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第百二十三話『他勢力』

零章も後編となります。

ラオス、ヴァンヴィエン_____


自然美しき観光地でもあるこの地に、一夜にして建てられた巨城があった。その城には現実離れをした何者が住まうと言われている。だが、それを目撃した人物は誰一人としていない。山々に囲まれたこの地に置いて、巨城は神の祭壇として作らたのではないかと言う程に煌びやかなものだった。そして城の周りは美しい庭園に囲まれ見事に町の一部と同化する事に成功していた。その巨城に住まうのはこの世界に降臨した天使や賢狼と同種の物達だと言う事を住人達は知らない。









巨城に住まう一団の一人について話そうと思う。彼は『黒の森』と呼ばれ、死闘の末に瀕死となった創作物達を狩る小悪党(ハイエナ)である。しかし、彼にもオリジナルとなる物語がある事を知って貰いたい。


_____彼がが求めたのは世界の平和だった。


打倒『魔王』などとありきたりな勇者の物語が彼の原点。彼は目標を掲げ旅立つ勇者一行を見て心を躍らせた。唯の近衛兵である彼からすれば遠い存在だ。彼らがいずれ英雄としてこの国へと帰還する。王国は魔物の侵攻を食い止める為に尽力を割いているため、魔王の暗殺でしか戦争を終結することは叶わない。故に勇者一行に未来を託すのだ。


「汝ら近衛兵達は此れより勇者一行の監視に当たれ。」


勇者一行が去った直後、国王は我ら近衛兵へと命令を下した。


「し、しかし、其れでは城内の防衛が___」


近衛兵隊長が反対の意を唱える。


「構わぬ。」


国王の命令は絶対。我ら近衛兵一同は口を噤んだ。其れから彼ら近衛兵達は勇者一行の監視に努めることとなる。勇者一行の旅路は過酷なるものだった。其れは同様に自分達、近衛兵もそうだった。総勢20名近くといた近衛兵は今では五人と満たない程の人数になってしまった。


数多の魔物達との戦闘。そして勇者一行の後始末。余りにも多すぎる戦場。時には自分達のみで各地に点在する親玉達を屠った事さえある。


「私はここまでだ......王国に万歳......そして其方に奇跡があらん事を_____」


勇者一行が取り逃がした【蛇王】、即ち親玉の一人と運悪く遭遇するが何とか倒す事は出来た。だが、その際に毒を喰らってしまった隊長はそのまま息を引き取ってしまう。近衛兵で残るのはもはや自分だけとなった。


(僕は.........やるしかないッ。隊長や戦死した仲間の為にもッ!!)


これまでの旅で鍛えられた腕は勇者を凌駕してるとまでは言わないが、勇者一行に所属する戦士以上の技量を持っていたと自負はできる。時惚れているかもしれないが何かで優越感を感じていなければ自我を保てない。魔物の血で己を隠し、勇者一行、そして魔物達から見えぬ様に行動をする。時折、僧侶などが危険に晒されることがあるので短剣を密かに投げ援護などもこなす。ある程度の攻撃魔法、回復魔法、そして固有魔法(影法師)を習得したので遠隔で危機にある勇者一行を幾度と助けたこともある。その時の様子がこれだ。


「くっ、此処で俺たちは倒れるわけには行かないんだ!!」

「そうだ!俺たちが戦わなきゃ世界が終わっちまう!!」

「ええ!最後の悪足掻きってものを見せてあげましょう!」

「援護します!!」


ボロボロの身体に気合いを入れ立ち上がる勇者一行。だがこれは飽くまで自分が密かに『ヒール』を掛けているからである。決して気合いや火事場の馬鹿力などと言う精神論ではない。勇者一行は渾身の一撃を叩き込むと同時に意識を失う。


(惜しいな。)


だが対峙していた巨兵は完全には死んでいなかった。倒れる勇者一行へと止めの一撃を入れようとする巨兵。


「ライトニング・アローッ!!」


直ぐに勇者達の元へと駆け出し巨兵の攻撃を弾くと魔法を唱えた。電撃が槍の形を形どり瀕死に近い状態である巨兵へと突き刺さっていく。そして一時痙攣をすると大きな音を立てその場へと倒れた。例え一人になったとて責務を果たす。其れが亡くなっていった仲間への手向けとなる。間も無くして勇者一行は旅へと復帰する事になった。其れを監視、補助をする事が近衛兵である僕の務めだ。例え人の記憶に自分達の存在が残らなくとも構わない。世界が彼らの手により平和になるのなら。



「_____首を刎ねよ。」



勇者一行は無事に魔王を暗殺する事に成功した。だが帰還した勇者一行に命じたのは最後の生き残りである僕の殺害命令だった。


「国王......陛下?」


意味が分からなかった。何故、裁かれなければならない。何故、死ななければならない。


「其方が入れば勇者らの冒険譚に泥を塗る事になろう?」


国王はどうやら勇者は勇者達だけで旅を成し遂げた事にしたいらしい。


(とんだ道化だ。)


謝りながら剣を抜く勇者。


「誰一人、僕へと剣を向ける事に反対をしないのか?」


真実を知った勇者一行ですら剣を抜いた。


「........それでも君たちは勇者一行かい?」


功労者であると同時に僕はお前達の恩人でもあると言うのに。


「すまない......君を斬らなければ村が..」


あぁ、人質か。


(...................本当に腐った国だ。)


勇者達は家族を、故郷を人質に取られていたのだ。


「..........許してくれ。」


勇者が剣を降るう。その刀身はゆっくりと自分の身体へと向け振り下ろされる。


「ただで死ぬわけには行かないよねぇ.......」くす


切られる寸前、即座に懐から短剣を出し王座へと座る国王の喉へと向け投擲した。


「あぁ、」ザシュ


国王の喉仏に短剣が突き刺さると同時に自分は勇者の剣により切り裂かれる。倒れる寸前勇者は泣きそうな表情をしていたが余り気にしないで欲しい。意識がなくなる前に聞こえてきた言葉は王に連なる側近らの悲鳴であった。











城の広間にて、同胞達に自身の過去を聞かせる。相方でもあった降霊術師の彼が死んでからちょっと寂しくなってね。自分語りをしたくなったのだ。


「貴方、勇者より強いのでは?」

「謙遜だよ。僕は強くない。ただ、自分が出来る最大の事を最大でやっているだけだよ。死体狩りだってそれしか出来ないからだ。正面から戦えば僕は瞬きをする間にやられるだろうからね。」


仲間の一人である【乙姫】が面白い質問をして来た。


「魔王を倒したのは本当は貴方ではなくて?」

「残念ながら正真正銘、勇者が剣で心臓を貫いたよ。」


もっとも魔王の足元を魔法で滑らせ隙を作ったのは自分だが。ちなみにShort Story、又の名を【SS】と呼ばれる素人小説、勇者・魔王SSが僕の原点であり全てである。もう廃れたものだと聞いたが。


「つかぬ事をお伺いしますが.....貴方が王冠に望むのは復讐、でしょうか?」


乙姫が僕の願いを復讐だと言う。


「復讐、か。僕はただ、平和な世界で何時ものように暮らしていたかった。それだけだよ。」


王冠戦争の勝利者には全てが渡される。


(そう。ただ、平穏な世界で僕は_____)


しかし、その全てが何を意味するかも定かではない。


(______弟と交わした幼い頃の約束。君は長生きできなかった。だから僕に長く生きろと言った。)


他の同胞達は願望機だと言って入るが真実は勝利をするまで分からないだろう。


「答えになっておりませんことよ?」

「ふふ、そうだね。なら、魔物に侵されていない、いや争いのない世界でも望もうかな?長生きする為に、ね。」


例え魔物がいなくとも人は人同士で戦争を起こるかも知れない。だがらこそ人は希望を夢見るのだ。


「其れはさぞ素敵な世界になることでしょう!」


乙姫は手を合わせ笑ってくれる。彼女の出自は日本の昔話だと聞いたが、果たして彼女の望みとはなんなのだろうか。










「あらまぁ♩あのお二方、随分とお仲が良い様ですねぇお姉様♩」


金髪碧眼のエルフが乙姫達の様子を見て、耳を嬉しそうにピクリとさせる。


「なに、妾達以上に仲が睦じい者らはおらぬよ。」


そしてその隣に恋人の様に手を繋ぐ黒髪のエルフが感情のない目でそう返す。


「うふふ♪そうですかぁ♪そうですねェ♪」


互いの額を当て小さく呟く金髪のエルフ。


「妾がいる限り___」


黒髪のエルフは頰を吊り上げ言葉を続けた。


「_______この陣営に敗戦など、ありはしない。」


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