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第六十六話『 女神と綾女』

この世界が転生後でない事は分かった。いや、正確には俺が存在した世界ではない。取り敢えず女神を連れ、我が家へと帰宅しようとしたのだが、その場所が見知らぬアパートと化していたのだ。


「此処はどうやら私達が知るどの世界でもないようですね。」


市役所へとももちろん確認へと行ったが、この世界には『綾小路綾女』という人物は存在しなかった。ニートにあるまじき行動力ではあるとは自覚している。しかし、住む場所も金もないとなれば行動を起こすしかないだろう。


「うぅ_____」


疲れた。本当に疲れた。疲労が溜まる毎日。もっとも自分が動かざらなければ行けない理由は他にもある。そう、共にこの世界へと転生したクソ女神様だ。


「綾女ぇ、早くご飯の準備をしなさい。」


最悪な事に働かないニートと化しやがった。まるでかつての俺を見ているような感覚である。俺と違う点があるとすれば彼女が容姿に優れている事くらいだろう。


「いい加減にしろよ、お前。」


「黙りなさい、ニート。」


バイトを始め安いぼろアパートにて何とか二人暮らしが出来ている状態。転生もクソもない生活である。


「”元”だ。てかお前だってニートだろうが今は!働いてくれ!生活がカツカツなのは知ってんだろ!」


毎日ぐうたらとテレビかネットサーフィンをしているだけのクソ女神。起床時間は昼の一時、就寝時間は深夜4時である。ふざけているのか?


「女神である私が下界で労働?ぶふ、面白い冗談ですね、綾女。」


このクソアマは冗談で俺がこんな事を言っていると思っているのか。


「ふー.............ふう」


女を殴りたいと本気で思ったのは生まれて初めてだが........抑えないとな。


「何ですか、その目は?」


女神なんて役職はこの世界では通じない。ましてや天界への帰還も出来ない。完全隔絶された一女神などただの美人でしかない。いや、より詳細に言うのならば”残念”美人だろう。


「女神って神聖で尊敬の念を持って接する存在であるべきじゃなかったかなぁと思ってな。」


シャツとパンティー一丁の女神の姿なんか見たくなかった。其れと腹を掻くな。オヤジ臭い。


「ふふ、綾女も私と言う存在の大きさを理解する様になって来ましたねぇ♩」


一切褒めてなどいない。


(皮肉を言ったつもりが通じないし、もうやだこの女神。)


「なぁ、焼肉とか寿司とかも食いたいだろう?なら働こうぜ。美人なんだからモデル業でも何でもすれば天下を目指す事は出来るって。」


最初の数日は良かった。協力して炊事もこなしていたし、仕事を手に入れるために女神の奇跡とやらを使ってくれた。


「住民登録などの書類の偽造、履歴書などの工作、辻褄を合わす為に私は協力したではありませんか。」


たしかにこの女神がいなければ俺が職につける事はなかっただろう。


(しかし、だ。)

「なぁ、職につけたのは良いが、もう少し良い仕事には出来なかったのか?


職と言ってもバイトだ。給料なんてたかが知れてる。


「アラサー間際でバイト歴がない貴方を採用してくれる会社が存在すると?」


「うっ」グサ


痛いところを突く。寧ろ抉ってるまである。


(違う世界に来たまではいい____だけどバイトって)


「それに転生じゃないよね、この身体。どう見ても特典もクソも無いんだけど。」


三十路間際のおっさんの肉体のままである。スキルも伝説の武器もない。ただのおっさんである。


「転生みたいなものでしょう?文句を言わないで働きなさい。」


決して此れを転生とは呼ばない。死体への鞭打ちだ。


(なんだよ、この生活は。)


こき使われる毎日。反抗しようものなら女神に力でねじ伏せられるし。


「女神である私に構ってもらえるだけでも幸せだと思いなさい、ニート。」


(構ってもらえる?構ってやってるんだろうが!!)


何だろう。最初は美人だからドキドキしてたけど、此処数ヶ月一緒に暮らして分かったがこの女神に性的なアレを感じる事はない。寧ろ憎しみが増して行く一方だ。


「はぁ、感謝感謝。」


ため息を吐き、晩飯を作る為にキッチンへと移動する。


(_____________王冠を巡る戦争、かぁ。)


『王冠戦争(KingsWar)』などと言う意味が分からないものに巻き込まれた所為で転生はおじゃんとなってしまった。


六大州(六大陸)、即ち世界を地理学的に六つの州に区分したものの総称。アジア州 ーヨーロッパ州 ーアフリカ州 ー北アメリカ州 ー南アメリカ州 ーオセアニア(オーストラリア)州________各州にて百対の『創作物』が召喚される。そして各州は五人になるまで人数を減らさなければならないらしい。


(そして俺たちが召喚されたのはアジア州内。戦闘力皆無の俺は必然と女神に頼るしかない。)


因みにこの世界に来てから毎夜零時に脳へと情報が送られて来る。相手の位置情報、そしてその日に死んだ創作物の人数などを事細かくとである。


「綾女、ゲーム買ってください。」


其れなのに女神ときたらやる気を出すどころか衰退して行く始末。このままでは闘う前に敗北してしまうのではないかと不安になる。


「そんなお金はウチにはありません。」


「買ってください!」


「ダメなものはダメです。」


「買ってくれなきゃ嫌だぁ!」


「ダメです。」


「嫌です!嫌です!嫌です!」


子供の様に駄々をこねるな。


「何度行ったら分かるんだ、ダメなものはダメなんだ。」


「うぅ......ほら、女神の裸を見せてあげますよ?」チラ


シャツから胸元を見せる女神。初期の俺ならば喜んだだろう。


「くっさ」


美人だし身体も綺麗なのだろう。だけど何故だろう、その言葉が自然と出てしまった。


「______は?いい度胸ですね、綾女。」


シャツを脱ぎ上半身裸になる。


「なぁ!?お前、何してんだ!!」


慌てる自分を見てニヤニヤとした女神が近づいて来る。そして無理やりとその場へと押し倒され、身体を密着させられる。


「は、離れろ!!スケベ女神!!」


女神はご満悦の表情を見せると立ち上がり、此方を見下す。いや、性格には自分の股間部を見て鼻を鳴らした。


「ぷ、本当にスケベなのは何方なのでしょうね。」


すいません______勃◯はしました。此れは男故の性なのでしょうがないでしょうーが。


「まぁ、当然の反応ですよね。」


そのままパンティー一丁のまま横になりテレビを再視聴する女神に頭を抱える。それと同時にどうしようもない敗北感を感じた。


(俺のバカ息子、何で反応すんだよ)


女神のドヤ顔が無性にイラつく。


「せめてシャツは着ろ、クソ女神!」


脱いだシャツを女神へと投げつける。この程度しか言い返せない自分が無性に嫌いだ。


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