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第六十一話『姫様と宰相』

「案外と容易く行かせてくれるんだな。」


城の方角へと歩いて行く不老の魔女。宰相は其れに目をくれず自分に目を向けていた。


「.............姫」


遡ること60年前_____


「姫様!その様なはしたない格好で庭にお出になってはなりませぬ!」


_______宰相の幼少期は姫の付き人であった。


「付き人よ!姫は姫がしたいことをする!何人たりとて姫を縛る事は出来ぬ!」


自由奔放な彼女に振り回される毎日。


「もぅ姫様ってばぁ!!」


下着姿で庭を威風堂々と凱旋する我侭姫。さりとて毎日は波乱万丈で愉快な日々だった。


「______付き人ぉ!」


姫様は必ず寝る前にある絵本を読み聞かせるように命じられていた。


「聖域のお話は心踊るな!姫も大人になったら是非とも行ってみたい!」


魑魅魍魎や異種人が蔓延る危険領域。立ち入る事が禁じられている魔境。


「姫様、危険ですのでお止めになったほうが宜しいかと........」


「黙れ!付き人は姫に付従えば良いのだ!」


姫様の笑顔はとても眩く、無茶苦茶な願望を掲げようとも必ずやお供として着いていく覚悟はあった。


「姫様ッ!僕も一緒に行きます!」


姫様のお父上がお亡くなりになり、完全に後ろ盾が失くなった彼女は当時の宰相と貴族派により王国の追放を命じられた。


「姫を追い出すだと.......ふざけるなよ、能無し共.........必ずや姫は戻ってくるぞ」


憎悪の籠もった表情で城を睨みつける姫様。


「付き人よ、此処までで良い。これ迄の忠義、ご苦労であった。これからはお前の好きなように生きればよい。」


「僕の命は姫様のものです。この命が尽きるその時まで、僕は一生姫様にお使いしていくと決めております。」


何処か困ったような笑みを浮かべると付き人の頭を撫でた。


「そうか、其れは........」


何かをいい掛けたところで言葉が止まる。


「あぁそうだ付き人よ、王国を出る前に姫は城下町で流行っていると言われる菓子があっただろう。其れを買ってきてくれまいか?」


当時の私は王国を追い出された身でありながらも姫様らしいと呑気な事を考えていた。


「直ぐに買ってきます!」


姫様の希望に応える為に身体が動き出す。


「あぁ、姫は此処で待っているよ__________また会おう。」


噴水の近くにある椅子へと腰掛け此方へと姫は手をパタパタと振る。



「__________姫様?」



菓子の入った袋が地面に落ちる。帰ってきた時には既に姫様の姿は何処にもいなかったのだ。


「うぅ.......姫様ぁ!姫様ぁ!」


三日三晩探し回り続けた。けれど遂には姫様を見つけ出すことは叶わなかった。


「何故.........私を」


黒騎士へ向ける視線は怒りと殺意に溢れる。


「貴様を殺し、『不老の魔女』を殺害する。」


そうすれば『僕』が『私』として終われるのだから。


「__________はぁああああああああああ!!!」


宰相を殺すため、剣を幾度と振りかぶる。されど剣の刃先が当たる事はない。


「バカめ!単純に武器を振るうだけではこの宰相、傷をつける事など不可能!」ブン


「ぐはっ!」


杖による打撃が顔面を襲う。黒騎士はその場へと転がり宰相を見上げる。


(くっ、あの老体の何処に.......)


「最小限の動きとは言え、良くその死に体で避けられるもんだ。」


いや、可能性の一つを見落としていた。


「よく口が回る男だ。その巧妙な口先で不老の魔女を籠絡したのかね?」


「なんだ爺さん、嫉妬してるのか?」


黒騎士は立ち上がりすかさず剣を投げつける。


「________剣よ!」


しかし投げつけた剣は宰相の手元へと収まるように威力を減速させた。


「くっ、魔法か。」


やはり魔法は厄介だ。無機物に対しての絶対隷属権を有している為、支配は自由自在。


「魔法の先達者として一つだけ教えてやる。人と人に置ける魂の同調は完全に繋がなくとも良いのだ。もっとも魔法を完璧に扱えぬ小僧には分からぬ話だろうがな。」


要約するに標準を合わせ此方の意識を多少阻害させたり、振りかぶる剣へと魂を同調させ軌道をずらし回避する事が出来ると言う事だ。


(俺にはまだそこ迄の技量はない。)


ならば相手の穴をついていくしかない。魔法戦は恐らく勝ちの目はない。


(その為には奴の集中を削ぐ必要があるか。)


「お前が不老の魔女の気持ちが分からないように俺には魔法への知識、そして経験が欠落している。」


「随分と知った様な口を聞く。」


食いついたのはどっちだ?不老の魔女についてか、それとも魔法に対しての誇りか。


「知っているさ。彼女と共に時間を過ごしたのだからな。」


「ッ............」


あの宰相は不老の魔女に何かしらの感情を抱いている。尊敬、嫉妬、劣情、殺意、後悔。


「彼女の隣にいるのは”俺”だ。」


何れかは知らないが、奴の隙をつくなら其処だろう。


「アンタじゃあない。」


宰相の周りの瓦礫は腐敗するように塵へと消えていく。


「_______貴様ぁ!!」


杖と投げつけた剣の二刀にて襲い掛かる。


(同調_______)


不老の魔女から貰っていた巨大木の種をポケットから取り出し、射


程を合わせる。


「死ねぇええ!!!」


宰相の刃が眼前へと迫ると同時に手元から超速度で巨大木の種が宰相へと向かい成長していく。


「ぐっああ!!!」


宰相は巨大木に押され城の城壁へと身体をぶつけた。


「くぶっ.........私は.........」


朦朧とする意識の中、手を城へと翳す。


「負けない.........」


(姫様の......隣に立つ為だけに.....)


「.......生きてきたぁ!!」


巨大木に亀裂が入る。そして粉々に四方へと弾け飛び血塗れの姿で現れる。


「私の.......僕の.......力を」


証明する迄は死んでも死にきれない。


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