第五十六話『契約』
森へと還るよう光の泡と消えていく銀狼。
「さぁ世界よ_____この世界での俺の役目は終えたぞ!!次なる世界に移してくれ!!!」
裁定者の言葉を待てども、何も起きない。一体、どう言う事だ?
「ぐぐ.......断じて許さぬぞ。姫の野望がッ!王国の粛清が!叶わぬではないか!」
不老の魔女が怨めしそうに消えて行ったであろう光の泡を睨みつける。
「はは、そんなに怒っている顔は見た事がないな。何時もの笑ってる顔の方が俺は好きだよ.......... はっ!?」
(し、しまった..........こいつはブランチェじゃなかった。)
銀狼と話す感覚で不老の魔女へと声を掛けてしまった。
「ひ、姫を誑かすとは.....................どう言うつもりだ、少年//」
しかめっつらだった不老の魔女は顔をボンと紅くし緩んだ顔で睨みつけてくる。満更でもないと言った様子だ。
(この魔女も俺の事を少年と呼ぶんだな、ふふ。それに薄紫色の唇がセクシー!)
無意識のうちに不老の魔女の唇を凝視する。その視線に気づいたのか、魔女は口元を手で覆った。
「た、戯け者が!姫へと劣情を抱くなど万死に値する!この場から去れ!不埒者!」
「ふふ、分かっているさ。アンタはどうやら悪い奴じゃなさそうだ。王国への復讐、成功するといいな。」
「ぐ.........馬鹿者が」プイ
朦朧とする。意識を保つのもやっと。しかし裁定者は次の世界へと移動してはくれない。足を引きづらせ、何とか木々へと掴まりながら進んでいく。
(後はなんだ?この世界でやり残した事は無いはずだ........俺に何を求めているっ!)
思考するが体力が直ぐに尽き、その場へと倒れる。
「ふざけるな.......まだ始まったばかりだぞ.......こんな形でくたばれるかよッ!」
「なんだ、少年も死にかけだったか__________」
_________不老の魔女。ニタニタと厭らしい笑みを浮かべている。
「あぁ________アンタはやっぱり美しいな。」
例えそれが本物のブランチェでなくともその表情はよく俺達に見せていたものだ。
「まっこと減らぬ口よ。姫が助けてやっても良い。どうするか、少年よ?」
「アンタの膝下で死ぬるなら本も「やめいやめい//あぁ〜もぅ!調子が狂う!」
不老の魔女はゆっくりと膝を下ろし魔術の様なものを起動する。
「少年よ、お前は姫のもの。片時も離しはしない。だから、ソナタも姫から離れるな。此れは命令でも願いでもない__________契約だ。」
傷が癒えていく。そして気分も徐々にではあるが改善されていく。そしてゆっくりと立ち上がる彼女を抱きしめた。
「あぁ、離れないよ。だから俺の事を離さないでくれ。」
「な、な、な、なぁーーーー////」
さっきからコロコロと表情が変わって可愛いなと内心に思う。
「ふしゅ.........むふ、むふふふ♪」
そして吹っ切れたのか黒騎士に対し強く抱き締め返す。
「姫は生娘。多少、少年とは歳が離れてはいるが、異性との間に経験がない故、優しくしてくれると..........嬉しい。」
「はは..........俺も実を言うと女性経験がないんだ。」
「なんとぉ!(鼻血がツーと流れる)」
バレないようにハンカチで拭き取る姫。因みに姫の実年齢はとうに70は越えている。
(あぁ〜姫王国の事なんかどうでも良くなってきた。)
「我が工房で愛を育んで行こう(ふふ、お揃いだな少年。)」
本音と建前が逆な不老の魔女であった。




