第七十五話『不気味な女』
「ふぅ、誠に美味でした。再度、あのお店へ訪れる事を推奨します。」
電車の席にて満足気にそう口にするルキフェル。
(随分と嬉しそうだな。)
車内には二人しかいなく夕陽が車内を照らす。
「あぁまた行こう、とは言いたいが流石に次回は注文する品を減らしてくれよ。」
ルキフェルは何故減らさなければならないと言う疑問の表情を浮かべる。
「アンタにはまず、通貨の概念を説明しなきゃならんな。」
財布の残金を目にため息を吐く。
「___________やはり主が創りし自然は美しい。」
天使は身体を後ろへと向け夕陽に照らされる景色を見る。海が見え地平線の彼方まで夕陽が続く景色が車内から見えるのだ。
「あぁそうだな。」
ルキフェルの表情を察してか同様に景色へと視線を移し同意する。
「あ......」
そうして景色を見ているとトンネル内部へと入った。ルキフェルはどこか悲しげな表情を覗かせると、前へと向き直った。
「己の力を使わず、物を移動させる電車と言う乗り物は実に興味深く便利性に優れています。」
「文明の進歩が生んだ産物だな。」
「然り。ですが逆を返せば此れは人としては衰退を意味します。」
「その心は?」
「個が力を使わずに楽をしているのです。堕落で無いとして何と言うのです?」
「確かにその通りだが肉体面に置いての進化は完成されている。徒歩での移動手段には限界があるだろう?」
ルキフェルは怪訝な顔をする。
「この世界の人間を見る限り、エデンの両名よりも格段に人としての構造が脆弱だと感じますが。」
「まぁ、この世界では猿人から人は進化されたと言われてるからなぁ。流石に神直々に造られた人類には劣るだろ。」
その台詞と共にルキフェルは立ち上がり力説を始めた。
「猿人などから人は生まれはしないッ!!!」
などと力説し始める。更には初めから種の運命は決まっているなどとも語り始めた。
「そ、そろそろ着くな。」
ルキフェルは淡々と自分に対しどう人類が誕生したのかを力強く説明してくれた。けれども流石に話を切り上げる事にする。正直な話、聞いているのが面倒くなった。周りの目が痛い。
プシュー
駅の名がアナウンスされ扉が開くと二人は立ち上がり電車を降りる。
(一日一緒に居て見て分かったけど........ルキフェルって意外とお喋り奴なんだな。)
既に日は沈み住宅街を歩く二人。
「聞いていますか!」
「ん?あ、あぁ、ダーウィンの進化論は認めないだっけ?」
こいつは何時まで人類の誕生について審議するつもりなのか。
「違いませんが今は違います。私は今夜の食事についての意見を聞いているのです!」
人の話を聞かないと裁きますよ!と頬を膨らませ怒る。
「そうさな、冷蔵庫に野菜も残ってるし野菜炒めとお米はどうだ?」
そんなルキフェルに対し優しく微笑を浮かべ、今夜の食事について語る。
「ふむ、野菜ですか......楽しみです!」
元気な返事な事だと、たわいもない会話をしているとアパートへと差し掛かる十字路へと着いた。
(取り敢えずは何も起きなくて良かった。一応、こいつは天使の指揮官、親玉だからな。世界だって壊そうと思えば簡単に破壊出来るだろうし。)
ボオオおおおおお!!!!
「一体、何が..............ルキフェル?」
ルキフェルと共に十字路を曲がり何事も無くアパートへと辿り着く筈だった。
「これは......」
だが、アパートは半壊し爆炎に包まれていた。
「離れた場所に避難しなさい。」
ルキフェルは突然前に立ち天使の翼を広げる。
【ふふ、見ぃつけたぁ♪】
半壊したアパートの中心にて不気味に笑い、首を傾げる女が立つ。




