第三十三話『次なる目標』
「生き残りは半数以上はいるな。」
塔の残骸の上で此処まで辿り着いた騎士団員達を見渡す。予想以上に死亡者は少なく此れから先の遠征で活躍してくれそうだと安堵の表情を見せる。
「あぁ、流石は帝国騎士団だ。」
レムスの感嘆の声を聞きマールスは自信らしげに口を緩ませた。
「「ジョンさぁーん!」」
騎士団の中から手を大きく振るユーノの姿が目に入る。黒騎士は苦笑をしつつ、手を振り返した。ちなみに鎧は装備している為、騎士団員には顔は見えていない。
「知り合いか?」
「あぁ。彼奴の命を救った。」
命の恩人だ。本来ならばユーノは主人公として率先してみんなを牽引する立場にいる筈なのだが、自分に憧れる後輩的な位置に立っている。
(このままでは才能以前の問題になってしまうな____)
「___恐らく彼奴は化けるぞ。」
「化ける?」
「そうだ。彼奴には戦士としての才能がある。例えるならば伝説譚で語られる英雄、勇者になりうるな。」
マールスは信じられんとした表情でユーノを一瞥した。まぁ何の戦果も残していない新人騎士に期待しろと言う方が無理があるか。
「マールス団長、少し皆さんに伝えたい事があるのですが、宜しいでしょうか?」
「あぁ、構わない。」
ディアーナは集まった騎士団に対し何かを伝えたいのか、マールスへと許可を貰う。
「「同士たちよ、聞きなさい!!」」
聖女の言葉に騎士団達は静かになる。
「我々は法国方面に位置した西の塔、瘴気の起点である渦、龍を討伐しました。しかし、この渦は東西南北と分かれたものの一つに過ぎません。」
騎士団達は勝利の余韻に浸っていたが、ディアーナの言葉により目を覚ます。
「そんな......それじゃあまだ三つの起点が存在すると言う事でじゃないか!」
「化物達との戦いはまだ、続くと言うのか。」
騎士団員達は暗い顔になっていく。彼らも彼らなりに修羅場を潜り抜けて来たのだろう。だからこそ瘴気領域内が如何に危険な場所であるのかを理解しているのだ。
「俺達の任務は何だ!」
マールスが活を入れる為に騎士団員達へと叫ぶ。
「お前達は何の為に戦うんだと聞いている!」
騎士団達は思い出す。この霧を止めなければ家族や恋人、友人が住まう帝国が瘴気に包まれてしまう現実を。
「そうだ.....俺達が戦わないと帰る場所がなくなっちまう。」
「あぁ、あの霧を振り払うんだ!俺達の手で!!」
騎士団員達の瞳に闘気が戻る。其れと同時に黒騎士は同情も感じた。
(ディアーナが覚醒したら.....全てが瘴気に包まれる。)
そして最終的には人類は二桁のみしか生き残らなかった。
「マールス___この先死ぬなよ。お前は帝国にとってのもう一つの希望だ。」
ディアーナを覚醒させた後、お前には力をつけて貰わなければならない。【骸の魔物】戦以前に死ぬなど言語道断だ。
「瘴気を消し去らない限り俺は死なん。ジョン、お前も死ぬな。」
マールスは自分の肩へと手を置き心配とした様子で伺う。
「お前は優しい。仲間を死なせたくないのは分かるが自分の命は大切にしてくれ。」
西塔に置けるレムスの件を指して言っているのだろう。
「分かってはいるんだ.......ただ、気付いた時には身体が動いている。」
マールスは苦笑をすると背中を叩く。
「そうか。なら誰かがお前の背中を守ってやらなければな。」
黒騎士は小さく感謝の言葉を漏らすと同時に謝罪も口にする。
「ありがとう、すまない。」
この先に待ち受ける運命の歯車に乗せる事になる罪悪感。様々な感情が交差する。
「副団長殿の背は当方が守る故、マールス団長の出番など来ないだろう!何故ならば当方が常に守ってやるのだからな!」
ヴェヌスがマールスと自分の間に無理やり入り込み堂々と宣言する。
「其れは心強いな。」
ヴェヌスの頭へと手を置きポンポンしてやると頬を膨らまし怒った表情を見せる。
「当方を子供扱い方するな、戯け者!」
「50組みといたパーティーは総勢で36組までと減っている。そして俺達が攻略しなければならない渦は3つだ。」
「はい。ならば取るべき行動は一つ。三つのグールプに分かれ、残りの渦の攻略に移るのです。」
残りの瘴気の渦は北南東と3つに分かれる。単純計算で各渦に対し12組のパーティーで攻略すればいいと言う訳だ。
「俺達上位陣はどう分かれる?」
「当方は副団長殿と行くぞ!」
間髪言わず黒騎士へとくっつくヴェヌス。マールスは思わず笑みを零した。
「随分となつかれたじゃないかジョン、クク。あの堅苦しかったヴェヌスがこうも尻尾を振るうとはな....ふふ。」
「笑うな!」
対してシアリーズは舌打ちをするが、仕事と私情は分けているようで冷静にこう答える。
「私は聖女様の付き人。故に他者について行く事などありません.........が、もしジョン副団長が望むとあれば致し方ありません。教会の方針に背く事なるでしょうが、殿方がお困りとあれば慇懃するのも努め。夫婦の契を交わした者とあれば尚更です。」
いつの間に夫婦の契とやらを結ばれたのだろうか。
「妄言をいい加減に捨てたらどうだ、姉上。そんな事だから三十にもなって独り身なんだ。」
驚きだ。シアリーズの実年齢が三十路で有る事に。
「ヴェ、ヴェヌス!!」
顔を真っ赤にし、ヴェヌスへと襲いかかるシアリーズ。
「年齢の話はしないでとあれ程口止めをしたでしょう!!」
ディアーナはすかさず二人を引き剥がし叱る。
「お二人とも止しなさい、みっともない!」
「左様だ。騎士団達の手前、此れでは示しがつかん。」
レムスも同調する。
「仮にも上に立つ者としての自覚と誇りを持つのです。」
「聖女様だってジョン副団長とお話する際はデレデレしてる癖に」ボソ
「っ///シアリーズっ!!」
ディアーナもシアリーズとヴェヌスのいざこざに参戦する。その姿を見ていた騎士団達はいいぞー!と笑いながら観戦するのであった。




