第四十七話『骸の魔物』
魔界を統べる王_______その名を【骸の王】と言う。天界と対為す存在であり、下界で罪を犯した者達が行き着く先こそ
が魔界である。人の増加、そして自然の減少、妖精種の衰退が星の浄化作用を齎した。魔物に似た異業種。瘴気からなる意思なき魔物は魔界の魔物を襲わない。一体の魔物へと命じ、瘴気の魔物へ近づかせたがピクリとも反応をしなかったのだ。しかし、一つの例外もある。殺意を少しでも向ければ魔界の魔物に対しても攻撃を仕掛けて来る。ただ、仕組みさえ分かれば此方のものだ。協力して人間を殺戮すればいい。星のバックアップを受ける奴等とならば天界側が肩入れする人類を滅ぼす事が出来るのだから。
【我らが時代が開幕する_______下界を滅ぼした暁には天界へと宣戦布告をしよう。】
天界が支配する時代は終いだ。神々など不要。闇の時代の幕開けである。
【オーバー・ドレイン】
城間の天井は崩れ、瘴気に染まった空が見える。そして天空には骸の魔物が放った瘴気の塊が弾け、雨の様に瘴気の雫が此方に向け降り落ちてくる。
「マールス!!!!剣を盾にしろ!!!絶対にあの雫に触れるな!!!」
まだくたばって貰っては困る。
「「ぐああああああああ!!!!」」
数多の騎士団員達が発狂する様に叫び声を上げると絶命していく。近くにいる騎士団員達に雫が当たらないように剣を振るうが救助できる人数にも限界はある。
「ユーノ!勇者の力を開放し、斜めに光の斬撃を放て!!!!」
未だに降り続ける瘴気の雨を奇跡の光で浄化する。其れが唯一、この攻撃を防ぐ解決策だろう。
(ユーノはまだ勇者の力の扱い方を熟知している訳ではない........だが、やってもらうしかないッ。)
史実ではマールス達を除く主要な騎士以外の団員達は此処で全滅させられている。
(ジョンさんの期待に答えないと....)
「はい!任せて下さい!!!」
だからこそ今回はそうさせる訳には行かない。ディアーナ覚醒への劇を劇的に刺激的に完成させなければならないのだから。
「ラディアンス・ジ・ライトニングッ!!」
ユーノの握る剣から眩い光が溢れると、一帯が光に覆われる。
【_______貴様、もしや】
骸の魔物は驚きの表情と共にユーノだけを視界に捉える。
【勇者__________くく、あはは!神々めが!何故静観を貫くと疑問に思えば、くく、そうか、そういう事か!】
骸の魔物の気配が変わる。先程までは無心とした気配を漂わせていたが今は殺意と怒りに満ち溢れている。
【貴様達が語る運命とやらにはさせぬぞ。我が世界を統べ、全ての世の王となるのだ!!】
ユーノが瘴気の雨風を消し飛ばした事で、骸の魔物を本気とさせてしまった。
(厄介だな........)
黒騎士は生き残った騎士団員達へと後退する様に忠告し、骸の魔物に対して剣を向ける。
「俺が様子見をする。お前達は状況に応じて加勢しろ。」
骸の魔物に対して黒剣を力強く投擲する。
「剣を投げた!?」
「いや、よく見てみろ!」
騎士団員達が後ろでざわめいているが関係ない。
(______________瘴気の鎖)
骸の魔物に突き刺さった黒剣を引っ張る。
「よう、勇者の相手をしたいのは分かるが俺と先に戦ってくれないか?」
柄に付属させた鎖。其れを利用する事で骸の魔物に取り付く事に成功する。
【ッ........貴様、瘴気の使途か!?】
自分に対してのみテレパスを送ってくる骸の魔物。
【何故人間の味方をする!我らが共に戦えば全ての世を支配する事が出来るのだぞ!】
黒騎士は鼻で笑い、剣を引き抜く。
「馬鹿が______世界の征服程度など俺達だけで出来る。魔界も天界も、そして人間も必要ない。俺達だけの世界を一から作り直す。」
真紅の瞳が骸の魔物を捉えると骸の魔物は一瞬怯む。
【貴様、自分が何を口にしているのか分かっているのか!】
瘴気の衝撃波で自分を吹き飛ばし、黒騎士へと杖を向ける骸の魔物。
「ふふ、お前達は精々恐怖すればいいさ。”人間”と共にな。」
嘲笑うかの様に立ち上がる。
「大丈夫か、ジョン!」
「余り無理をなさらないで下さいまし!!私の夫婦となるのですから!」
マールスとシアリーズはジョンの前へと守る様に立ち並ぶ。
「僕達は仲間の力でお前を倒す!」
そしてその中心には命を救ったこの世界の物語の主人公ユーノの姿が在った。
「お前達.........」
あぁ、此れだよな。
「...........此れこそが」
仲間との絆であり、王道的な展開なのだろう。
(俺は次期にこの信頼を裏切る事になる。ユーノ、マールス、シアリーズ________)
共に戦い支えてくれた事に感謝の言葉を。
(____________ありがとう。)
死んでくれ。ディアーナの為に_________俺自身のエゴの為に。
「恨んでくれても構わない。」
俺が死ぬ時は必ず地獄に墜ちるのだろうから。
過剰回復も奇跡も使う余力は残されていない。いや、例え使用を出来たとしてもこの身は完全に闇に侵されてしまう。それ程までに私の身体は限界に来ていた。最早自分が立っているのか、立っていないのかさえあやふやであった。
「此処から......先は.......何人足りとも........通しません......」
朦朧とする意識の中、私は杖で己を支える。戦う意志はあれど、反抗する余力はない。
「ぐっ.........」
(私の天命はここ迄......)
帝国騎士団長マールス、ともに副団長に託して逝ける。何よりも次代にはユーノと言う勇者が世を平和へと導くであろう。
【グギギ】【ゴゴゴ】【ガガガ】【ギギギギ】
出来る事ならば平和となった世界をこの目で見たかった。
「私は............」
取り囲む魔物達に為す術もなく蹂躙されていく。四肢は喰いちぎられ、腹から臓物が抉り出される。しかし何故だろうか心地が良い_____________何て心地が良いのだろう?
少しづつと自分の中にある何かが薄れて行く。そして支配されていく。自分で在るのに自分ではない感覚が身体を駆け巡る。私が私でなくなるのに何故、これ程迄に幸福を感じるのだろう。
だけど、その感情と共に気持ち悪さも感じた。この悍しい感覚が疎ましく、今すぐにでも取り払いたい。血の一滴、細胞の一つ一つが侵食されていく。まるでポーションを作る薬師の様に私の思考が混ざり合って歪んだ何かになっていく。
「あぁ♪」
身体が肉体が人ではない何かに変貌していく。媚びた娼婦の様な表情、貼り付けたような笑み。まるで仮面の様な顔。気味が悪い。
【フフ♪貴方は『私』で私は『貴方』なんですよぉ♪】
自分だと戯れ言を言う人格が私の人格をも取り込もうとしている。
【あは♪】
鼻歌を歌われながらジワジワと心と身体が『私』に取り込まれて行く。
【一つになりましょう♪】
あぁ思考が出来ない。消えていく。
いヤだ
私が私じゃない何かに。
タすケて
思考が奈落の底へ、深く深くと沈む。
ダれデもいイ
絶望の底に。
トけテいク
記憶も何もかもが。
マざッテ
ヒとツにナっ.............。
「_________ふふ、世界に安寧を取り戻しましょう♪」




