第二十六話『ユーノの初陣』
黒騎士達が帝国を去ってから次々とパーティー達は一時間置きに瘴気内部へと足を踏み入れて行く。そしてユーノ達のパーティーもまた1日目のパーティーとして瘴気内部へと足を踏み入れていた。
「危ないっ!!!」
ユーノは魔物により負傷を受けた仲間を庇うように前に出る。
「うぐっ!!」
そしてユーノも魔物の鉤爪を左腕に受け傷を負う。
「「ユーノ!!!」」
「僕は無事だよ!君は早く彼を背負って隠れているんだ!僕がアイツを引きつけている間に!!」
幸いなことに見た目に反して深く切り裂かれた訳ではない。
「コイツを降ろしたら、直ぐに戻る!!」
仲間の一人である新人騎士【アイネイアス】はそう叫ぶともう一人の騎士を背負い離脱した。
【ガウウ】【ヴィイイ】
ユーノはポーションを即座に飲み込み、前方に存在する二対の魔物と対峙する。
(ジョンさん達が出発してからまだ半日も経っていないのに道に転がる魔物の遺体を数え切れない程見た。)
それと同じく先行した仲間である帝国騎士達の遺体も。
「守らないと______」
瘴気領域内に入ってから自分たちは一時間と経っているが、既に魔物達を10体以上は倒している。恐らく副団長とヴェヌスさん達はそれ以上の化物を退治し、進んでいる筈だ。
「_____僕が戦わないと彼らが死んでしまう。ジョンさんは僕に任せてくれたんだ。」
どんなに傷を負ったとしても戦い勝ち続けなければいけない。自分達が敗北すると言うことは帝国のみならず世界の人間が死滅する事を意味する。
【ヴィイイイイ!!!】
『大きな鉤爪を持つ魔物』が恐ろしい速度で飛び掛かってくる。
(くっ、速い)
ユーノはギリギリの所でその突進を避け、目線を上げる。
【ガウ!】
するともう一体の魔物が待ち構えており、刺々しい巨大な尻尾で顔面を強打される。
「うがぁあああ!!!」
顔面が潰されかねない攻撃を持ち前の反射神経でバックステップを踏む事で衝撃を最小に収めた。しかし完全に攻撃を防ぐ事は叶わず吹き飛ばされる。
「僕は_____」
剣を地面に突き刺し立ち上がる。
「__________こんな所では負けていられないんだ!!」
決して絶望には屈しない決意と共に目には覚悟と勇気が写る。
「ジョンさんと約束たんだ。」
片手に魔力を集中させ、呪文を唱える。
【ヴィ!!】
鉤爪の魔物はその隙も与えないと言わんばかりに襲い掛かる。
「サンダーボルトッ!!!」
その攻撃よりも速く雷が鉤爪の魔物を穿つ。しかし、魔物の動きは完全には止まらない。
(まだ僕の攻撃魔法は精度が低い、だけど!!)
心臓を外した。だがユーノには十分だった。
「滅びろっ!!!」
その一瞬の怯んだ隙を狙い魔物の頭部へと乗ると肩部へと剣を突き刺し、そのまま心臓を砕く。
「はぁ..........はぁ......」
灰と化し消える鉤爪の魔物。魔界から侵攻してきた魔物とは違い、意思なき魔物(瘴気が生み出した獣)は生命活動が停止した際には瘴気に戻る為、灰となり空気へと消える。
【ガウッ!!!】
剣を引き抜き『尻尾の魔物』へと向ける。
「僕は強くなる________」
尻尾による攻撃を正面から受ける。だがユーノはそれを剣で受け止め魔物を睨みつけた。
「___________憧れた英雄|《黒騎士》に近づく為にッ!!」
尻尾を叩き斬った。魔物は即座に対応し追撃に移る。
【ガウウウウ!!!!?】
ユーノは己が持つ以上の魔力が内から溢れ出し、魔物の攻撃を剣で弾く。
「ライトニングブレイズッ!!!!!!」
そしてトドメの一撃を与えるべく剣を伸ばす。刀身からは雷光が走り、魔物の頭へと突き刺さる。雷の剣は魔物をそのまま半分へと引き裂いた。
「ユーノ、無事か!」
パーティーメンバーの一人である新人騎士アイネイアスが剣と盾を構えた状態で戻ってくる。
「...........うん、丁度終わったよ。彼は大丈夫?」
その場へと座り込むユーノ。魔力を使い過ぎたのだ。
「あぁ、なんとか大事はないぜ。ユーノがいてくれて良かった。」
初めて人から感謝をされた。嬉しいと感じると共に脱力感が襲う。
「ごめん、ちょっと...........意識が.......と..........」
視界が暗転して行く。アイネイアスが心配して叫んでくれているが、それに答える力はない。すまないけど、ちょっと眠りにつかせてもらうよ。




