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第百六十七話『ヴァーラーナシー』

「やぁ久し振り。君達も気づいていると思うが、ガルーダくんが時期に”未知数”と衝突する。」


黒色に近い赤色のスーツを着込んだ男がそう声を掛ける。


「あぁ......あぁ........デュポーン様ぁ.........あぁ........デュポーン様ぁ..........」


しかし、返事はなく亜人女性が化物へと縋り付くように呻き声を上げるだけだった。


(化物を生み出す『エキドナ』、そして化物の祖『テュポーン』。)


ベトナムの山林、ファンシーパン山の最奥地の洞窟にて一人の亜人女性と巨大な化け物は住み着いているのだ。もちろんその正体は創作物の”一人”である。


(見れば見る程規格外の存在だ。)


巨体は身体を完全に起こせば、星々と頭が摩するほどで、その腕は伸ばせば世界の東西の涯にも達すると言われる。現在は己の質量をコントロールし最小に留めているらしい。


「去れ、人よ。我らは静寂につくのみ。」

挿絵(By みてみん)


デュポーン。神々の王ゼウスに比肩するほどであり、ギリシア神話に登場する怪物の中では最大最強の存在。


「それでは君達は無干渉という事か。くく、まぁ我らに結束がない事は確かだがね。」


デュポーンの腿から上は人間と同じだが、腿から下は巨大な毒蛇がとぐろを巻いた形をしているという。底知れぬ力を持ち、その脚は決して疲れることがない。肩からは百の蛇の頭が生え、火のように輝く目を持ち、炎を吐くと言われる。


「精々お互いに生き残ろうではないか。」


二人を尻目に洞窟を去る黒赤色ののスーツを着込む男。そしてヘリコプターが男を回収し、山林を抜ける。


(あれらは時間の問題だな。)


上空からファンシーパン山を見るその表情は何処か無機質で、冷たいものであった。













「やっとぉ、着きましたぁ_:( ́�`」


グダーと頭をハンドルへとつけるディアーナ。ほぼ初めての運転に付け加え、インドの交通事情もあり疲労が溜まったのだ。


「お疲れ様です。」


三人は車から降りる。やはり容姿のせいか辺りの通行人からの視線が痛い。


「都内にある五つ星のホテルに予約を入れておきましたので其方へ向かいましょう。」


ルキフェルは携帯でホテルへの位置マップを開くとディアーナへと渡す。ホテルの場所へ行くには細い通路などを歩かなければならない。


「車はこちらで廃棄しましょう。とはいえ、そのまま放置してしまうのも勿体ないです。」


ルキフェルとブランチェが頷く。


「取り敢えず、あの建物の屋上に全ての荷物を転移します。それから適当にお金に困ってそうな人に車の鍵を上げましょう。」


保険証や保証書などの大切な書類は勿論フォルダーにしまってグローブボックスに入れてある。


「ディアーナが荷物を屋上で見ている間に俺達は人を探しましょう。」


かなりの視線が此方に向いているが無視だ。


「あの者は如何ですか?」


物乞いをしている老女がいた。


「ルキフェル、間接的にあの女性の記憶を覗く事は出来か?」

「普通の人間であれば可能です。」


ルキフェルの瞳が透き通る様な紫色へと変わり老女の深層を覗き込む。


「彼女は........赤です。」

「そうか。」


如何やら物乞いをしてはいるが家や家族はあるらしい。


「ならば、あの数珠を売る男は如何だ?」


ブランチェがある男性を指差す。観光人達に数珠を売りつけようと奮闘する男。海外に行った事がある人ならば分かるだろうが、何処にでもいる観光客を標的とした個人の物売りだ。若干怪しい雰囲気と共に近寄りたくない人物らであるのは確かだが............


「どうして、あの人間を?」


ブランチェは疑問に思う。


「あの者の顔は苦労他人のものだ。」


ブランチェは彼を何処か心配した様子で見ていた。


「それにあの者からは死相が出ておる。長くとも数ヶ月とは持たぬだろうな...........ルキフェル、覗いてみてくれないか?」


ルキフェルはブランチェの言う男の精神を覗き込む。


「これは................人の命はいつかは散るもの。誰しもが平等であるべきだが理は其れを許さない。あの男は一人で出稼ぎに出ています。家族、そして見知らぬ子達の食費を稼ぐ為にああして数珠を売りつけようとしているのでしょう。其れに付け加え、あの男性が住居している場は民家ではありません。」

「家族は?」

「彼らはとある広場にて大多数の人間と共に生活を共にしています。お金のない貧民、病人、移民と混濁としたコミュ

ニティーが出来上がっているのです。」


珍しいことではない。スラムなどではありふれた光景である。


「出稼ぎ頭がいなくなれば餓死の可能性があるって事か。」


決断は決まった。


「あの男に鍵を渡そう。」


此れは偽善ではない、気まぐれだ。


「इसके लिए जाओ!」

(約:頑張ってくれ。幸運を祈る。)


鍵を男性へと渡し去る。終始男は自分達の話を唖然と聞いていたが、最後は感謝の言葉を紡いでくれた。


「ルキフェル、さっきの男の病は治したか?」


天使の力の一部には如何なる病をも治す力がある。


「いえ、した方がよろしかったでしょうか?」


しかしルキフェルは奇跡を行使しなかった。


「そうか。ならば、行こう。」


胸糞が悪い話かも知れないが、ラクナウでは何百という人間を殺した罪がある。この程度の善意で精算されほど軽いものではない。仮に精算できるとならば方法は一つだ。そう、この戦争で勝つ事だろう。


(______________大丈夫だ。最後にはカミーユや芙蓉を含め、全ての死傷者を蘇らせる。それこそが吾輩たちの目標である。)

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