第八十八話『銀狼と少女と青年』
青年達が見ていた童話の話は『銀狼と少女』であった。
森の賢者、森神、賢狼、銀狼、森羅万象を司る者と数多の呼び名を持つ白銀の狼がいた。少女は病に苦しむ祖母を救う為に森の賢者が住むと言われる聖域へと旅立つ。森の賢者は人、動物、虫と全ての生き物が持つどんな病、怪我をも治すといわれている。反面、その力を利用しようとする者達には裁きの鉄槌を下すとも言われ、聖域には人は近寄ろうとしなかった。少女は険しい道程を得て森の賢者が住まう聖域の中心へと辿り着く。其処は緑豊かで蝶や花が咲き誇る神秘的な場所だったと言う。
”お願いです!私のおばあちゃんを助けて下さい!!”
少女は涙を流し、森の賢者へと縋りつく。森の賢者は少女に二つの条件を授け祖母を助ける事を約束した。
一つ、一月の間に祖母に別れを告げること。
二つ、聖域に必ず戻る事。
少女は迷う事無くその約束を承諾した。少女は急ぎ故郷へと帰還する。
”おばあちゃん、私はもう此処には戻って来る事は出来ないの”
祖母は涙を流し少女の手を離さなかった。だが少女は祖母の手を振りほどき聖域への道程へと走り出す。御免なさいと言う謝罪を何度も口に出しながら月夜へと向かい叫ぶ。
”おばあちゃんを..........助けて”
聖域へと足を踏み入れた少女は息を切らしながらも必死に言葉に出し祖母を救う様に懇願する。森の賢者は遠吠えを上げると聖域は木霊を上げる様に美しく白き光を上げ天空を照らした。そして森の賢者は少女へと告げる。祖母の病を取り除いたと。そして森の賢者は静かに首を地面へと垂らし少女を慈悲深く見た。自身の死が近い事を少女に伝える森の賢者。最後に生命を救う為に力を使えた事に感謝する。そして幸福を感じながら銀狼はゆっくりと眼を閉じるのであった。
______此処でこの童話は終わりを告げている。
様々な教本にも乗り、国語などのテスト問題にもよく多用される童話だ。教養ある者であれば一度は必ず眼を通した事があるだろう程の認知度を誇る。
「神性を纏う獣ですか。実に興味深い話ではありましたが、人の為に己の灯火を捨てるなど愚者の行いです。天上の力を宿す者ならば人の世に干渉するのではなく傍観しなければなりません。」
「私は賢狼さんよりも少女が愚者であると思うのですよねぇ。命を助けたとしても所詮は残り数年という短い命。不治の病ならば現実を受け止め祖母の死を受け入れなければならないのです。もっとも私なら、自身の手で救済をしますけどね、ふふ♪あ、私にもお願いしますね、」
ディアーナの意見に対し、若干ドン引きとして表情を見せる青年。その表情を察してか嬉しそうに赤面し悶る聖女。さらにドン引きしたのは言うまでもないことだろう。
「なぁ、何処にむかってるんだ?」
二人に連れられ、かれこれ二時間は移動している。既に時刻は深夜の二時と遅い時間で、正直な話帰りたかった。
「明日大学あるんだけど、先に帰っていい?」
違和感を確かに感じはしたが二人に任せればなんとかなるだろう。
「_____着きました。」
「ねぇ、聞いてる?」
長い灯篭階段。何処かの神社だろうか。
「さ、行きましょうか♪」
「此処で待ってるから二人で行ってきて下さい、どうぞ。」
二時間も深夜徘徊した挙句、こんなクソ長い神社の階段など上がれるか。
「ってうわぁ!!!引っ張るな!!!」
ルキフェルにより引き摺られる形で階段を上り始める。何とか離して貰い歩き始めるが、本当にきつい。
「_____ルキフェルさん、上に二人はいますね。」
「えぇ、貴方は人間の方の相手をしなさい。私は獣を相手します。」
えぇ............戦闘するんですか?絶対に下に残っていた方が良かったじゃないですかぁ!!とは言えず黙って後ろを歩く。
『一つ、申し上げましょう。私が死した場合はジョンを連れ離脱しなさい。もし逃げられないのであらば、その身を犠牲にしてでもジョンだけは逃がしなさい。』
『ふふ♪それを私に言いますかぁ、ルキフェルさぁん♪言われなくてもジョン副団長だけはこの身に変えてでも守ります。だから安心して下さい。』
(その為に私がこの世界に召喚されたのですから_____)
青年に聞こえないように思念を飛ばし会話をするルキフェルとディアーナ。彼らにとって青年こそがこの『現実世界』に置いて生きる糧であるのだ。故に行動する際は常に側に置いておきたかった。
「賢者様、どうやらお出でのようよ?」




