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第二十七話『西塔へ』

「スイッチッ!」


巨大な魔物の攻撃を膂力を持って弾き飛ばす黒騎士。


「其処だぁーー!!」


ヴェヌスの刃が魔物の眼球を刳り、頭部をそのまま粉砕する。灰へと帰る魔物を無視し、そのまま前方へと走る。


「見えるか、あの敵の群衆が!」


黒騎士はヴェヌスの隣に並び前に広がる魔物の軍勢を指す。


「ああとも。そしてアレを越えれば」


魔物の一体が二人へと襲い掛かるが。


「「塔に着く!!」」


息の合わせた連携攻撃で心臓と頭部の同時破壊をする。彼らの背後には魔物の遺体で出来た道ができていた。


【愚かな人間風情が!】


魔物の上位種が周囲の下位魔物らを蹴散らしながら此方に迫って来るが、此方も足を止める気はない。


「ヴェヌス!俺の手に掴まれ!お前を上空に投げ飛ばす!」


ヴェヌスは頷くと手を掴んだ。多くの魔物を休まず倒して来た故の連携だ。


「うおおおおおおらあああああああああ!!」


瘴気による後押しの力も混じりかなりの速度を持って上空へと投げ飛ばされるヴェヌス。


(あの男の力は人の域を越えているな、ふ!!)


心の中で苦笑を浮かべつつも両者には信頼が生まれつつある。


「豪炎火《フレア》ッーーー!!」


レイピアから炎が上がり、軍勢は瞬く間に炎に焼かれる。意思なき魔物は痛みを感じない為、通常通りに動いているが魔界から侵攻して来た魔物らは炎の攻撃により悲鳴を上げていた。


(ヴェヌスの成長率が異常過ぎる.....)


先程の迫って来ていたであろう上位魔物の身体に足を置きながら、周囲の光景を見渡す。


(『レベル』其のものが向上しているからか?)


黒騎士はそんな思考を浮かべながら、炎の攻撃により怯んでいる魔物達を斬り殺して行く。


【此処から先は通さぬ。】


巨大な二頭首の魔獣、オルトロスとでも言うべき魔物が塔への道を塞ぐ。紅蓮の炎を纏っている事から先程のヴェヌスの攻撃が効かなかったのだろう。


「其処を通して貰おうか。」

「犬畜生風情が道を開けろ。」


空から降ってきたヴェヌスを受け止め、地面へと下ろす。


【人間如きが我ら上位種である魔物に命令するか______万死に値する。】


二頭の魔物は巨大な口を開け、炎のブレスを吐き出す。その威力は絶大で、ヴェヌスの火攻撃魔法が矮小に感じる程だ。ヴェヌスと互いに目を合わせ、左右へと全力で距離をとる。そして先程まで立っていた場所をみると、後方にて怯んでいた魔物達が巻き込まれる形で焦土と化していた。


「邪魔だ、退け!」


【グググ】【ガガガ】【ゴゴゴ】【ブブブ】


二頭の魔物の近くに群がる下位魔物を蹴散らしつつ、何とか距離を縮める。


(ヴェヌス)


反対の方向にいるヴェヌスも自分と同じく距離を縮める事に成功したようで、二頭の魔物の背に跳躍する姿が見えた。


「崩れろ!」


二頭の魔物の右脚を黒剣で突き刺し、そのまま回る様に引き裂いていく。


【ぐ、小癪な真似をしてくれる!】


体勢を崩した二頭の魔物は頭を前へと垂らすと、噛みつき攻撃で襲い掛かってきた。


【喰らうてくれるわ!】


「単調な攻撃だ。ああ、そうか。犬の頭脳を持つお前が考えて戦闘を出来る訳がなかったな。」


軽い挑発をすると激高した様子で自分を更に喰い殺そうとしてくる。


(ヴェヌスが背にいる事には気づいていないようだな。)


上手く其れらの攻撃を剣で弾き、躱し続ける。


「ヴェヌス!殺れーーー!」


指示と共にヴェヌスはレイピアにて二頭の魔物の背部を貫き、そのまま頭部へと向かいながら引き裂いて走ってくる。


【グアアアア!】


余りの痛みに絶叫する二頭の魔物。黒騎士はそのスキを狙い、二頭の顎を黒剣にて斬り裂いた。


「はぁ....はぁ.....終わった。」


ヴェヌスもまた二頭の魔物の頭部の一つを半分に切り裂き地面へと降り立つ。互いに魔物の血や泥でかなり服装が汚れているが今は気にしている余裕はない。


「大丈夫か?」


あぁとは言うが、流石に疲労困憊である事は目に見えて分かる。


「飲んでおけ。」


自分の分のポーションを手渡す。各騎士に支給されているのは二本のポーションのみだ。霧の影響のせいで生成が難しくなり高価となっている為、なるべく消費させないよう戦っていたがヴェヌスはそろそろ限界が近い。


「当方は既に一本目のポーションを使用したが、まだ残りの一本がある。」


受け取りを拒絶しようとするヴェヌス。


「構わない。そっちは予備にでもとっておけ。」


「しかし、副団長殿も怪我を「副団長命令だ。」


無理やりとポーションを押し付け、先に塔へと向け歩き始める。


(自分勝手な奴だ。だが___)

「_________嫌いじゃない。」


ヴェヌスは唖然と様子を見せるが、直ぐに苦笑を見せながらその背を追うのだった。


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