第百十五話『模擬戦闘』
青木ヶ原樹海、又は富士の樹海とも呼ばれる場所での模擬戦闘。樹海の歴史は約1200年とまだ浅く、若い森である。富士箱根伊豆国立公園に属し、富士山原生林及び青木ヶ原樹海という名称で、国の天然記念物に指定されているらしい。そしてキャンプ場や公園も存在し青木ヶ原を通り抜けられる遊歩道も整備されている。人気の高い観光地であると同時に樹木が多く深い森であるため、少し道を外れると元の場所に戻ることは素人では難しいと言われている。俗説にある「一度入ったら出られない」ような恐ろしい場所ではないのだが、時折、規則を守らず遊歩道から外れ迷子になる輩がいます。規則はきちんと守り、登山やハイキングをしましょう!
「お、おい、本当に大丈夫なのか?」
時刻は既にPM20:00。準備を終え、山梨県富士河口湖駅へと到着した。そして徒歩である程度の景色を楽しみ樹海のある富士箱根伊豆国立公園へと辿り着く。既に日は沈み辺りは暗闇だ。
「_____此処の空気は実に良いですねぇ♪」
ディアーナが深呼吸をする。既に整備をされた道を外れ奥へ奥へと進んで行く。
「なぁ、懐中電灯をつけていいか?」
月明かりだけでは足場が暗くて見えない。今はルキフェルらに掴まり転けない様にはしているが懐中電灯を出来れば使用したい。
「ダメでぇす♩」
ディアーナが拒絶する。
「何でだよ!」
「あぁそっか。ジョンってみんな見たいに見えないのよね。」
カミーユが不吉なことを言い出す。
「ルキフェルや賢者様がいるから外界の人達は私達に近づこうとしないけど、ジョンと私だけだったら直ぐに心に巣喰いに来ようとするわよ、此処の奴ら!あぁ鬱陶しい!」
(えぇ........怖いんですけど?)
樹海にはやはり神秘(霊)が存在しているのかもしれない。
「さて、この辺りならば死者の目は無かろう。思う存分試合おうでは無いか。」
ブランチェは人間態の姿を取りカミーユが過去に使用したであろう剣を握り横に一振りする。すると何本もの森林達が綺麗に切断され、広野となった。
「ふふ、ならぁ今夜は私が道化となりましょう♪」
私服から聖職服へと切り替えると杖を天に掲げ高らかに笑うディアーナ。どうやら模擬戦はディアーナとブランチェが行う様だ。
「ジョン、余り私から離れないで下さい。」
「だからって近過ぎる気がするのですが........」
ルキフェルはブランチェらの余波が及ばない様に青年の腕へと引っ付く。
「えー!?私がやりたかったのにー!!」
カミーユの手には剣が握られ、準備が出来ていたようだが自分の出番が無いことに首をガクリと落としていた。
「さて、我らの覇気、魔力、神気を出来うる限りこの国へと轟かせようぞ。」
尋常ではないオーラがブランチェから放たれる。ディアーナは其れをジロリと舐める様に見ると杖を地へと付け大量の魔獣(魔物)らを生成した。
「ふふ、救済(殺す)する気で行きますね♪」
周囲一帯が魔獣に埋め尽くされていた。これらを国中に放てば1日で天下統一が出来るだろう。もっとも人間が残っていればの話ではあるが。
『『『『『『『『ガルルルッ!!』』』』』』』』
魔物達は口から涎を垂らしブランチェを捕食対象と定める。だが一匹の魔物が青年の背後へと襲いかかった。しかしルキフェルがギロリと睨み付けると此方に牙が届く前に消滅した。
「.........えぇっと、ディアーナさん?なぜ魔物さん達は自分を襲って来たのでしょうかぁ?」
その一言を言い終えるとともに一斉にブランチェでは無く自分へと襲いかかってくる。
「ねぇ!!何でこの化物達はジョンを襲うのよ!!」
青年を狙うが如く牙を伸ばす魔物達だがルキフェルとカミィルの手により一掃されて行く。そしてディアーナが青年の前へと移動し襲い掛かってきたであろう魔物の顔を掴み上げ問う。
「私はジョンを襲って良いと言いましたか?」
その瞳に映るはまさしく闇。掴み上げられた魔物は底知れぬ恐怖を主人、ディアーナから感じとる。
『ガルルルッ』
魔獣は知性が低い。元来であれば主人であるディアーナの命令を遂行するか外敵へと本能の行くままに襲い掛かるかの二択であるのだが、この場で最も抵抗力が低いであろう青年を先ず喰らおうとしたのだ。
(おかしい____まさか、私の感情を優先させたのでしょうか。ジョン副団長を食べてしまいたいと言う欲求がこう言う形で現れるのはいけませんね。自制しなければ。)
ディアーナは青年の周りの魔物達を過剰回復で爆散させる。
「_____ディアーナ、これで終わりか?」
すると背後からブランチェの声が聞こえてきた。
「流石はブランツェさんです。」
掴み上げていた魔物の頭を握り潰し、ブランチェの声がする方向へと顔を向けると其処には魔物の屍の山に立つブ
ランチェの姿があった。
「______逃げるな。貴方達はジョンを襲ったのですよ?死ぬまで戦いなさい。それが貴方達の謝罪なのですから。」
ブランチェの強さに本能から恐怖を感じ逃走を図ろうとするがディアーナの一言により魔物達の身体が強制的にブランチェへと向く。
『グルルルルアアッ!?』ザシュ
突然、魔物達がなんの前触れもなく真っ二つへと身体を引き裂かれた。周囲を見渡すが誰もいない。
「ジョン、私から離れないで下さい。」
「どうやら来たっぽいわよ!」
ルキフェルとカミーユは剣と槍を交差させ自分を守る様な体勢でいる。
「よぉ_________面白い事してんじゃねぇか?」
学ランに学生帽を被った男が日本刀を帯刀し樹海の中から現れる。その眼光は先程の魔獣などとは比較になら無いほど鋭く真紅の目を暗闇に置いて輝かせていた。




