第百七十三話『対面』
「ルキフェルよ、敵の数は何体だ?」
「いえ、二、.........三と増えておりますね。」
ルキフェルの瞳が白銀に輝く。『千里眼』の行使により敵地の情報を更に得たのだろう。
「二体も増えているのか......」
驚きはしない。
「奴も我ら同様、徒党を組む輩であるか。」
ブランチェが苦虫を噛み潰したような表情を取る。
「仲間..........仲間ですかぁ♩」
何やら嬉しそうに仲間という単語を連続として口にするディアーナ。
「どうした、何か分かったのか?」
「いえいえ♩私への供物が増えたなぁ、と。」
ディアーナ有する捕食能力。瘴気にて喰らったものの能力を引き継ぐという壊れ性能である。
「簡単に食べさせてくれる敵なら良いんだかな。」
より注意して望まなければならない。敵の能力は未知数。なるべく有利に立ち回れるように動かなければならない。
「ふふ♪」
ディアーナが意地悪く笑う。ディアーナから滲み出る闇を殺意を持って凝視するルキフェル。
「おさえなさい、ディアーナ。目的は速やかな殺戮、そしてジョンの奪還なのです。悦に浸る時ではない。正道を持ってして正道を突き進む。その道しるべにジョンと言う伴侶が私には必要なのです。急ぎましょう。」
ディアーナはクスクスと笑うとルキフェルとブランチェの顔を覗き込む。
「正道を似て、ですか。私達の進む道を訂正してくれる存在、導いてくれる救世主こそが私にとってのジョン副団長。
王冠戦争なんてものは本来ならばジョンは関わらなくても良い戦ごと。それを無理矢理と連れて来て連れ去られしまった。そんな私達が彼なしに正道など進める筈もありません♩」
「故に連れ戻さねばな。でなければカミーユや芙蓉に顔を合わせることなど出来ぬ。」
「「えぇ、もちろんです!!」」
博物館と化していたラームナガル城内部は大幅に改善され、完璧なる城塞へと変貌していた。
「結界を破るか。」
観光客らや地元民などは人払いの神秘により近づけず、聖域となりつつあるラームナガル城。
「未知数が来たようだね。」
その守りを破り城塞へと侵入が可能とする存在、其れは同じ創作物にしかありえ得ない。
「デュフ、や、約束通り、生き残った美人の一人は、わ、私が頂きまして、よぉ♫」
巨大な玉座に座る聖鳥。左右にもたれかかる蚩尤にプシューケー。その姿はまさに絵画のように美しく迫力のある絵を魅せていた。
「君が仕事をしてくれるのなら文句は言わないさ。」
「ふふ、た、楽しみだなぁ♡」
舌舐めずりをし、頬を染めるプシューケー。
「先に貴殿らに申そう。此度の遠征、感謝する。」
改まり感謝の言葉を告げるガルーダ。その台詞を聞き蚩尤は鼻で笑うと皮肉を言葉にする。
「やめてくれ。そう言うのを死亡フラグと言うんだ。」
プシューケーはクスクスと笑うとこの間へと繋がる巨大扉が開いた。其処には三人の侵入者が存在し此方を凝視する。
「ふふっ_________貴方の発言通り、貴方方を殺害します♩」
聖鳥は感じた_______眼前にいる奴らは強大であると。
「侵入者か。」
両隣に立つ二人はもたれ掛かる玉座から背を離し、階段を一歩、一歩とゆっくりと下っていく。そして聖鳥も重い腰を上げ二人に続くように前進する。
「三人ですか。丁度いい。私が聖鳥の相手をしましょう。」
「吾輩は鎧の相手をしよう。」
ルキフェルとブランチェが敵を物色する様に見ると我が先と敵を指名した。ディアーナは其れに乗り遅れ二人へと振り向く。
「えぇ!?私も鳥さんや鎧さんと闘いたいですけどもぉ!」
「ディアーナ、あの聖鳥と鎧の者は別格です.................其れに先の戦いで貴方は疲弊している。」
ディアーナは目を細め敵へと身体を向ける。そして相手が超常を逸脱する難敵であることを理解した。覇気がかつて戦った降霊術師やユーノとでは比較にならない程、強大であるのだ。
「なるほど。確かに今の私の状態では.........わかりました。私はあの女性の方との戦闘に集中致しましょうぉ♩」
ディアーナは直感で感じた。あの女以外の相手との戦闘において、自身が手を出せば、死の可能性がある事を。
「話は纏まったか、創作物らよ。」
階段を下りきり、同じ土俵に立つ。
「ふふ♩えぇ、そちらこそ。殺されるお覚悟は出来ているのでしょうかぁ?」。
「果たして死に行くことになるのはどちらだろうか。」
戦斧と大剣を両手に具現化させ戦闘態勢に入る蚩尤。周囲には何処からともなくと武器が出現し、剣が床へと突き刺さる。まさに針地獄の様に間には剣が広がった。
「ちょ、ちょっと!し、蚩尤さ、さ、さん、たた、闘いずら、辛いです、です、はい!」
あわあわとした様子で周囲の剣を指差すプシューケー。
「それならば消し去ればいい事。」
全ての武器が一瞬にして浄化した。蚩尤はルキフェルを睨みつける。
「残念ながら貴方の相手は私ではありませんよ。」
ルキフェルは主装備である天の聖槍を具現化し、聖鳥へと掲げる。
「邪魔ならば消せば良い、か。道理にかなっているな。」
ガルーダはクスリと小さく笑うと拳を構える。
「貴殿の相手は吾輩だ。」
肩をワザと落としながら申し訳なさそうな表情を見せるブランチェ。
「兵主神である私も舐められたものだ。」
蚩尤の覇気が空間を歪める様に溢れ出る。
「という事でぇ貴方のお相手は私が致しましょう♩」
「..........」
プシューケーへと笑みを浮かべつつも殺意を翳すディアーナ。瘴気が舞い上がり、間の内装を破壊していく。その不気味な力にプシューケーは戦慄した。
「.............カオスの渦、深淵。」
しかし、プシューケーは一歩足りとも後退しない。
「ふ、ふふ、あ、あな、貴方を、し、縛って、縛って、デュフ、い、いいですかぁ?」
ぐるぐると瞳の奥が回る。
「ゆ、百合って、あ、あ、ありだと思うんです、はい、デュフフ」
身体がぐらんと揺れると此方へと向かい駆け出すプシューケー。それが合図にディアーナも標的へと向かい歩き出す。
「ふふ♩」
プシューケーは手に持っていた小石をディアーナの目元を狙い指で弾く。ディアーナは一瞬驚きはしたが直ぐに瘴気で防御壁を張り、小石を粉々にする。
「小癪な娘ですねぇ」
ディアーナは自己召喚(転移)を使いプシューケーの背後へと回り込む。
「無駄ぁ、で、ですよぉ!!」
ディアーナは瘴気の杖を突き刺そうとするが、プシュケーへとは到達しなかった。
(無意識の内に、私の身体が.......)
ディアーナの振るった腕に何故か一瞬、力が入らなかったのだ。しかし、すぐ様態勢を直し、瘴気の剣を二対空中に展開する。そして杖と共に二対の瘴気剣がプシューケーを襲った。
「う、うわぁ!?」
何とか器用にディアーナの攻撃をプシューケーは避ける。その攻防をガルーダと鍔迫り合いをしているルキフェルは横目で苦笑して見ていた。
「余所見とは随分と我も舐められたものよ。」
ガルーダはルキフェルを睨みつけ巨大な鉤爪に力を入れる。そしてルキフェルを力押ししようとしたところ器用に身体を回転させガルーダの首筋へと槍を横払いする。
「くっ、小賢しい動きをするッ!」
力で押そうとした為に身体が前へと沈むガルーダは後ろ足で槍を弾き、前方へと鷹のように飛翔する。
「______その巨漢、その速度。賞賛しましょう。」
ルキフェルは槍を回転させ、壁へと鳥の足を使い着地するガルーダへと槍を向けた。




