第百二十四話『着陸』
それにしてもルキフェルとディアーナだけと言うのは何とも久しぶりな気がする。
「ふふ、この映画面白いですねぇ。」
「カーアクション、是非とも実践するべきだとは思いませんか?」
一つのスクリーンで映画を見ようとしないでほしい。エコノミーとは言え、三席共に個別の画面が搭載されているのだがルキフェル達は中心にいる自分の画面で映画を見ていた。
「実践するべきじゃないと思う。」
本当にやりかねないからやめて欲しい。映画の内容というのはド派手なカーアクションを主軸とした米映画であるのだ。
「拳銃、何処で入手出来ますかねぇ?」
「警官に暗示を掛けますか?」
「やめろ、シャレにならん。」
本当にやめて頂きたい。
「まぁ冗談はさて置き、車でも買いましょうか?」
インドネシアで車を購入したとして、他国に移動する際にはどうするつもりなのだろう。
「宿泊施設にていちいち泊まっていては標的を殺害する時間を浪費してしまいますので、大型の車両にした方が良いのでは?キャンピングカーはいいですよ。」
「あぁ、それは確かに素敵ですねぇ♪其れならば、シャワーやトイレといった設備の充実した大型のキャンピングカーにしましょうか。」
確かにキャンピングカーはいいな。旅って感じはする。だが、インドネシアが日本と同様に島国である事を忘れないで欲しい。
「バイクも二、三台購入し車両に入れましょう。いざと言う時、そして詮索をする際など大型なキャンピングカーよりは動きやすいでしょうし。」
「バイクの免許持ってないんだけど。其れに国際免許、ギリで申請通ったけど、俺たち、まだ、ぺーパードライバーだからな。」
「無免許で構いません。偽造した物を現地で作りますので。」
手で輪っかを作りお金がある事を強調するルキフェル。
「あぁ、犯罪者見たいな思考になってくるなぁ、アンタらといると。」
「今更何を言うのですかぁ、ジョン♪私は深淵の女王、 ルキフェルさんは敵対者になる筈だった悪性の者達ですよぉ?悪に手を染めずして、変革は起きませぇん♩」
「犯罪ではありません。我らが正義と思えば其れは正義となるのです。」
怖いな此奴ら。思考が完全に戦犯者なんですけど。
「お客様、お飲物は如何でしょうか?」
キャビンアテンダントさんが飲み物を訪ねて来た。自分達の顔を見ると頰を染め驚いた顔をするが、直ぐにキャビンアテンダントとしての側面を取り戻し、丁寧に接してくれた。
「其れでは快適な空の旅を。」
お辞儀をすると次の席へと移動していく。因みに飲み物はルキフェルは水を頼み、ディアーナは紅茶を頼んだ。
「やはり人間はあの様に天使である私に首を垂らすべきなのですよ。」ムフン
「ルキフェルは変わらないな、ふふ。」
この様なやり取りも久しぶりな気がする。そう言えばルキフェルが来たばかりの頃、一度レストランだかファミレスに連れて行ったけ。その時、また二人で行こうと約束をしたが色々とあって二人で行く事は無かったなぁ。
「なぁ、ルキフェル____.」
「何ですか?」
「____日本に戻ったらさ、結構前に約束した、あのレストランに行こう。」
「お、覚えていて下さったのですか?」
心底嬉しそうに足を上下に振り自分へと抱きつく。ディアーナは其れに気分を悪くしたのか頰を膨らませ自分の足を踏んで来た。
「痛ッ!?何するんだ!」
「私はぁどうなのですかぁ?」むっくり
「あ、あぁもちろ「ダメです。此れはディアーナと邂逅する以前に交わした盟約。何人たりとも侵害する事は許しません。」
二人で行きますからと先に釘を刺しておくルキフェルにディアーナは睨みを強くし青年を自分の胸元へと持っていき抱きしめる。
「ズルいでぇす!私はルキフェルさんよりもっ............古株なのですよぉ!」
「ジョンの”一”番は私です。”二”番手以降である貴方方は後日カミーユ達と共に連れて行って貰いなさい。」
「なっ!?」わなわな
勝ち誇るように一という数字を強調していう天使様。怒りを抑えるように肩を震わせるディアーナだが、即座に落ち着きを取り戻すように深呼吸をした。
「出会った順番が順位を決める事にはなり得ませんよぉ、ルキフェルさぁん。」
そしていつも通りのにやけ面へと戻ると言葉の槍を投げつけた。
「ジョンと言う男の唇を最も先に奪ったのは他ならぬ私です。あぁ”二”番さんでしたねぇ、ふふ。」
ルキフェルは無言で席を立ち上がりディアーナを見下した目で睨みつける。
「よろしい、ならば戦争です。」
「えぇ、王冠を巡る戦争を始めましょう。」
即座に二人に拳骨を叩きつけ座らせる。
「座れ」
次はないと冷たい目つきを見せる。意味するはこれ以上するならば、日本に帰った際にレストランに連れてかないぞと言う忠告である。
「「はい」」
納得がいかないと言う表情を見せながらも黙って席へと座る二人。先程以上に密着して来たが、喧嘩をされるよりは大分マシだ。暫くすると飛行機はロンボク国際空港へと着陸した。ロンボク空港はインドネシアの西ヌサ・トゥンガラ州ロンボク島中部ロンボク県プラヤとプジュットの郡境に位置する国際空港だ。
「着きましたぁ♩」
自分とルキフェルの少し先を歩くディアーナ。そして振り向き、陽気に手を広げる。
「海外に来たんだなぁ、俺たち。」
感慨深いものだ。
「えぇ、どの様な料理が私の舌を愉しませてくれるのか楽しみです。イェーイ。」
片手でVサインを作り目元に当てている。ギャップが凄すぎて唖然とその姿をみる。どうやら海外に来た事で天使様も
舞い上がっているようだ。
「其れで車は買うのか?」
「え?買いませんよぉ。日本国以上に島国であるこの国で車を買ったとしても捨てる事になっちゃいますからねぇ。だからタクシーです♩」
えぇ......まぁ確かにこの島で車を購入したとてしても次の国に移る際には置いていかざるを得ないから仕様がないと言えば仕様がないが.......さっきまで買う言うてたやん。
「それでこの島に創作物はいるんだよな。」
第一の目的である創作物の勧誘、又は殺戮である。目的を果たさなければこの島を第一ポイントにした意味がない。
「む、いますよぉ.....多分........」
おい!
「取り敢えず、タクシーを拾ったので、スンギギに向かいましょうか♩ビーチが綺麗なんですよねぇ、彼処。まぁ実際には行った事はないのですが。ふふ、因みにホテル、予約しちゃいましたし♩」パチパチ
「良くやりました、ディアーナ。」パチパチ
あれれぇ.......さっきまでと言ってる事が全然違う気がするのですが。効率厳守ではなかったのか。どう見てもこの二人は遊びに来ているようにしか見えないのですが.......
「ブランチェさんがいますしぃ少しくらい遊んでも良いでぇすよねぇ、ふふ。」ボソ
とんでも無い事をボソリと言ったぞ、この聖女様は。
「芙蓉やカミィルもおりますし、多少、我らが楽をしても罰は下らないでしょう!」
お前は堂々と言い過ぎだ。
「時間がないんじゃなかったのか?」
「「ありませんね」」
あのなぁ...........
「なに、心配する事はありません。インドネシアに置いてこの島を選んだのはもっとも異質な気配を強く感じだからです。」
ルキフェルが何気なくそう口にするとディアーナが尋常では無い程に口元を吊り上げた。
「あらあら、言ってしまわれるのですねぇ、ルキフェルさん。あまりジョンに心配を掛けさせたくはありませんでしたのにぃ♩」
「楽しむついでにサクッと狩れば良いだけの話。あの程度の相手に私達が遅れをとるはずはないでしょう。心配などするだけ無駄の時間です。」
自分の手を握るルキフェル。
「貴方が近くにいてくれるだけで私は十全の力を出せるのです。だから、絶対に離れないで下さい。私の命、尽きるその時まで。」
天使の微笑を見せるルキフェルに思わず見惚れてしまった。だが、愛が重い。
「ッ!?」
ディアーナは其れに嫉妬してか自身の頰を抓るのだった。




