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第百九十七話『天使と魔眼』

「______________彼を寄越しなさい。」


神の右席、最上の熾天使ルキフェル。その左手にはバロールの生首が握られ両目は抉られていた。


「やはり、魔眼めは役に立たぬか。」


毒を吐くようにルキフェルの握る生首を見下すエレンミア。


ドンッ!!


城の間へと繋がる扉が強く開かれる。


「はぁ......はぁ........化物っ、うぅ、っ。」


満身創痍の状態で姿を見せるウォフ・マナフ。


「殺めたと思ったのですが、存外しぶといものだ。」

挿絵(By みてみん)


淡々と冷たく、冷酷な眼差しでウォフ・マナフへと一瞥する。そしてエレンミアへと視線を戻し告げた。


「ですが安心していい_________皆殺しにしますので。」




















遡る事数分前______


「ようやく見つけましたよ。」


エレンミアらが居城とする城を発見したルキフェル。


「小賢しい真似をしますね。ですが、この程度の細膜で私を阻めると思わないことだ。」


城を起点とし周囲に複重に張られる結界。ルキフェルは天使の長槍を顕現し、膜へと突貫する。


「私を真に拒みたいのであれば、万倍の結界を施すことを推奨しますよ。」


槍が膜へと触れると同時に硝子の様に膜は砕け散る。そしてまた次の結界も同じ様に槍が接触すると同時に砕け散る。


「これで最後です。」


数十の結界を完全に破壊し、城の外壁が澄んで見える様になる。


「気配......彼処ですか。」


複数の波動を城の中心から感じ、殺意をそちらへと向けるが。


「随分と堂々とした敵襲だね。君は、誰だい?」


城壁塔からルキフェルを覗く盲目の男。


「貴方は.......」


盲目な戦士は一人しかいない。


(バロール。その呪われた眼で死の概念を与える魔神。厄介な力ですが、見られなければどうと言う事はない。)


ルキフェルはその場から姿を消す。


「消えた........だが。」


バロールは周囲を見渡すがルキフェルの存在を確認出来ない。


(速度に自信がある者は真っ先と僕の首、もしくは瞳を潰そうとする。だからこそボクにはそれを補う為の魔術がある。)


バロールは身体を広げ、己の魔力を開放しようとする。だが、


「________遅い。」


ルキフェルの槍が瞳を狙い、突き刺さろうとしていた。



「ふん、」


だがバロールはその発言を受け、ほくそ笑む。


「それはどちらかな、“嵐よ”」


竜巻が如く暴風が防御壁の様にバロールを包み込むと、ルキフェルの槍の軌道をずらした。


「むっ、」


ルキフェルは驚きの表情を一瞬見せるが、直ぐに上空へと距離を取り二擊目に備える。


「厄介な術を使う。」


瞳が向けられない様に上空を高速で飛び回る。


(君の速度を気配で追うことは無理そうだ。なら僕の取るべき行動は一つ。)



ルキフェルが距離をとった上空へと手を翳す。


「この手に炎の災禍を具現せよ」


手からは溢れ出んばかりの炎が渦巻いていた。


(一帯は火の海となるが、構わない。)


炎を圧縮するように手の平を握り、優しく上空へと火球を放出する。


「燃やせ“天上の業火よ”」


放出された小さな火球は上空にて煌めきを発する。


(ウリエルの業火と似て非なるものですか。如何に多神教の神とは故、これ程の業火を操るとは......賞賛に値しよう。)


眩い光と共に灼熱が世界へと広がる。蒼き業火が空一面を覆っているのだ。恐らくだがここら一帯の人間は蒸発し、死に至っているだろう。


(ですが所詮は星が生み出した自然だ。我ら至高なる天使には遊戯に等しい。)


翼で自身の周りの蒼炎を薙ぎ払い、バロールの元へと着地する。


「やはり最後に残るのは君みたいな化け物なんだね。」


気配を察し、そう言葉を口にする。


「だけど、僕の前に姿を現したのは些か________慢心が過ぎるのではないかな?」


魔眼を開眼し、ルキフェルへとその眼が向けられる。


「えぇ、弱者から見た私はさぞ化物に映るのでしょう。」


しかし、眼が捉えた先は空だった。


「なに、が?」


状況が一瞬理解できなかった。だが直ぐに事実に気づく。


「ぐぶっ、」


口から血が流れ出る。何故ならば首を槍にて穿たれていたからである。


「慢心などしていては神を討つことは出来ない。貴方が私を捉えるより速く貴方を殺すまでだ。」


槍を右へと振りかぶり、バロールの首が胴から離れる。


(石化の盾ならぬ、即死の盾としようと考えましたが.........)

「ないですね。」


天の光にてバロールの眼球を完全に浄化する。仮に青年が誤って使用して仕舞えば死に至る可能性がある物を手元には置いておきたくはないのだ。


「.................ば、バロール?」


バロールの首を握るルキフェル。それを城の庭園から見てしまったメイド服を着た女。


「ふふ、幸先がいい。」


天使は意地の悪い笑みを浮かべ、槍をそのメイド服の女へと向け投擲した。


「あがっ、」


心臓部を貫通し、何が起きたのかも理解出来ないままに地面へと倒れる。


「あぁ、ただの人間を殺めてしまいましたか?これはいけない。ジョンに怒られてしまいますね。ですが、事故だと言えば許してくれるでしょう。そう、事故なんですから。」


クスクスと笑い、城内へと足を進める。


「私は悪くない。これは大切な者を奪還する為の犠牲。ジョンの命が優先される以上、いくら殺めようとも私に正義がある。」


城内にて巨大な扉を発見する。ルキフェルはその扉を間髪入れずに破壊すると中には複数人の創作物が存在した。


「______________ジョンを寄越しなさい。」


狂気が入り混じった様な笑みは消え、明確な殺意だけが顔に現れる。

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