第八十九話『少女と瘴気』
灯篭階段の頂上に着くと赤色の鳥居が立てられており、その後ろにはどこか寂れた神社が存在していた。しかしそれよりも存在感を強く放つのは銀狼の狼、そして狼の横に立つ剣を握りしめた少女だった。
「あんた達、誰?」
強い殺気と共に此方を睨みつけて来る少女。
「ふ、言わなくともお分かりでしょうに________同族ですよ、私たちは」
ディアーナが杖を異空間から取り出し戦闘の構えを取る。
”吾輩の背後に控えよ、少女”
銀狼が少女の前に立ちディアーナを警戒する。
”汝ら、人ではないな”
狼は流暢に会話をして来るが口頭によるものではない。頭に直接、意思が流れ込んで来るような感覚だ。恐らくテレパスと言う奴だろう。
「天上の力を有し獣よ、我らは貴方の敵ではありません。」
ルキフェルは翼を広げ、自分は敵対の意思はないと言う。
”信じられぬな。既に貴様の仲間は牙を見せている。争うのだろう?”
「ディアーナ、矛を収めなさい。」
ディアーナは怪訝な表情へと顔を変えルキフェルへと問う。
「おかしいなぁ。さっきは戦う流れだったじゃないですかぁ♪戦いましょうよ、ね?ねぇええええ!!!!」バン!
足を地面に踏みつけると瘴気の大波が少女へと向け放たれた。ルキフェルは呆れた様子で聖女を見るが止めはしない。
”_________大地よ、在れ”
銀狼がそう口にすると瘴気は大地へと還る様に霧散した。それに驚くディアーナ。しかし戦闘狂であるディアーナはにんまりと意地の悪い笑みを浮かべる。
「瘴気の波が効かない。ならば、近接戦闘に移るまででぇす♪」
自己強化を己に施すと超高速で銀狼の背後へと回り込み杖を振り下ろした。
ガキンッ!!!!
しかし少女の剣により弾かれる。
「速いわね、あんた............けど、私の方が早い!!!!!」
少女の剣がディアーナの胴を裂く。
「ディアーナ!!!あぁ、くそ!!!!」
青年はディアーナの元へと飛び出す。しかしルキフェルにより地面へと組み伏せられた。
「貴方が出ても死ぬだけです。そこで大人しく見ていなさい。」
「けど、ディアーナが傷を負ったんだぞ!離せっ!!!」
少ない時間ではあるが一緒に暮らしている奴が致命傷を負っているのだ。助けにいかずにして何が隣人か。
(ジョン副団長..........仲間がいない私にとっての唯一の『味方』が貴方なのです。そして心配してくれたのも貴方だけだった。これ以上、彼を悲しませるべきではありませんね。)
瘴気により超速再生。少女は気味が悪いといった様子で銀狼の背後へと隠れる。
「______茶番はそこまでで良いでしょう、ディアーナ。」
「はい♪」
けろっとした表情で杖を異空間に戻すディアーナ。
”我輩らを図ったか、神の使いよ”
銀狼が放っていた殺気が消える。
”え、賢者様ぁ!?どういう事よ!”
少女は何が何だかといった顔だ。
”同胞よ、敵対の意思がない事は承知した。だが何故、汝はそこの邪神を討たぬ。其れは世に害悪を成す災厄の類だ”
「分かっています。ですが安心して下さい、調教済みです。」ニヤ
うわ、すっげぇ煽ってるよ。ディアーナなんて頰を膨らませてプルプルと震えてるもん。
「..............!えぇ、ジョン副団長に身も心も調教済みなんでぇす♡」
いつの間にか腕に引っ付くディアーナ。
「なっ!?ディアーナ!!」
今度はルキフェルが恨めしくディアーナを睨みつける。
(とは言え、相手さん方はディアーナを警戒してるな........)
まぁそれは当然か。突然襲い掛かる奴を信頼できる訳がない。
「ふふ、私も嫌われた物ですねぇ♪」
能天気にそんな事を言うディアーナはほっておき、ルキフェルへと視線を向けると何やら一人でボソボソと呟いていた。
「.......ジョン、貴方は私の所有物だ。なぜ、そんな簡単な事が分からないのでしょう。私だけがこの『人間』に触れて良いと言うのに、嘆かわしい。」ボソボソ
(う、うわぁ............)
天使は独占欲が強い。そしてたちが悪いのは本人が自覚していない事である。
「良い加減にして頂戴!!!」
銀狼の背後に隠れていた少女が姿を現し叫んだ。
「私はおばあちゃんの所に帰らないと行けないの!それにそもそも何で賢者様が生きてるのよ!死んだんじゃなかったの!?アレだけの険しい道を条件守る為に戻ってみれば命が尽きるので帰って良いぞってふっざけんじゃあないわよ!!そもそも此処は何処よ!其れにアンタ達は誰!!すっごい綺麗な人達だけど、まさか死の国とか言わないわよね!今直ぐに戻して!戻しなさい!!!!!」
ストレスからの怒りが炸裂する。
(銀狼と少女の主人公ってこう言う心情だったんだな........)
”お、落ち着くのだ、少じ「落ち着けるかバカーぁ!!」
クゥーンと情けない声で鳴く銀狼。青年はそれを見ていられず、纏わりつくディアーナを離し銀狼と少女の前に立つ。
「______ちょっと良いか?」
「何よ!!」
「はぁ、アンタらの現状を説明するから俺の家に行こう。もう夜明けも近いし、そろそろこの場を離れた方がいい。」
こんな巨大な狼を大衆に晒すわけにはいかない。
「銀狼さん、あんたは大きさとかって変化させることは出来るか?」
”問題ない”
(......試しに聞いて見たけど、出来るもんだな。)
銀狼は馬以上の長身を大型犬のサイズへと変化させてくれた。




