第八十五話『二人の心情』
「彼奴ら、勝手に乗りやがって......」
店員の女性がルキフェル達の美しさに見惚れている隙に観覧車へと乗り込みやがったのである。
「お一人様でしょーか?てうわ!?また美形!?」
「あーっと、さっき乗り込んだ二人の連れです。」
三人分のパスを買い、観覧車の受付をする店員へパスを見せると慌てたように確認を取ってくれた。
(頼むから観覧車内では大人しくしていてくれよ........)
青年の心配とは反対にルシファー達はと言うと観覧車内ではしゃいでいた。
「あぁ、此れが文明の進歩と言うものなのですねぇ♪大陸にこのような遊具があったのなら人々は世界を美しい物だと感じたでしょう!実に惜しい、欲しいですよぉルキフェルさん!!」
観覧車内部で上下左右に動くディアーナの影響か観覧車はかなり揺れていた。
「貴方が住まう世界に置いて、美しさを完全に消し去ったのは貴方の所為でしょう。」
新作の『Radiance』シリーズは一作目と二作目を複合している為、ルキフェルはディアーナ本来の未来をゲームをプレイする事により知っている。二作目は言うまでもないがディアーナが天界を滅ぼした後に世界を瘴気で覆った為、人間はほぼ死に絶えている。勿論、其処には大勢の子供達も含まれていたのだ。
「違いますよぉ!あれは私であって私ではありません。そもそも此処にいる私はマールスさんを除いた冒険者の方々しか殺害をしていないディアーナさんなのです。」
(はい、嘘でぇす♪ぜーいん、殺しましたぁ、ふふ♪)
此処にいる聖女は『史実』とは違う過去を歩み、この世界へと顕現している。だがその事は誰にも告げていない。
「ルキフェルさんだって神の敵対者、サタンと恐れられる以前の貴方でしょう?」
ディアーナもルキフェル同様に原作小説を読んだ為、堕天使の末路を知っている。
「私たちがこの世に降臨しなければそうなっていた事には変わりません。」
「確かにそうですが..........やはり心の何処かでは感じてしまうものです。」
その表情には何処か曇りが見え悲しい表情が伺えた。もちろん聖女は表情を作っているのだが。
(ディアーナ......貴方は)
そんなディアーナの心情を知るはずもないルキフェルは幾らか同情を感じてしまった。そして彼らが乗るゴンドラが地上へと着く。
「楽しみましょう、この世界を_____」
ディアーナは即座に立ち上がり外へと飛び出る。
「_______私たちはやっと『開放』されたのですから!」
「えぇ、そうですね。」
ルキフェルはその言葉を聞くと微笑みゴンドラから足を踏み出す。その二人の姿は鳥籠から開放された鳥たちの様だった。
「まさか一日中、テーマパークにいる事になるとは.....」
帰りの電車内にて腰を下ろす三人。ジェッ卜コースター、ワォータースライダーなどと一通りのアトラクションを楽しんだのだが二人は何度も気に入ったアトラクションをリピー卜する為に時間が掛かってしまった。まさか営業終了時間までいる事になるとは予想外である。
「私のお気に入りはメリーゴーランドでぇすねぇ♪」
「私はマグカップが好ましいです。」
満足そうに自分を挟み話に花を咲かせる二人。
「はぁ............アンタらが楽しめたのなら良かったよ。」
青年は本心からそう言うと二人は微笑を見せた。
「そういえば先程から気になっていたのですがぁそれは何ですかぁ?」
ディアーナが青年の膝の上に乗る袋を指差し問う。
「あぁ、二人に見せるのを忘れていたな。」
袋の中から出したのはテーマパーク内で購入した写真だ。
「こう言った場所には実は余り来た事がないんだ。それで何枚か記念に買ったんだよ。」
耳を赤くしながら言う青年。
「ジェッ卜コースターでの写真、イメージキャラとの写真、昼食時の写真、どれも良く取れてるだろ。」
どれも良く笑っている。原点である作中で見せる意味深な笑みなどではなく正真正銘の笑顔を見せ楽しんでいた。
「これが写真、ですか。とても良い文明です。」
ルキフェルが写真の一枚を取ると嬉しそうに写真を眺める。
(ほとんど展示されている写真がオレ達だった事には疑問には感じるが______)
「________今日は楽しかった。ありがとう。」
青年は照れた様子で頭を掻きながら言う。
(あぁ何でしょうか、この気持ちは......暖かくて心地が良い。)
ルキフェルは胸を抑える。ディアーナも同様に顔が緩み写真を抱きしめた。
(ふふ、まるで日だまりの様に暖かい。ジョン副団長、私は貴方のそんな表情を見る為に此処に召喚されたのでしょうね。だからこそ絶対に死なせはしません。)
そして解決しなければならない問題が一つある。
(王冠を巡る戦いは確かに重要です______ですが、私にとって最も警戒すべき事項はジョン副団長が私の世界へと召喚された理由です。)
現実世界に置いて青年は聖女共に天使が側にいる。故に危険はまず無い。だが、異世界に彼が召喚されれば話は別になってくる。側にいられなければジョン副団長を守れない。それが歯痒くどうしようもなく悔しい。
「また来ましょう。」
そう。絶対にこの幸せを奪わせはしない。やっと出会えたのだから。
「おう、また3人で来よう。」
約束を結ぶと丁度、降りる駅と着いた。
「家に帰るか。」
互いに顔を合わせ苦笑をすると、三人は歩き出す。
「「_____はい!」」




