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第五十九話『壊すよ』

魔法の結合______完了。魂の同調率、9割。侵食度は此方が上。故に魔法は完成する。


「そら、種から花を咲かせであろう。」


植物との魂の連結。そして同調が上手く行った。


「あぁ、此れは凄いな。」


使い方によっては戦闘にも大いに使える。例えば大樹となりうる苗木へと魂を同調させ、高速で成長させれば奇襲にも使える。建造物であれば無理やりと老朽化させ、一気に崩壊する事も可能だ。


「ジョン、魔法は使い勝手がいい_________だが、生物に関しては余り使ってくれるな。一歩でも呑まれれば自我の崩壊のみらならず、肉体すらも塵芥となってしまう。」


非常に危険でもある術。それが魔法である。だが、ロマンはある。だがおいそれと使える訳ではない事は理解した。


「よし、ジョン。今日はここまでいい。本来であらば茶を入れ、ゆっくりと談笑しいちゃいちゃとしたいが、そろそろと物資を町から補充せねばならん。」


「街に出るのか?」


国外追放されたのではないのかと疑問とした表情を見せると魔女は笑いながらこう答えた。


「_____行けば分かる。」


とまぁ王国内へと食料品を買いに来た不老の魔女と黒騎士。


「意外にすんなりと町の中に入れたな。」


外装をしっかりとしている為、不老の魔女だと周囲には気付かれていない。検問の憲兵達にも何も言われなかった。


「何を驚く事がある。不老の魔女の姿を記憶しておるものはこの世には二人しか残っておらぬ。」


弟の現国王、そして其れに従う宰相のみ。


「従って堂々と歩いておれば気づかれぬものだ。ん?..................ジョンよ、あれは」


不老の魔女が何かに気づいたのか指を指す。


「カミーユ.............なのか?」


切り刻まれた彼女の遺骸が街の中央広場にて晒されていた。手に持っていた荷物が地面へと落ちる。


「誰がっ...........誰がぁ!!」


走り出していた。剣をその場にて抜刀し叫ぶ。憲兵たちが騒ぎを聞きつけ集まってくるが構わない。


「カミーユ!!」


吊るされた彼女の痛々しい身体を抱き締め周囲を睨みつける。


「彼女は見世物じゃない.......失せろ!」


憲兵を除いた群衆が散っていく。黒騎士は怒りの余り冷静さを欠いていた。


「貴様、その女の関係者か!」


カミーユを殺したのはこの国か。


「だとしたらなんだ........俺も殺すのか?」


「無論、王の命でこの者に関わる者全てを始末しろと命じられているのでな。」


カミーユの遺体を優しくその場へと下ろし立ち上がる。


「不老の魔女、いやブランチェ_____________決めたよ。」


「ぐぁ!」ザシュ


握っていた剣を憲兵の一人へと投げつける。そして剣は胸部へと突き刺さり憲兵は倒れた。


「アンタの野望を完遂させよう。この国を消すんだ。」


そして突き刺さる剣を引き抜き中央広場から見える王城へと剣を向けた。


「あぁ、少年!!姫は分かっていたぞ、こうなる事をな!!!」


不老の魔女は黒騎士の隣へと並ぶと王城からこちらを見下す王へと挑発をする様に口元を歪め杖をつく。


「これより姫らは楽園を創りあげる。そこで崩壊していく様を見ているがいい。」


______________________________________________


___________________________________


_____________________


___________


「愚姉よ__________ついに動き出したか。あの女ともう一人いるな。何者か?」


玉座に座る国王が彼女の存在を国内にて感知する。


「黒甲冑を纏った騎士との報告です。」


「黒甲冑の騎士だと?」

(..........我が愚姉は何と契約を交わした。)


悪の使徒か、幻獣種か。何れにしろ敵である事には変わりない。


「直ちにその者らを殺すのだ。」


あの女は執念深い性格をしている。必ずやこの城へと報復に訪れるだろう。既に50年以上もの時が経つと言うのに今となって動き出したのだ。


「その黒騎士とやらも恐らくは不老の魔女の傀儡だろう。死という名の救済を持って奴らを断罪しろ。」


「「御意に!」」











この身に宿る力はすべて借り物。そう、借り物なんだ。自分に出来ることはそれ等の道具を上手く扱う事だけ。今は亡き従兄妹ならばどのような道具も常人が思い付かないような機転を利かせた扱いをするだろう。しかし自分にはそれ程の応用力はない。ただ、その道具を王道に扱うだけ。


「___________朽ちろ」


従って学んだ魔法も王道に使い、相手を殺戮する為に行使する。


(無機物に対しては絶対隷属権を得る。)


手を地面へと当て魔法、魂の同調を開始する事で周囲一帯の基盤を老朽化させるのだ。


「きゃあーーー助けてぇ!!」

「まだ中に息子がいるんだ!」


半径1kmを中心とした建物が全て崩壊し、地面には巨大な亀裂が出来る。


(これが魔法の力.......)


今の魔法で人が大勢と死んだ。


「っ........」


罪悪感は感じない訳ではない。だが、自分には罪を感じている暇はない。


「魔法は使い勝手が良かろう?」


後ろから黒騎士を抱き締める不老の魔女。


「この力があれば.........一人でこの国を滅ぼせたんじゃないのか?」


不老の魔女は眉を顰め、苦笑を見せる。


「ふっ、そう容易くはいかぬさ。我が愚弟、そして悪鬼である宰相めも魔法の行使が出来る故な。」


魔法使い二人では分が悪いと言う事か。


「そうか。なら、今は大丈夫だな______」


彼女の手を強く握る。


「__________俺がついてる。」


不老の魔女は手を握り返し微笑む。


「あぁ姫には少年がいる。」


壊れ行く王国の城下町にて二人だけの甘い空間を作る。


「あ、悪魔め、死ね!」


瓦礫の下に埋もれた憲兵の一人が石を投げてきた。


「あぁ......あぁ.........邪魔をするなよ、蟻虫がぁ!!!」


不老の魔女は激怒したのか手をかざし憲兵の倒れる方角一帯を消し飛ばした。


(俺とは桁が違い過ぎる......)


王国の西側は今の一撃で平坦地と化す。正に悪魔の所業である。


「さぁジョン、もっと姫と語り合おう。王国の崩壊など散歩気分で終わらせてしまえばいいのだ。」


散歩気分で終わらせてもいい。だが、そうはいかない。


(カミーユ........)


何方が提案し、何方が命じた。宰相か、王様か。何方にしろ、王族と権力者は動き出す筈だ。そして俺は全てを断罪するよ。


「お前の仇は俺が取る。必ずな。」


痛々しい傷跡が残る遺体へと手を置き、黒騎士は目を一度閉じる。


(助ける。蘇生させる。必ずこの命が尽きようとも______________)


「行こう、王城に。」


黒騎士は立ち上がり陥落寸前の城を見上げる。

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