第百六十六話『各陣営の動き』
中国、湖南省の街外れある宮殿______
「バロール、今日は何する?」
メイド服らしき服を着た女、『ウォフ・マナフ』がトコトコと歩いてくるとソファーへと座っていた『バロール』の肩へと頭を乗せそう問いかける。
「そうだね、何をしようか。」
両目が閉じられた男『バロール』はウォフの頭をひと撫でするとソファーから立ち上がり、外の景色を見た。外は巨大な岩山が並び雲が掛かっている。美しく優美なその光景に酔い痴れたくなるが、生憎と目を閉じている為に見る事が叶わない。
「君のかつての仲間だった黒髪のエルフ、徐々にだけど僕達の方角に向かって来ているね。」
「え.........嫌だな。」
ソファーへと身体を倒し心底嫌そうな表情を浮かべるウォフ。
「大丈夫さ、例え喧嘩になっても...........」
殺せば良い。人を見ただけで殺す事が可能な魔眼が自分にはある。
(この戦争の勝利を掴むのは______)
バロールは瞼を開け冷たい声色で言う。
「____________僕”達”だ。」
「ねぇ〜えフレイぃ♩楽しくなってきたわねぇ♩」
ネパールの首都、カトマンズにて双子の兄、『フレイ』の手を引きながら楽しそうに歩く『フレイア』。
「うん。僕達が干渉しなくても彼らが勝手に戦って死んでいくからね。」
はしゃぐフレイアとは反対に落ち着いた返しをするフレイ。
「もぅ最近フレイはロキみたいになってる♪やめてよねぇー」
手を離し、フレイの前に立つフレイアは説教をする様にフレイのほっぺを摘んだ。
「はにをするんだい、ふれひあ」
「お仕置きだよー♩」
舌を出しハニカム。
「僕達は死にたくない。だから最後は勝ち馬に乗ればいい。そう言ったのは君だろう、フレイア。」
フレイアはクスリと頰を歪ませ笑う。
「そうだよ。だからこそ、常に移動を心掛けないとね〜。」
フレイは目を細め、フレイアに問う。
「ねぇフレイア............他の四人はどうするんだい?」
「え〜知らな〜い♩私達が大丈夫ならどうでもいいんじゃなぁい?」
そっぽを向き自分より先へ歩き始めるフレイア。
「一応、僕達にも戦力が欲しいからって強い人達を誘ってまとめたグループなんだよ。もったいなくはないかい?」
「べっつにぃ〜」
「其れにガルーダくんはもう時期に彼らとぶつかるのは君も知っているだろう。」
ガルーダ。インド神話に登場する不死鳥。彼とは一応、協力関係にはある。
「加勢に行こうとか言っちゃうのぉ?嫌だよ〜。」
心底嫌そうな表情を見せるフレイア。
「別に加勢には行かないけど、見に行かないのかなって?」
傍観に徹するとは言え、何の準備もしない訳には行かない。
「ガルーダちゃんに関わらずみんな別々に行動してるじゃん〜放置放置ー♩オールオッケーだよぉ♩」
フレイアは無邪気にそう言うが、彼ら“未知数”のポテンシャルは計り知れない。現に彼等が動き出した事により五体の創作物が死んだ。
(今の内に分析を鋭くすべきだ。)
フレイは目を細め神妙な面持ちになる。
「もー硬いよぉ〜フレイは♩もっと楽しんで行こう♩」
フレイアはそう言うが、自分たちの集団はまとまって行動をしていない。ただ、毎夜の啓示で受ける位置情報を頼りに各国へと逃げ回っているだけだ。
“戦争なんてやりたい奴らでやればいい。”
それが彼女が始めて啓示を受けた際に放った言葉である。
(最後の最後に力を振るえば良い、か。それが上手く行けばいいけど。)
力を温存し、相手が疲弊した隙を狙えと悪戯好きの神『ロキ』ならば言うだろう。例え軟弱者と罵られようと最後に生きているものこそが勝利者なのだ。
「のう乙姫よぉ、其方の願いとは何だ?」
死を与える魔眼、善い思考の具現化へと接食をする為に、黒髪のエルフ『エレンミア』らは拠点であるラオスから一時的に旅立ち、中華人民共和国へと向かっていた。
「そう言えば聞いたことがありませんでしたわね。あの黒服の殿方(黒の森)が平和な世界を作ると申していたのはご存知ですが、乙姫さん自身の願いは存じ上げませんわ。」
エルミアが気になると言った表情で乙姫へと視線を向ける。
「あら、私ですかぁ?うーん、なんでしょうねぇ。竜宮へと帰ることでしょうか。」
乙姫はキョトンとした顔で答える。因みに現在エレンミアらは中国ラオス鉄道を利用し移動していた。中国ラオス鉄道とはラオスと中国の国境ボーテンとビエンチャンを結ぶ鉄道である。
「其方には野望はないのか?いや、野望に関わらず執念、憎悪、復讐、怨み、妬み、そして後悔と言った欲があるはずだ。」
乙姫は一度苦笑をすると窓から見える景色を淡々と眺める。そして小さく口を開いた。
「ない、ですねぇ。」
「乙姫さん、貴方は........」
何処か歪んだ表情の彼女にエルミアが警戒の表情を見せる。エレンミアはその様子を見て口元を意地悪く緩ませた。




