表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
120/218

第百十七話『名を芙蓉』

屍の上に立つ一輪の花。その花は屍の中においても美しく人を魅了した。皮肉を含め人は彼女を芙蓉ふようと呼んだ。


____呪いの童子。


日本に置ける死神の伝承は彼女が起源とされている。だが、それを知る人間は現代にはいない。







遡る事、半日前。『ジン・ミシマ』はコンビニで買った飲料水を口に含み人通りの少ない裏路地を歩いていた。


「____日本に残っているのは俺とお前だけだぞ。」


ミシマは立ち止まり、背後へと感じる存在へと話を掛ける。そして振り返ると其処に居たのは着物を着た幼子だった。


「.........何処?」


「日本に残ってた奴らも未来を見据えてユーラシア側に飛び立っちまった。お前だって昨晩の啓示を受け取った筈だ。残りのアジア州組は俺達含めて20体だろ。」


その言葉を聞きピクリと眉を動かす童子。


「.......その内......十五..........日本.......いない..................残る.......三.........何処?」


啓示は毎晩大まかな位置情報を与える。そして十五体の『創造物』は日本にいない事は確認出来ていた。。だが残るミシマ、そして童子を除く三人だけの位置情報が全くといい程啓示で送られてこないのだ。


「大陸側にいるかもしれねぇ。だがもしかしたら日本にまだいる可能性もある。どんな裏技を使ったか知らねぇがふざけた奴らだ。毎晩脳へと直接送られてくる啓示に怯えた奴らだっていた筈なのにな。其れを安全な場所から何もせず傍観を決め込んでやがる。気に食わねぇ。」


闘志に燃えるミシマ。


「そう...........」


童子はその一言を残すとその場から消える。


「本当に何考えているか分かんねぇ奴だな............それに新人共を皆殺しにしていた降霊術の野郎が日本で死んだ。其れが意味するのは未知の三人が関与している事に他ならねぇ。」


拳を握り締め己の道を歩き出す。


(この国に残ってる可能性が高いのは分かってんだよ。出て来たらどうだ____なぁ、未知数(アンノウン)!!)


其れから間も無くして富士の樹海から莫大な力の波動を感じ、ミシマは駆け付ける事になるのだが結末は言わずとも分かるだろう。








「うん.....制服.........かっこ、いい。」


羨ましそうに高校生の帰宅を遠目から覗く着物の童女、芙蓉。


(そう言えば、さっきぶつかった美しい奴も制服だったな。)


芙蓉は着物を脱ぎ捨て、呪術で制服を形取っていく。


「芙蓉............かっこ.........いい」キラキラ


嬉しそうに鏡を覗く姿は年相応の可憐な少女に見える。


「ん................感じる。」


力の波動を強く感じすぐ様ビルの屋上へと立つ。


「あっち............か。」


波動を感じる方へと目指しビル群を飛び移って行く。そして樹海にたどり着いた芙蓉は先ほど話を掛けた男、ミシマが先に来ている事を感じ取り遠目から観察していた。


「.......目が.........あった?」


ミシマの戦闘を観察しつつ他の人物らにも悟られぬよう目を向けると銀髪の天使と目が合う。


(一里は離れている筈なのに。)


あり得ないと再び視線をその人物へと向けると確実に此方を見ていた。


「................」

(あいつ、ヤバいな。)


動揺しつつも冷静に他の人物らにも目を向ける。


「ん..........あの時の..............綺麗.........人、だ!」


目にしたのは前にぶつかってしまった人物だった。その人物は浮世離れした美しさを誇り凜とした印象。はっきりと言うと一目惚れである。


「......」

(話したい。)


会話を交えたいと感じる。


「もう少し.....近付こう.....」


この世界に顕現されてから誰からも誘いをもらった事がない。全てが自分の命を狙うものだった為、全てを殺害した。


(良かった。あの人も芙蓉と同じなんだ。)


口元を若干緩ませ更に距離を縮める。銀髪の麗人が鋭い視線で自分を見て来るが構わない。


「色男は黙ってな。この女だか男だか知らねー奴を潰してから相手してやるよ。」

「待ってくれ、少し話し合いをしない...........か?」ザクッ


だが表に姿を晒す前にミシマにより刺される。


(................何をしてるの?)


唯一自らの意思で歩み寄りたいと感じた人物が目の前で斬られたのだ。許せる筈もない。


(あの男..........)

「..............殺すッ!!」


右手をパキリの鳴らしミシマを殺害する為に動き出そうとするが、銀髪達が即座にミシマを無力化し死に体寸前の状態としてしまった。


「.................」


瞬きする間にミシマはやられた。銀髪、獣、そしてあの深淵は危険だと本能が感じる。


「其れでも.......」

(話したい。芙蓉よりも強いのは分かってる。けど、話したい。)


パチンと指を鳴らすと死に体同然であったミシマの頭が風船の様に弾け飛んだ。そして影に潜み青年の元へと寄る。


(仲間に入れて欲しい。入れて欲しい。)

「.............入れて」


孤独に死ぬのも良しかと思ってはいたが美しい貴方が芙蓉と同じ創作物であるのなら共に進む道があるかもしれない。決して邪な乙女心から来た訳ではない。純粋に語らいたい。そう感じていた。そう感じているんだよ?


「ん?ってうわ!?」

(驚く顔も美しいな、この人。食べていいかな?食べよう、うん。)


裾を引くと驚いた顔をする青年。其れを見て口元が緩みそうになるが耐える。


「........入れて」

(仲間に入れて欲しい。周りにいる奇怪な奴らよりも上手く協力が出来ると思う。芙蓉は有能だよ?)


警戒をした目で周りの連中が見て来るが構わない。


「入れて..............入れない.........殺す?」

(仮にこの人が芙蓉を受け入れないのであれば芙蓉はこの人を殺して自害する。最後の賭けだ。)


すると剣を握る町娘の様な者が突然襲いかかって来る。芙蓉は其れを受け流し地面へとねじ伏せた。雑魚は大人しくしていろ。


「............入れてって言うのは性的な意味か?其れとも何かしらの暗号なのか?」


この者は阿呆なのか?無論、この身は幼女なれど貴方が求めるのならば受け入れるのも吝かではないが。


「阿呆.........仲間......決まってる....シて。」

(そもそも芙蓉の様な呪われた童女を抱きたい雄などいる筈もないか。幼児体型だし。いや、合法ロリだッ!ワンチャン、この人がペドファイルの可能はある。いや、そうであって欲しい。切実に、うん。)


すると青年は他の者達に芙蓉の有無を聞いた。


「記憶の提示を容認するのならば受け入れましょう。」

「吾輩は構わぬ。何やら同類の匂いがしてならぬからな。」


危険度が高い奴らが思いの外、賛成的である事に驚く。


「うぅ、いてて、冗談じゃないわよ!私は反対よ!」


だが先程返り討ちにした町娘は反対の様だ。


(塵が、黙って受け入れれば良い物を。殺されたいか?)


心の中で毒を吐く。


「ん?アンタ、もしかして.........この前ぶつかった着物の女の子か?」


じ、自分の事を覚えていてくれたのか。嬉しいと言う感情が身体を支配する。


「ん。名を芙蓉.............共に............この戦乱の世.........生き延びよう。」

(そして性的に結ばれよう、うん。)

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

↑ページトップへ