第七十四話『天使と店員』
ルキフェルは様付で無いことに不満を感じたがルキルキちゃんよりはマシだと感じ呼び捨ての許可を与えることにした。
「よし_____そろそろと服を買おう。」
「私は別に必要ないと.....「頼む。ルキフェルは可憐で美人だから色々な外装をして欲しいんだ。」...はぁ、仕方ありませんね。其処まで言うのなら人の作りし装束を纏う事にしましょう。」
この天使は案外扱いやすいのかも知れない。
「お客様方、探し物があるのであればどうぞお申しつけ下さい。」
店長の名札を胸につけた店員が自分達へと話を掛けてくる。その後ろには先程、スタッフルームに逃げる様に戻った女店員の姿があった。
「人にしては良き心掛けです。本来、天使とは人に奉仕をするのではなくこのように奉仕される立場に在るのが自然なのです。それを自ら心掛けるとは実に気分がいい。天使の加護を授けましょう。」
店長は困った顔で加護とは?と疑問の表情を見せる。
「人よ、前へ。」
天使は加護を与える為に手を前へと翳す。
(この堕天使は気分次第で人に加護を授けるのか.......)
「いやいや待て待て!」
青年は頭を抱え天使へと耳打ちをする。
「あんまり目立った行動は控えてくれ。それと加護は無しだ。」ボソ
天使は表情を厶ッとさせ青年の注意を無視しようとするが、青年がある提案を申し出た。
「何故私が貴方の提案を受け入れなければ「今朝の料理が気に入ったのなら、明日も作」契約は守りなさい。」
その申し出に台詞を止め彼の顔へと近づき眼を合わせる。
「どうやら嘘はついていないようですね。貴方がそうまでして言うのならば加護の件は白紙にしましょう。それと、これは決っして物欲に釣られたと言う訳では無いので勘違いをしないように。」
(.....)
何はともあれ一般人への加護を抑える事が出来た事に安堵する。
「それじゃあお言葉に甘えてこの人に合う流行りの女性服と男性服を上下セッ卜で見繕って貰えませんか。」
性別が無い天使への配慮の為、男女両方のペアを買う事にする。すると先程までおどおどと店長の後ろへと隠れていた店員が店長の横に立ちルキフェルへと質問をした。
「あ、あの、つかぬ事をお聞きしますが、お客様は_______女性なのですか?それとも男性なのですか?」
女店員はルキフェルに対しおどおどとした様子で聞く。書籍には天使には性別はないと記述されている。しかし、ルキフェル自身の解答も気になる。黙って天使の解答を聞くことにしよう。
「天使はいかな性別にも該当しません。唯.........つがいとなる相手が現れた場合のみ、肉体は影響されます。ですから男性体とも女性体ともなれる訳です。」
要約するに肉体は相手に合わせ変化をすると言う事だ。店員は混乱した様な表情を浮かべるが、何かに気づいた様に手をポンとさせキラキラした視線でルキフェルと自分を見てきた。
「そ、それって性別は関係ないって意味ですよね?」はぁはぁ
青年は怪訝な顔を女店員へと向ける。
「えぇ、我ら天使は性別などと言う概念に捉われません。」
女店員はルシファーの解に鼻血を流す。
「愚腐腐.........キタコレ!!( ゚∀ ゚)キタコレ!!」
「貴方はっ、また!申し訳ありません!直ちにお客様に合った衣装の方をお持ちするので少々お待ち下さい。」
店長は何かを察っしたのか女店員を連れスタッフルームへと戻って行った。
「やはり私に新たな衣は必要ありませんね。此れこそが我ら天使の正装。ましてや人に捌かれた獣の皮を纏うなど屈辱以外に何を感じろと言うのですか。」
ルキフェルはこう言うが冗談ではない。此方が周囲の視線に晒されて屈辱を感じるのだ。ただでさえ注目を浴びると言うのにその格好では更に私達を見て下さいと言っているようなものだ。
「此れからは人と接する機会が増えるんだ。その格好では目立ちすぎるしアンタは綺麗だから色々な格好をしたらいい。」
「論点がズレている気はしますが........綺麗と言う褒め言葉に敢えて乗せられるとしましょう。」
少し嬉しそうな表情をするルシファーに対し微笑む。やはりこの堕天使はちょろいのかも知れない。
「お待たせしました!」
今回は店長のみが現れ服を自分達へと渡す。青年はそれを受け取ると天使へと渡した。
「この衣に着替えれば良いのですね?」
「ああ、だが此処では着替えてくれるなよ。更衣室という脱衣所があるからな。」
「更衣室は此方となります。」
ルキフェルは更衣室へと案内される。それを見届けるとその場で待つ事にした。それから暫くすると自分の元へとルキフェルは戻って来た。
「着替えましたよ。」
カッターシャツの上に白布のセーターを着用、そして白色のスキニージーンズを着ていた。先に男性用の服を選んだのだろう。
「似合ってるな。」
素直に感想を伝える。周りの女性客はルシファーの衣装について絶賛の声を出していた。
「褒められる事に対しては少なからず喜びを感じます。ですがやはりこの衣装は窮屈だ。やはり私には正装である天の衣を纏った方が効率がいい。」
頰をボリボリと掻き女性服の方を指す。
「ならそっちはどうなんだ?」
店長に渡されたであろうもう一つの服を手に取り更衣室へと戻っていく。
「多少は動き易くはなりましたが、やはり天の衣には勝らない。」
女性服を着用したルキフェルはかなり魅力的に見えた。今度は男性客の方が此方へと視線をチラチラと向ける。此れが男女観の違いと言う物だろう。
「まぁ似合ってるし、多少は我慢をしてくれ。」
服の購入を済ませるとその店を後にする。店長と店員は執拗にポイントカードの発行を進めて着たのだが時間が惜しいため、それを断った。ちなみにルキフェルは服装を天使服へと戻していた。
(何のために買ったと思ってんだ.......)
青年は諦め腕時計を確認する。
「もう15時か。腹も減ったし何か食べるか?」
「天使には食事は必要ありませんが、人である貴方には必要な行為である以上食事を取らないわけには行けませんね。」
と言いつつもルキフェルの足取りは青年よりも軽い物だった。
「取り敢えず良さそうなレストランに入ったけど、たくさんメニューがあるな。どれにする?」
メニューを興味深そうに見るルキフェルは一番上の食べ者を指した。
「此処から此処まで全てでお願いします。」
一番最初のメニューから一番下のメニューを指でなぞる天使に青年はため息をつく。
「そんなに食いきれないだろーが!」
「与えられし供物を残すは罪。ですが、飢えた獣へと分け与える事はその生命を助ける事になりましょう。」
要約するに残したらその辺の動物にあげれば良いよね?と言っているのだ。
「駄目だ。選ぶなら一つにしてくれ。オレの財布にも限界と言う物はある。」
「財布?何を言っているのですか。どんな物に対しても有限があるのは当然でしょう。」
現代の常識を理解しない天使に頭痛を抱える。そして書物に書かれていた『ある』設定を思い出す。
「何で情報把握を使わない?」
本来、最上級天使である熾天使には地上、世界の概念を理解する情報把握能力を有している。言ってしまえば世界へと下った瞬間に力を行使してしまえば現在世界にある知識、概念を全て吸収出来る能力である。
「地上が天使の管理を必要とするのであれば私は行使をするでしょう。ですがこの世にはそれが必要ない。私は物語の一幻想、そしてこの世界に置いて最後の時まで生きる事となるでしょう。」
悲観に満ちた表情をするルキフェル。
「ならば原初の時より全てを理解してしまうのは実に惜しい。倦怠を生むのならばアザゼルの様に自身の心情と言う物を優先させ、少しずつと肌で感じて行きたいのです。」
「それは........戻れる可能性が有ってもか?」
ルキフェルは小さく微笑むと視線を窓より見える空へと移す。
「私は既に解を得てしまった..........主無きこの世では目的を遂行する意義も、願望も無い。ただ、静寂の中にて朽ちていく....それだけが私に残された救いなのです。」
青年は感じた。ルキフェルの表情、それは物語の最期に見せた表情と酷く酷似していると。
「そうか。ならオレはその静寂に少しばかり花を添えさせて貰うよ。人の寿命は有限だからな。俺が死ぬまでは隣人として、暇な思いはさせないと約束しよう。」
ルキフェルは驚いた表情を浮かべると小さく笑った。
「ふふ、やはり貴方は可笑しな人間だ。」




