第六十話『一人にはさせない』
「愚姉め........やってくれたな」
随分と派手にやってくれたのものだ。
「長きに渡り築いてきた王国が.......」
宰相は驚愕と失意に顔を歪める。王国の西側は完全に平坦地と化し、いつ隣国に襲われてもおかしくない状況だ。そして城下町の一部が老朽化し、完全に倒壊地となっている。
「宰相よ、杖をとり________我が愚姉を討て。」
その言葉を聞き、正気を取り戻したのか顔を引き締める。
「魔法の行使を公共の場で開帳しても宜しい、という事ですな.........王よ。」
「構わぬ。奴を討伐し王国の存亡へと繋げるのだ。さもなくば我らが国は滅びの道を辿るしかない。」
玉座へと腰を下ろし杖を虚空から取り出す。
「王は座して待つのみ。宰相よ、どうか死んでくれるなよ。」
宰相は一礼をすると玉間を去る。
「__________永き繁栄故に対価を払う時が来たか。」
「どうした、浮かぬ顔をして?気分が優れぬなら明日にしても良いのだぞ?」
心配とした様子で顔を覗き込んで来る。
「いや、俺は大丈夫だよ。」
この世界から次の世界へと移行する方法_______其れは一体何だ?
「行こう______」
カミィルもブランツェも死んだ今、この世界に何がある?
「__________『不老の魔女』」
王国を潰しカミーユの手向けとする。此れは決定事項ではあるがその次は一体何をすればいい。
「少年よ.........何時までも姫といてくれるな?」
神妙な面持ちで聞いてくる。
「いきなりどうしたんだ?」
「いやなに、そなたが突然と消えてしまいそうな気がしてな。」
悲しみを含んだ表情を見せる不老の魔女。
(ブランチェ.......俺にそんな顔を見せないでくれ。)
その顔が見ていられなくて彼女を強く抱きしめる。
「何処にもいかない_______」
そう、もう絶対に一人にはさせないと決めたんだ。
「何処にも行かないよ、ブランチェ。」
俺が必ず側にいる。
「だから、ブランツェも俺から離れないで欲しい。」
この繋がりは決して手放しはしない。
「あぁ、姫は絶対にジョンを離さない。この魂が朽ちようともその繋がりは決してな。」
不老の魔女も強く抱きしめ返す。彼と同じ気持ちを内に秘めながら。
戦う理由を思い出す________友である彼らと再び会うこと。そして戦いで命を落とした者達を『王冠』を手に入れ蘇生させる事だ。その願いこそが今の俺を突き動かす原動力となっている。
「その城門を開けろ__________」
何十、何百と言う死体が後ろには転がる。これまでも此れからも歩んだ後には屍が重なるのだろう。
「ここを通す訳には行かぬ!!」
邪魔をする者は殺す。躊躇なく殺す。
「あはは!良き眺めよな♪」
不老の魔女が突如現れると黒騎士を後ろから包み込む様に抱きしめる。
「愚弟よ、聞け!お前の城は今この時より陥落する!」
城の門は不老の魔女の言葉と共に崩壊し崩れ去った。
「老朽化させ、崩壊させた________」
魂の同調を無機物に無理やりと反映させる事で倒壊させたのである。
「過去の亡霊めが_______この手で消し去ってくれる。」
瓦礫の上にて姿を表す無精髭の男。
「老けたな、宰相」
不老の魔女から若干ではあるが悲しみの感情を感じられた。
「不老の化物とは違い人は歳を重ねる生き物だ。」
杖を突き出し不老の魔女へと向ける。
「王から魔法の開帳を許されている。私に小細工な魔法が通じると思うな。」
「姫がどれ程の時を聖域で過ごしたと思う。王城で才能を枯らせていく貴様らとは違い姫は研鑽したのだ_________魔法の決闘で姫に敵うなど思わぬ事だな、三下魔法使い。」
「弱者程口が良く回る_______貴様を此処で討ち王国に安寧を齎そう。」
互いに睨み合い動き出そうとする。しかし、黒騎士は両者の真ん中へと立ち宰相へと問うた。
「始める前に一つ聞きたい。」
カミィルの殺害を企てたのは王なのか、それとも宰相の入れ知恵なのか、確認をしなければならない。
「________ふん、知れたこと。私が王へと助言したのだ。あの聖域を単身で突破するなど、王国の祖である我が王の父君を除いて存在してはならぬのだ。」
黒騎士は目を閉じ深呼吸をする。
「ブランツェ、俺が彼奴の相手をするよ。」
不老の魔女の眉間には皺が入っていく。
「ならぬ!あの者は..............ッ、そう容易い相手ではない!」
「俺は大丈夫だよ。」
彼女へと振り返り笑みを見せる。
「必ずアンタの元に戻ってくる。」
不老の魔女は驚いた表情を見せると直ぐに美しい微笑みを浮かべた。
「少年は狡い男だ。」
そう言うと瓦礫を弾き飛ばし城までの一本道を創り上げる。
「王を討つのか?」
「あぁとも。悲願であるからな。」
王国を壊滅させ、実の弟である現王様を殺す。
「危険だと判断したら直ぐに逃げろ、少年。姫が一番と怖いのはジョン、そなたを失う事だ。」
剣を握る力が強まる。黒騎士は既に心に誓っているのだ。必ずや再び、ディアーナ達と現代で合間見えるまでは死なないと。




