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第百三十六話『至るまで』

遡る事、数時間前___


「さて、そろそろ明日に向けて寝るとするか。」


プライベート庭園にて雑談をしていたおかげで時刻は既に深夜1時を回っていた。


「まぁって下さぁい♩」


青年は席を立ち上がろうとするがディアーナは其れを押さえ、お酒の瓶を取り出した。


「飲みましょう♡」

「いや、もう寝よう。」

「まぁまぁ♩」


度数の高いウィスキー、テキーラ、ヴォッカなどのお酒を取り出していくディアーナに頭が痛くなる。


「あのなぁ、明日の早朝、リンジャニ島に行く約束をしただろうが。」


ディアーナはクスリと笑うとルキフェルへと振り向きお酒の飲み方について問う。


「ショットでしましょうかぁ?」

「ディアーナにお任せします。私は飲酒と言う行為其のものをした事がありませんので。いえ、違いますね。訂正します。先ほどビーチにてジョンから頂いたカクテルが初めての飲酒でしょうか。」


リンジャニ山付近から異様な雰囲気を感じるとルキフェル達は先程言っていたのだが、お酒など飲んでいていいのか。


「いや、俺はそんなにいらない。」

「まぁまぁ♩」

(だって俺もルキフェルと同じでビーチで飲んだカクテルが初めてなんだよなぁ。)


そしてこのホテルを拠点にリンジャニ山付近に生息する創作物を討ち滅ぼす予定だったのだが、ディアーナとルキフェルは全力でこの旅を遊び倒そうとしているのだ。


「一気♩一気♩一気♩一気♩」


しかし何度も注意を促すのだが、ブランチェがいるので大丈夫だと言って聞かない。特にディアーナ。


「ジョン、勝負です。」むふん


何方が先に10本目のショットを飲み干すかと言う勝負をルキフェルが挑んで来た。


「やらねぇーよ!」

「やりなさい。」


カミィルが負傷をしたのは連絡を受けて知っている筈なのにこの二人と来たら......二人には危機感というものが完全にない。


「あぁーもぉう!!勝負は受けてやる!けど俺が買ったらしっかりと王冠戦争について考えろよ!!」

「良いでしょう。其れでは私が買ったのなら貴方を完全に私の物としましょう。」

「おい、対価が違い過ぎる!」


ディアーナがアルコール度数40を越えるお酒を小さなカップ20個に注いでいく。そして準備が出来たのかルキフェルと自分に各10本のショットを渡した。


「ふふ、ルキフェルさんの勝ちは私の勝ちでもありますので頑張って下さいねぇ♩」

「はい?ジョンの身体を好きに出来るのは私のみですよ。」

「それでは私がジョンと戦いましょう♩」

「ダメです「それでは”私”が持参したお酒の類は全て回収をさせて頂くとしましょうかぁ。」待ちなさい、ディアーナ。」


そもそも身体をどうするつもりなのかが気になるが、早く勝負を片して眠りにつきたい。


「分かりました。私が勝利した暁にはジョンを7:3で分け与えましょう。」


”分ける”などと意味の分からない単語が右往左往している。


「5:5でぇ♩」


身体を半分にでもおるつもりか?


「くっ、.....致し方ありませんか。」


そもそもルキフェル自体がお酒を買ってこればいいだけの話なのだろうが、目の前の物欲さに思考が追いついていない。


「それでは勝負をしましょうかぁ♩」


ディアーナは青年とルキフェルの間に立ちジャッジを務める。


「インチキは無しだからな、天使様。」

「聡明なる天使である私が不正などある筈もなし。」


ディアーナが手をあげる。


「ガン●ムファイト・レディィィィゴォォォォォォォ!!!!」


最早何処からツッコメば良いのか分からない。


「くっ」ゴク

「ッ」ゴク


喉が痛い。だが負けられない。


「次だ!」ゴク

「負けません!」ゴク


自分自身お酒が弱いのかは分からないが、現状は平気だ。いや、問題はこの後だろう。


「おえッ」ゴク

「うぅ」ゴク


ヤバい、一瞬戻しそうになる。既に本数は九を越え、残り一本だ。


「最後の一ぽッ!?」


最後のショットを飲み干したと同時に身体が跳ねた。


「ふふ、アブサンのお味は如何ですかぁ?」


ディアーナがクスクスと笑いながら膝をつく自分の姿を見る。因みにアブサンとは度数70前後のリキュールのことで、比較的高いアルコール度数で知られている。此奴は頭が可笑しい。絶対に真似しないように。


「うぷっ、殺す気か?」


連続しての一気飲み、そして全てが度数40以上。心臓が弱い方であれば既に鼓動は停止している。


「あはあ♩ジョン〜♡」ガバ


するとルキフェルが突然抱きついて来た。


「うっ、あまり刺激しないでくれ、」


頭が若干痛いのだ。お酒初心者である奴がいきなりこの様なハードルの高い”遊び”に手を出したのだから当然と言えば当然なのだろうが。


「ジョン〜♡ジョン〜♡ジョン〜♡」


ルキフェルは頰を猫の様に擦り付け嬉しそうに笑う。


「.......ルキフェル、大丈夫か?」


「はいりょうふですよぉ♡それよりもきしゅ、してくしゃさぁい♡」


デロンデロンである。


「顔が近い、」


キスをしようと顔を近づけてくる天使。


「おい、ディアーナ!!」


助けを求めようとディアーナの方へと顔を向けると携帯で此方の様子を撮影していた。


「ふふ、どうぞ続けて下さぁい♩」


満遍の笑みを浮かべるディアーナ。


(彼奴、後でルキフェルにこの姿を見せてイジるつもりだな?)


「ジョン〜♡キスしましょう?」


キョトンと首をかしげる天使。可愛いを通り越して美しいの域にいる。


「うぅ、おでこにな。」ちゅ


流石にキスがしたくなった。言い訳は出来ない。今のルキフェルは普段とのギャップがあり過ぎて魅力的に見えてしまう。お酒の回りがあるのだろうが、此の儘では手を出してしまいそうになる。


「ギュってしてくだしゃい♡」


魅惑するなと言いたい。


(よし、もう寝よう!!)


あまりに愛くるしい姿のルキフェルをベッドへと連れて行く。身体は心身とは真逆で素直のようだ。⚠青年は完全に酔っています。


「あぁ、可愛いなルキフェル、ふふ。」


ルキフェルへと自ら抱きつきルシファーの白銀の髪を摩る。


「幸せでしゅ♡」


ルキフェルは死んでもいいくらいの幸福を感じ青年の胸元へと顔を埋めるのであった。其れから暫くすると青年は完全に意識を手放してしまう。いや、ディアーナにより手放された。


「さぁルキフェルさん、行きますよぉ♩」


ディアーナがルキフェルを青年から引き剥がそうとする。


「や。」

「完全に酔いは覚めたましたでしょ?行きますよぉ♩」

「やです。」

「.............ルキフェルさん」

「一晩此の儘でいたいので放って置いて下さい。」


ルキフェルは酔っていたが天使の身体が直ぐにアルコール成分を分解し酔いを覚ました。そもそも力を解放すれば酔いなどと言う人間に作られた機能は作動しないのだが敢えて酔いという感覚に浸りたいが為に天使の力を抑えていたのだ。


「そうは問屋が卸しませぇんよぉ。」

「ジョン自らが私を抱きしめたのですよ!この幸福を味合わずして何が王道か!」


ディアーナの額に血管が浮かぶ。


「いい加減にして下さぁい。敵が私達以上に強力な者の場合、ジョンを守りながらの戦闘は厳しくなると仮定した結果が今夜の出陣でしょうにぃ。視察に行きますよぉ!」


ルキフェルを引きずるディアーナ。


「抱きしめて貰った事がない者にはあの幸福の良さが分からないのです。」


引き摺られながら愚痴を漏らすルキフェル。


「む、私もルキフェルさん同様にジョン”副団長”から抱きしめて頂いた事はあります。」


ディアーナはピキリとした笑顔で返すのだった。







「其れでは参りましょうか♩」

「えぇ。」


ホテルの最上階にて二人はリンジャニ山の方角へと身体を向ける。


「私には二通りの移動方法がありますがぁ、ルキフェルさんはどうしますぅ?」

「翼にて飛翔を用いれば秒以内には辿り着きます。」


過去に光の速さで飛ぶ事が可能だと意味が分からない事を言っていたなとディアーナが思い出す。


「しかし其れでは目立ちますでしょう♩」


物凄く速いのだが気配、そして音、衝撃波が周囲に響き渡るのだ。


「私の肩に触れてくださぁい♩」


ルキフェルは疑心な表情を浮かべながらもディアーナの方へと触れる。


「其れでは行きましょうかぁ♩カイカイ♩」


二人の姿は宿泊をしているリゾートホテルの屋上から姿を消した。以前、ディアーナが吸収、もとい捕食をしたであろうヨハンネスの固有能力を覚えているだろうか?


「視界に入る場所ならば自分を召喚できる。」


そう、降霊術を用いた瞬間移動である。


「さて、着きましたよぉルキフェルさん♩」


島の約1/3の面積を占める「リンジャニ山」は、高さ3,726メートル、日本の富士山とほとんど同じ高さである。


「えぇ、其れと人払いの思考誘導を施して置きましたので人間に見られる事はありません。ただし、我らの様な者達は除きますがね。」


尾根まで登ると、火山の爆発でできた、コバルトブルーの「スガラアナック湖」の壮大な景観を楽しむ事ができると言われ、山頂からは美しいジャワ海と、天気が良い日にはバリ島のアグン山まで展望することができだろう。


「さて彼方さんも此方側に気づいた様ですよぉ♩」


火山口からやや煙が出始めている事を確認できる。ルキフェルとディアーナは火山口へと足を踏み入れ地底へと堕ちて行く。


「地底火山、と言ったところでしょうか。」

「はぁ、熱いですねぇ、」


熱いどころの騒ぎではない。常人がその場に足を踏み入れれば瞬く間と肉は焼け、骨と化すだろう。


「其れにしてもあの奥に蠢く膨大な触手の本数、この星の生き物ではない事は確かでしょうねぇ。」


地底火山の最奥地にて触手の様に蠢く何か。


「未知の力を感じる事は出来ますが、所詮はその程度。即座に対象を破壊し、帰還をするとしましょう。」


ルキフェルはつまらなさそうに触手群のいる方角へと足を進めて行く。足場がマグマの筈なのだが、ルキフェルを避ける様に道を作り出して行く。反対にディアーナは瘴気がマグマを融解し足場が固まっていった。


「どうやら結界が張っている様ですね。」


小さな門、歪な形をした柱が触手群へと繋がる道を閉ざしている。


「出て来てくださぁい♡」

「早急にこの門を開かねばこの一帯を更地に変えますよ?」


脅しを掛け、敵の様子を伺う事にする二人。


”引け、この地は我が領土、其方らが踏みれて良い場所ではない。”


敵側に戦う意思は無いが此方にはある。


「明日の早朝、ジョンと共に此処、リンジャニ山にて登頂をする約束を取り付けておりますので貴方の意見は通りません。」

「ふふ、その首を自らさすだすというのであれば痛い思いはさせませんよぉ?」


理不尽な恐喝がクトゥグアを襲う。


「笑えぬ冗談だ。貴殿らは我の薪としてくれる。」


此れがクトゥグアとの邂逅に至るまでの話である。

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