第五十ニ話『童話』
『童話_____銀狼と少女』
森の賢者、森神、賢狼、銀狼、森羅万象を司る者、と数多の呼び名を持つ白銀の狼がいた。少女は病に苦しむ祖母を救う為に森の賢者が住むと言われる聖域へと旅立つ。森の賢者は人、動物、虫と全ての生き物が持つどんな病、怪我をも治すといわれている。反面、その力を利用しようとする者達には裁きの鉄槌を下すとも言われ、聖域には人は近寄ろうとしなかった。少女は険しい道程を得て森の賢者が住まう聖域の中心へと辿り着く。其処は緑豊かで蝶や花が咲き誇る神秘的な場所だった。
”お願いです!私のおばあちゃんを助けて下さい!”
少女は涙を流し、森の賢者へと縋りつく。森の賢者は少女に二つの条件を授け祖母を助ける事を約束した。
【一つ、一月の間に祖母に別れを告げること。】
【二つ、聖域に必ず戻る事。】
少女は迷う事無くその約束を承諾した。少女は急ぎ故郷へと帰還する。
”おばあちゃん、私はもう此処には戻って来る事は出来ないの”
祖母は涙を流し少女の手を離さなかった。だが少女は祖母の手を振りほどき聖域への道程へと走り出す。御免なさいと言う謝罪を何度も口に出しながら夜月へと向かい叫ぶ。
”おばあちゃんを..........助けて”
聖域へと足を踏み入れた少女は息を切らしながらも必死に言葉に出し祖母を救う様に懇願する。森の賢者は遠吠えを上げると聖域は木霊を上げる様に美しく白き光を上げ天空を照らした。そして森の賢者は少女へと告げる。祖母の病を取り除いたと。森の賢者は静かに首を地面へと垂らし少女を慈悲深く見た。自身の死が近い事を少女に伝える森の賢者。
”_____________ありがとう”
最後に生命を救う為に力を使えた事に感謝する。そして幸福を感じながら銀狼はゆっくりと眼を閉じるのであった。
此処でこの童話は終わりを告げている。因みにではあるが童話、即ちメルヘンチックなファンタジーな世界でもある為、聖域内のクリーチャー達は可愛らしい姿をしている。
「可愛いわね。」
しかし、その残虐性は外見とは真反対だった。ぬいぐるみの様な姿の奥には獣の様な牙が隠れている。森の精霊とクリーチャー達は歌を歌いながら殺しに来る。
「邪魔よ。」
しかし少女には関係なかった。腕を噛まれようと爪で裂かれようと邪魔をするものは一匹残らず殺した。武器屋で買った剣をひたすら腕力のまま使い撲殺するのだ。
「私はおばあちゃんを救うの.........絶対に死なせたりしないんだから。」
執念により感覚が麻痺していると言えば良いのだろうか。故に彼女は正常に戦えていた。
「賢狼は何処か!出て来なさいよね!」
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唯の町娘であった彼女には戦うには理由がある。其れは育て親である祖母を助ける為。不治の病と言われ、様々な医者を訪ねたが治す方法は見つからなかった。
「もう良いのよ。おばあちゃんの事は良いからいい人でも見つけて一緒に暮らしなさいな。」
日に日に弱っていく祖母。どうにかしないとと言う強迫観念が常に襲う。
「............どうすれば良いってのよ!」
一人、涙を流しながら蹲る。もう時間がない。祖母の命を助ける事が出来るのなら何だってする。
「神様.......うぅ........お願いですから.......おばあちゃんを助けて........」
窓から指す光。神に願おうが何も起きはしない。
バサ
その時、一冊の本が棚から落ちた。
「____________聖域の狼。」
昔読んでもらった御伽話の絵本。
「そう.........おばあちゃんを助けるには......」
近寄っては行けないと言われている聖域のお話。
(行くしか.............ないのね。)
少女は直ぐに鞄へと食料を詰め込み、武器屋へと向かう。
「このお金で買える剣を頂戴!」
袋に入った金貨を手渡すと武器屋の店主は安い剣一振りと投げナイフ数本を見繕った。
「嬢ちゃんが何しようとしてんのかは分かんねぇが、後悔だけはするな。」
店主の言葉を受けた少女は剣を奪い取るように取ると告げた。
「後悔しない様に私は剣を手に取るの!」
そして店を出て行く_______覚悟と共に。




