も知らぬ吾輩らに居食住を与えると言うのだ。協調性を身につけよ”
(衣食住与えるなんて一言も言ってない気がするんですが.........)
以外にも図々しい狼さんにジト目を向ける。そもそもこんなクソ狭いアパートにこれだけの人数が住める訳がないだろう。
「うふふ、飼い主さんに怒られてしまいましたねぇ『少女』さぁん♪」
煽るように言うディアーナ。ルキフェルも其れを真似、意地悪く口元を吊り上げ嗤う。
(腐ってるなぁ、この二人..........主に性格が)
すると少女は青年の腕へとしがみつきフンっと顔を背ける。どうやら皆に批判され拗ねた様だ。
「この人達嫌い。」ボソ
少女は青年にだけ聞こえる声で言う。青年は苦笑いを取るしか出来なかった。
「まぁ部屋はこの通りかなり狭い。好きに使ってくれていいと言いたいが、流石に違う場所に住んで貰うしかないかも。確か、隣の部屋が空き部屋だったと思うから明日にでも大家に連絡して見るよ。」
「はぁ!?じゃあ此奴らに出て行って貰ってよ!私達夫婦なんだか絶対に一緒に住むから!!」
『『はぁ!!?』』
天使と聖女がバンっと机を叩き、立ち上がる。そして少女を摘み上げ外へと放りだした。
バンバン
「ねぇ!ちょっと!!入れなさいよぉ!!!」
二人は満足気な表情で紅茶の入ったコップへと手をつける。
「ふぅ、これでうるさいのが居なくなりましたね。」
「えぇ、やはりいつも通りが落ち着きますねぇ♪」
お前ら本当は仲が良いだろう?とは言え、この二人はどうするべきか.........
バンバン
”隣の部屋が空いているのであろう?ならば我らは其方に身を寄せるとしよう。これを換金し、金にでもしてもらえれば助かる。もし足りぬのであらば、剣や鎧の類もあるが、どうだ?”
バンバン
「こ、これって金?」
一キロはあるであろう『金』だ。すぐさま携帯で取引値段を調べて見ると驚くべき結果が出てきた。一キロあたり6,982,000円の価格であるのだ。もちろん、手数料は引いてではあるが。
バンバン
「いやいや、十分に足りるよ!」
と言う訳で彼らの住居問題は解決した訳である。
バンバン
「ねぇ...........いつになったら入れてくれるのよぉ」ぐすん




