第八十二話『天使は嫉妬する』
朝の報道で住人達が無事に自宅へと戻っている事が放送された。
「...........眠い。」
青年はテレビへと視線を向けながらウトウトとする。一睡もしていないのだ。
「寝ないのですか?」
「うふふ、眠って良いのですよぉ?」
青年を中心に三人はソファーへと座りテレビを見ているのだが距離が異様に近い。
「眠れないんだよ、アンタらがくっついて離れないから!」
昨晩、べッドへと横になり眠りへと着こうとしたのだが、ディアーナが隣へと寝転がり自分をじっと見てくる所為か眠りに就く事が出来なかった。
「あらあらぁ〜気にしなくても良いですのにぃ♪」
「気にするわ!それにルキフェル、お前もだ!!」
そしてルキフェルは彼女が変な行動を起こさない様にと監視の名目でディアーナとは反対側へと横になるのだ。一人用の狭いべッドを中心に三人で寝転がると言う状態が昨晩続いた為、ソファーで座る事にしたのだが、状況は余り変わらなかった。むしろ抱き合っていると表現した方が正しい程に密着されている。
(くそ......眠い..........我慢が出来ない...........)
青年の瞼が閉じると静かに吐息を立てた。ディアーナは愛おしそうにそれを眺めると青年の肩に自分の頭を乗せた。
「何をしているのですか、貴方は?」
反対側に座るルキフェルはギロリとディアーナを睨みつける。ディアーナはしたり顔でニヤけると青年の身体へと顔をこすりつけた。
「やめなさい!!」
ルキフェルが怒声を上げる。
「うふふ、私が何をしようがぁ、ルキフェルさんには関係ないじゃあないですかぁ?」
煽る様に言うディアーナに殺意を抱くルキフェル。
「その人間は私『御使』です。許可なく触れる事は私が許しません。」
聖槍を具現化させ、ディアーナへと向ける。だがディアーナは呆れる様にルキフェルを見た。
「羨ましいのなら、貴方もすればよろしいでしょうに?」
(本当は嫌ですけど、これ以上逆鱗に触れて殺される訳にも行きませんし____)
「う、羨ま...違います!!私は私以外の者がジョンにべたべたと触れられるのが.......」
ルキフェルは言葉に詰まり、聖槍を手から離した。聖槍は床へと落ちる前に異空間へと消える。
(私は今、何を口にしようと.....)
ディアーナは欠伸をしながらルキフェルへと言葉を送る。
「はぁ____その感じている感情は『嫉妬』と言うのですよぉ、ルキフェルさん。」
ルキフェルは静かに青年の隣へと座り直し、ディアーナと同じ行動をとり始める。
「此れは嫉妬ではありません。そう、此れはジョンを貴方から守るゆえの行動なのです。」
青年の肩へと頭を起き擦り付けるとルキフェルは心底嬉しそうに微笑を見せた。
(_____本当に奥手で純粋なのですね。反応がもう見ていてイジリがい......おホン、愉快でぇす♪)
ディアーナはチラリとそれを見ると同じく微笑み、二人も青年同様に静かに眠りへとつくのだった。
_____眼を覚ませば自分の両肩を枕変わりにする‘天使’と‘瘴気’がいた。
(こいつら、本当に何してんだか。)
起こさない様に二人をべッドへと運び晩食の為の食材を買うために家を出る事にする。冷蔵庫に残っている具材が少々心もとないのだ。
「食費代かぁ.....これからどうしよう。」
住宅街を歩きながら最寄りのスーパーを目指す。日は既に沈み掛けて下り電柱からは光が照らし出されていた。
「_____ルキフェル?」
角を曲がろとしたところ天使が立っていた。それに以前、買い物をした最に買った『Fallen Angel』と書かれたシャツを着用している。
「主人に一言もなく外出とは良い身分ですね、ジョン。今後はどこに行くにしても私に一言告げてから出立しなさい。私も同行するのですから。」
「誰が主人だ、誰が!てかアンタは俺の親か!..............ディアーナはどうしたんだ?」
ルキフェルの周りにディアーナがいない事に心配を感じる。まさか一人あいつを置いてきたのか?
「あの者なら____後ろにいるではありませんか。」
自分の後ろを見るルキフェルにため息を吐きつつ後ろを振り向くと満遍の笑みを浮かべたディアーナがいた。
「こんばんは、ジョン副団長。」
青年は前へと振り返りルキフェルへと問う。
「アンタらいつからいた?」
二人はクスクスと笑う。
「「始めからですが?」」
ルキフェルとディアーナは同時に答える。
(怖いんですけど.............)
「.....はぁ、騒ぎだけは起こさないでくれよ、頼むから。」
青年は諦め三人でスーパへと目指すことにする。
「いらっしゃいませ〜。ご試食の方はいかがでしょーか?」
スーパへと着くと店員がウインナーの試食販売をしていた。二人は即座に試食品を受け取り口へと入れる。
「ん〜まいですぅ〜!」
「美味!正に美味です!」
嬉しそうにはしゃぐ二人に青年も思わず笑みが出る。すると店員は二人に対し商品の購入を進めた。
「お客様方、是非とも今晩のおかずにお一つどうですか?お弁当にも合いますし、調理にもさほど時間は取りません!何よりも電子レンジをお使い温めるだけでも食べられますよ!」
ルキフェルは眼を輝かせ口を開く。
「全部貰いまs「おい!」
青年は急いで駆けつけルキフェルが言おうとした事を止める。
「おいひ〜でふよぉ〜」
試食をひたすら口へと入れて行くディアーナ。
「お前は食べるか喋るかどっちかにしろ!」
(あぁ~あもぅ!恥ずかしいぃ!!!)
ウインナーの袋を一つ店員から頂き、二人を引きずり野菜コーナーへと行く。
「美味しそうな果実ですね。」
「食べるなよ。」
「最近それテレビで見ましたよ。押すな押すなですよね?」
「ちゃうわ!!」
ルキフェルへと先に注意をしておく。だが、もう一人は手遅れだった。
「_____ってお前は何をしておるかぁ!!」
林檎を齧るディアーナへとチョップを入れる。
「痛いじゃあないですかぁ、もぅ!」ぷんぷん
「『Radiance』シリーズって確かどの作品でも通貨の文化があった筈だよな。てかそもそもアンタ俺たちに会う前から召喚されてたよな!!」
頬を釣り上げながら視線を背けるディアーナ。
「え、えぇ?何の事でしょうかぁ?」
(あぁ、ジョン副団長の困った顔_____素敵ぃ♡)
(.........こいつ、ワザと食べたな。)
青年は食べかけの林檎を取り上げ籠へと入れる。
「頼むから余り目立った行動は控えてくれ。唯でさえ、容姿の所為でオレ達は目立つんだから。」
青年の言う通りスーパーにいる客、店員達はルキフェル達へとかなりの視線を向けていた。それも其のはずだ。美形三人が好奇心旺盛に店内ではしゃいでいるからである。
「_______よ、良し、此れで必要な食材がそろった!」
二人を引きずりレジへと向かう。
_________________
____________
______
「_____今晩の晩餐は何ですか?」
スーパーを出ると開口一番にルキフェルは青年に聞いた。
「カレーかな。おっと、忘れる前に渡して置くよ。」
袋からチョコレートを出し二人へと渡す。青年は見本を見せるように紙袋を取り外しチョコレートを口の中へと入れた。
「晩飯までにまだ時間はあるし、食ってみろよ。甘くて美味しいぞ?」
二人は即座に紙袋を破き口へとチョコレートを入れた。
「なっ、何ですかぁ此れは!?甘いですよぉ!!」
興奮した様にくるくると回るディアーナ。どうやらラディアンスの世界にはチョコレートはなかったようだ。
「さ、戻りますよジョン。」
スーパーへと戻ろうとするルキフェル。相当美味しかったのだろう。
「まぁ落ち着け、ルキフェル。」
ルキフェルを掴みそれを止める。
「それでは明日、同じ物を私に貢ぎなさい。」
それで妥協してやると言わんばかりの顔をする天使様。
「あ、あの!私もお願いしますぅ........」
ディアーナもルシファーに同調しチョコレートが欲しいと恥ずかしげに言う。ちょっと可愛い........言葉にはしないけどもね。




