表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
59/218

第五十七話『魔女はデレるのが早い』

『銀狼と少女』の作者が書いた全ての童話に登場する魔女は一貫して『不老の魔女』である。結末は言わずもがな不老の魔女がどの作品でも最後には罰を受けるものであるのだが。


________黒騎士はその事実を知らない。


「はい、あ〜ん♡」


不老の魔女は黒騎士にメロメロであった。この魔女は一つのことに執着するとしつこい程、それに時間を費やす。王国の件がそうだ。既に王国を出てから七十年以上の時が立っていると言うのに未だに固執していたのがその証拠である。


「ありがとう、ブランチェ。美味しいよ。」


そしてその相手が初めて出来た異性で有る為、最早呪いに近い程黒騎士に執着(溺愛)を見せるだろう。


「何故、少年は姫をブランツェと呼ぶ?」


「嫌だったのなら姫に戻すよ。ただ、姫だけなんて勿体ないだろ?姫に相応しい名前だと思ったんだ。立場を表すものじゃなくて愛称として、ね。」


自分のエゴだ。彼女の容姿が______


「そうか。確かに立場だけの名は淡白であるか。好きに呼ぶがいい、少年。」


「ふふ、なら________俺の事もジョンと呼んでほしいな?」


不老の魔女の頬へと手を起き優しくそう伝える。魔女は顔を紅くし下を俯いた。


「狡い_________そんな事を言われたら『ジョン』と呼ぶしかないじゃないか。」


「く、ふふふ」

「むふふ」


二人は顔を見合わせ、笑う。不老の魔女も意味深な笑みではなく心から喜ぶ笑顔で笑った。


「あぁジョンよ、姫は_____________」


その先の言葉が口から出てこない。いや、出してはいけないと感じてしまった。この幸せとも感じる感情を幾度と壊そうとした自分にはその資格がないからだ。


「ブランチェ?」


「いや、なんでもない。姫は少し外の風を浴びてくる。」


外へと足を運ぼうとした刹那、黒騎士により後ろから抱き締められる不老の魔女。


「そんな顔をしているアンタを俺は放って置けない。」


ブランツェの心の中にある鎖の様なものに亀裂が入る音がする。


「何を言っている。姫は_______」


涙が頬を伝っていた。黒騎士はそれを優しく拭う。


「大丈夫だ。俺がいる。」


その一言が全てを溶かす。まるで求めていたものを全て、この男は与えてくれる。


「少年__________いや、ジョン。」


口付けを交わす。その味はとても甘く永遠に味わっていたい程、甘美なものだった。


「ん.........ふふ、ありがとう。」


感謝の言葉を口にするなど何十年ぶりなのだろうか。ただ、この幸福な時を永遠と過ごしていたい。


「此方こそ........ん」


再び口付けをする。


「隙だらけだ♡」


ゆらりゆらりと風の様に舞い窓を開け外の風を浴びる。二人は窓から覗く星空を手を繋ぎながら朝日が登るまで見ていたと言う。この少年は誰にも渡さない。渡してなるものか。姫が初めて愛する男。とても素直で憂い、其れに共に居るだけで余りにも心地が良く心を満たしてくれる。王国への憎悪が完全に消えた訳ではないが、今は『ジョン』と共にいる時間を優先させたい。姫と少年は永久に愛し愛される関係になる。何者にも害されぬ強固な絆で結ばれるのだ。


「そう言えば、ブランチェは婚約者とか居なかったのか?」


「王国に居た際は毎日と男達に求婚をされていた。様々な贈り物も受けとった。まぁそれもこれも姫が美しいからであろうな。この肉体を抱きたいと言う欲望が男達を狂わせたのだ。少年、安心していい。この身体はお前のものだ。いつ如何なる時でも欲するのなら姫は答えよう。望むのならこの場で致しても良いのだぞ?」


ジト目となり誘うように黒騎士へと告げる。


「ふふ、じゃあ俺も姫が俺を求めるなら何時でも答えるよ。ほら、良い子良い子♪」


不老の魔女を抱き締め、頭を撫で撫でする。


「馬鹿__________その様な幼児にする事を姫にするな//」


と言いつつも黒騎士の胸に紅くした顔を隠す様に埋める。


(ジョンは甘い蜜。姫を唆し堕落させる毒。毒は毒を溶かし純粋な水となる。さながら『姫と少年』の淡い一時。)

だが何れは純粋な水にも外的要素が加わる。其れがどうしようもない程に恐ろしい。


(少年や姫の美しさに見惚れ他者が近寄って来るのは分かる。だが、姫らの間に水をさすことは断じて許さぬ。)


出来ることならばジョンを囲い二人だけで世界の終焉を見届けたいと思ったが、其れでは嫌われてしまう。


(監禁まがいの事はしたくない。互いに自由を謳歌し尊厳を保つ。されど離れず互いに愛し合える関係。其れこそが姫が求める完璧な繋がりとなる。)


「ジョンよ___________魔法を覚えたくはないか?」













不老の魔女は可愛い。銀狼、ブランチェでないことは分かっているのだが、その容姿から本気で甘やかしてしまいたくなる。


__________正確には可愛がってしまっている。


其れに付け加え彼女の性格はとても優しく、現実的だ。小難しい事を言葉に並べるが、全ては建前で本音はイチャイチャしたいのだ。彼女は名の通り『不老の魔女』と呼ばれ歳の差がかなりあるとのこと。だが、彼女の心はまだ乙女である。


__________何はともあれ俺は疲れているのかも知れない。


戦いばかりの日々から少しだけ日常と言う誘惑に逃げてしまっている。不老の魔女と居ると何だか少し心が安らぐ。もう少しだけ_____


「魔法を_______________教えてくれるのか?」


もう少しだけ一緒に居させて欲しい。


評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

↑ページトップへ